日常に想像力を！知的好奇心をくすぐる幻の風景を追い求めた本

昭和30年代前半に日本の僻地を訪ね歩いた紀行文集です。特筆すべきは、高度成長期に入る直前の日本の風景が報告されているところにあります。すでに失われつつあった、ひと昔前の時代の風景を垣間見せてくれます。変動期に入る直前の往時の姿を求めて、本書で全国を旅してください。20代で執筆された著者の名文も必見です。

「路地」とは被差別部落のことです。著者は日本の路地の歴史をたどるために全国を旅します。それは同時に、部落出身者を公表している著者のルーツを探る旅でもありました。かつては大阪、東京、熊本といった都会の片隅でも、不当に差別を受けてきた人々の生活の様子が浮かび上がってきます。まさに幻の風景を追い求めている本です。

日本神話の里として知られる宮崎県高千穂。伝説と神話が息づく土地に生まれた著者が祖母の言葉に導かれ、幻の高千穂を求める旅に出ます。印象深いのは、土地に生まれた連帯感と気高い誇りを人々が抱えているところです。自分が生まれた故郷の風土やその歴史を詳しく知りたくなる、知的好奇心を刺激される一冊です。

ダム建設工事にともなう反対闘争のリーダーを追った傑作ノンフィクションです。昭和30年代、熊本県の山奥でダム建設の是非をめぐって壮絶な反対運動が繰り広げられました。ダムが建設されるまでの背景に触れると、ダムを眺める思いや光景はこれまでと一変するかもしれません。失われた山村にタイムスリップしてみましょう。

映画や小説に登場する鉄道の風景について綴ったエッセイ集です。森林鉄道やローカル線など、廃線になった鉄道の風景についても触れられています。膨大な知識量と読者を魅了する語り口は圧巻の一言。あなたの利用する路線や駅も本書に登場するかもしれません。夢と現、虚と実が入り混じった鉄道の風景をご堪能ください。