現実世界も謎に満ちている!?歴史上の事実をモチーフにした推理本

1959年、ロシアでトレッキング中の学生9人が不可解な状況下で死亡する謎の山岳事故が発生しました。この謎に挑むべく、フロリダ出身の著者がロシアの雪山へ体当たり取材を敢行。言葉の壁や氷点下の気温と戦いながらつかんだ真相とは？犠牲者たちへの哀悼の想いを忘れない著者の真摯な姿勢に、思わず涙してしまいます。

シェイクスピアの戯曲でも知られる、悪逆非道の英国王リチャード三世。骨折で入院中のグラント警部は、動けない間の退屈しのぎにリチャード三世の実像探しを始めます。500年の時を超え、史実に残された証拠と証言を集めて謎に挑むグラント。リチャード三世にかけられた数々の嫌疑に、犯罪捜査の手法で鋭く迫ったミステリー小説です。

史上もっとも有名なシリアルキラーといえば、19世紀末のロンドンを震撼させた「切り裂きジャック」です。その正体は数々の小説や映像作品で推測されてきました。なかでも本書は、本格推理界の重鎮が連続殺人事件の犯人を推理した出色の一冊。事件から100年後のベルリンを舞台に、切り裂きジャック事件の驚愕の真相をひもときます。

ユニークな短編を集めた本書には、実際に起きた事件をモチーフにした1編が収録されています。その事件とは、1880年に起きたデイビッド・ラング消失事件。著者は短編「幽霊屋敷」で、この謎に挑戦しました。友人が見ている前で消えた消失事件の謎をSFのアイデアで解明、ミステリーとは一味違うSFならではの解決を楽しめます。

本書の軸になる事件は、1976年にジャマイカで実際に起きたボブ・マーリー暗殺未遂事件です。著者は長大な物語を異なる人物の一人称で構成する、という超絶技法でこの事件を書き切りました。登場人物たちの証言だけで事件を語ることで、ジャマイカという社会とその時代性までも浮彫りにした力量は圧巻のひと言です。