美しく秘めやかな少年と青年の愛。背徳感を感じさせる長野まゆみの小説

亡くなった姉の夫である義兄への恋心を、姉が生きていた頃からずっと持て余している弟の「私」。会社では秘密の業務をこなし、帰ればいまだに同じ家で暮らす義兄への想いを募らせる日々を過ごしていました。表紙とタイトルの爽やかな印象を裏切るどろりとした艶めかしさに、いい意味で裏切られる連作集です。

全4作にわたる「凜一シリーズ」の第1作目です。ある事情から従姉の身代わりとして、彼女の友人である氷川に会うことになった凜一。その出会いはやがて、凜一の運命を大きく変えることになります。自分のセクシュアリティを異質なものと自覚する凜一が出会ってしまった恋の結末を、ぜひ見届けてください。

ある夏の日に温（ハル）は不思議な子ども・ルビと出会います。その出会いから、温は自分とその家族が持つ体の秘密に近づくことに・・・。温を何かと気にかける辰（トキ）もまた、その出生に秘密を抱える1人。遺伝子や生殖にまつわる技術が発展した近未来で2人が最後に求めたものがわかったとき、胸を打たれるはずです。

田舎の優等生として当たり障りのない立場を手に入れた一（はじめ）。しかし「男が好き」という秘密をひた隠しにする彼の前に現れた転校生・七月（なつき）の存在が一の平穏を乱し始めます。閉鎖的な田舎の息苦しさや、暗黙のルール。思春期の少年を揺さぶる苦悩に引き込まれる一冊です。

男同士の逢瀬に使われる隠れ宿の長男・桜蔵は、本人にその気はなくともその体との交わりを求めるあやかしを寄せつけてしまいます。他に家庭を持つ義父・柾や父の友人である浜尾は、そんな桜蔵を翻弄。人とあやかしの狭間を行き来する桜蔵をとりまく、どこか官能的なお伽奇譚です。