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ペテンとイカサマだらけの世界を生き抜くために。作家セリーヌの世界
国籍も社会的地位も問わず、あらゆる人間の利己的で、偽善的で、間抜けな本性を容赦なくあばきたて、人生と社会に対する絶望を謳いあげたルイ=フェルディナン・セリーヌ(1894-1961)。規範をくつがえした破格の文体と内容で「20世紀のもっとも重要な作家」とも「万人の敵」とも称される、その矛盾に満ちた世界を知ることができる本を紹介します。
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なしくずしの死 上
L‐F.セリーヌ(著) , 高坂 和彦(訳)
主人公は著者と同名のあどけない男の子。とはいえ、少年小説にありがちな心温まる要素は皆無です。彼を取り巻くのは大人たちの薄汚い奸計と絶望の叫び。笑うしかないほど悲惨で理不尽な出来事が、幼い身に糞尿まじりの濁流となって次々に襲いかかります。読後、他のあらゆる小説が平和で呑気なお話に見えてくるかもしれません。
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夜の果てへの旅 新装版 上
セリーヌ(著) , 生田 耕作(訳)
第一次世界大戦で目の当たりにした戦争のバカバカしさ、植民地でふんぞり返る同国人の卑しさ、機械と広告に支配されたアメリカ人の間抜けさ・・・。いたるところ欺瞞だらけの世界で、口からのでまかせを武器に逃げるように放浪を続ける主人公バルダミュ。発表と同時に嵐のような反響を巻き起こしたセリーヌのデビュー長編です。
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セリーヌの作品 11 死体派
L=F.セリーヌ(著) , 長田 俊雄(訳)
第二次世界大戦前夜、ヒトラー率いる隣国ドイツの脅威が高まるなか発表された時事評論集です。全編を埋め尽くすのは、戦争の黒幕として戯画化されたユダヤ人に対する激烈な罵詈雑言。戦後、これらの親ナチス的発言によって国家反逆罪に問われたセリーヌは、逃亡先のデンマークで捕えられ投獄生活を送ることになります。
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セリーヌ伝
フレデリック・ヴィトゥー(著) , 権 寧(訳)
約700ページに及ぶボリュームでセリーヌの生涯に迫った評伝です。作家以前の国際連盟衛生局員時代や無料診療所での医師時代、妻と愛猫との壮絶な逃亡生活のエピソードも豊富。いかなる権力や党派にも迎合せず、死の前日まで言葉で戦い続けた孤高の作家の全貌が、本人の手紙や夫人の証言をもとに詳細に描かれています。
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セリーヌ
フィリップ・ソレルス(著) , 杉浦 順子(訳)
自身も挑発的な作風で知られるフランス人作家による、セリーヌに関する評論集です。いわく、セリーヌは『フランスでもっとも音楽的な文体』を持つ作家。その生涯を、真面目腐った格言や空疎な美辞麗句から『言葉の音楽性を守るための戦い』と捉え、絶望と憎悪でみちた文章に息づく「生に対する肯定性」を説いてゆきます。
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