ブックキュレーター児童文学作家 日向理恵子
夏の羅針盤となる物語
「今年の夏こそは、きっと本物の冒険が待っている」。そう思っているうちに大人になった。けれど、冒険の場はいつだって、『いま、ここ』であるはずだ。特別な時間の滞在する夏だからこそ、現実への助走となるような、泡立つ水へ深く潜ってゆくような物語が読みたい。夏の冒険の羅針盤となる本を選びました。
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苦海浄土 全三部
石牟礼道子(著) , 赤坂真理(解説) , 鎌田慧(解説) , 中村桂子(解説)
不知火海、水俣の地にもたらされた災厄を、詩人の眼がひとつの終らない神話に紡ぎあげる。文字に余白に宿る息遣いに、時に耳をすまし、時に息を呑みながら導かれる。私たちが生きているのは、この本に記された神話と地続きの世界なのだと思い知る。死者たちと生者たちの指紋が、読み手にも柔らかに、しかし深く刻印される。
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ムーミン童話全集 7 ムーミンパパ海へいく
トーベ・ヤンソン(作・絵) , 小野寺 百合子(訳)
父親、母親、息子、それからちびのミィ。海のはての孤島には、家族のロールを演じることさえ許されない環境があった。「家族なんだから」という前提が、荒波に、一人一人の行動に、突き崩されてゆく。それぞれの個が際立つ灰色の孤島を舞台に、静かに厳しく展開される、挫折と再生の物語。
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山を仕事場とする「鬼サ」を語り部に、山の暮らしと生き物たちの有り様が描かれる。汗のしみた衣服とイグサと、青臭い葉と獣の体臭。においがありありと嗅ぎわけられる。なりわいの手応えが、語りのリズムとなって響いてくる。つづきを聞くために、鬼サの住まいを訪ねている気持ちになる一冊。
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「本の小部屋」で育った書き手が広げて見せる、バリエーション豊かなおはなし集。素材も色も様々なおはなしと、このうえなく豊穣な日本語訳の中に、夏の日に忘れた宝物や呪文の切れはし、自分だけの地図の断片が、きっと見つかる。
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東京ドリーム
Cocco(著)
ジュゴンの海から、東京へ、仙台へ、イギリスへ、友人宅へ、満員電車へ、空の上へ――。日々出会う物や者へのこまやかな眼差しと、跳躍のダイナミズムが溢れてくる。シンガーソングライターCoccoが柔らかに刻む、猛々しい祈りと祝福。
ブックキュレーター
児童文学作家 日向理恵子1984年、兵庫県生まれ。児童文学作家。主な作品に「雨ふる本屋」シリーズ、『魔法の庭へ』(ともに童心社)、『日曜日の王国』(PHP研究所)、「火狩りの王」シリーズ(ほるぷ出版)。ダイニングテーブルが仕事場。趣味、庭いじり、観葉植物の世話。トラウマ映画鑑賞。においを嗅ぎながら紙の本を読むのが好き。作業スペース周辺に本を積んでゆくため、テーブルが食卓の用をなさなくなります。『火狩りの王』特設サイト公開中 http://holp.jp/hikari/
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