ブックキュレーター映画批評家 寺本郁夫
映画の見方は監督に聞け!名監督の言葉には映画がぎっしり詰まっている。
多くのスタッフ・キャストを使って自分のヴィジョンを高い次元で映像に出来る一流の監督たちの言葉が、面白くないわけはありません。我々観客も、彼らの言葉を読んで、映画の見方を知ると同時に、映画を語る言葉を知ることができる。観客の映画体験を豊かにしてくれるとともに、映画リテラシーを高めてくれる本をご紹介します。
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映画術 定本 改訂版
ヒッチコック(著) , トリュフォー(著) , 山田 宏一(訳) , 蓮実 重彦(訳)
「映画の見方を知るための一冊を」というならば、まずはこれ。一家に一冊の必携本と言ってもいい(装丁もレシピ本みたい)。トリュフォーの質問もヒッチコックの答えも、そのまま卓逸な映画論になっている。場面の写真から注釈のディスプレイに至るまで、細心かつ繊細な本づくりにも、映画愛がだだ漏れている。
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トリュフォー最後のインタビュー
フランソワ・トリュフォー(述) , 山田 宏一(著) , 蓮實 重彦(著)
トリュフォー自身がインタビューされる本書も、数ある映画本の白眉。ヒッチコックの『映画術』が旧約聖書ならばこちらは新約聖書。山田宏一・蓮實重彦という質問者ゆえに対話の質が物凄く高い。小津の交わらない視線の話に始まり、ナレーションと時制の関係、メロドラマと悲劇の違いなど、読者の目から鱗を落としまくる。
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シネマトグラフ覚書 映画監督のノート
ロベール・ブレッソン(著) , 松浦 寿輝(訳)
ブレッソンは、映画は演劇であってはならないという鉄の意志で映画を作る。演技を削ぎ取られた俳優は、モデルとしてのみ存在を許される。そこからは、こんなアフォリズムだって生まれてくる。「モデル。『軀(からだ)全体が顔。』」ブレッソン映画の峻厳と官能を、そのまんま切り出したような言葉ではないか。
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映画術 その演出はなぜ心をつかむのか
塩田 明彦(著)
『サイコ』のノーマン・ベイツの顔は「鳥」だ、という指摘には「鳥」肌が立つ。人が空間をどう移動するかという動線や、並ぶ人と人との位置関係はそのまま映画の表現であるという視点にも、唸る。映画美学校の講義の採録なのが、語りに勢いを与えている。聴衆の反応に反応して、言葉にドライブがかかっているのだ。
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映画はおそろしい 新装版
黒沢 清(著)
黒沢清は誰にも撮れない映画を撮る稀有な監督であるだけじゃなく、映画について誰にも言えないことを言う。「克服不能なもの」を描くのがホラーだと言い、『エイリアン』は「理不尽なもの」を描く傑作だと言い、ビートたけしは「いきなり笑っている」のが凄いと言う。伊藤潤二の漫画の「背後」への言及も読ませる。
ブックキュレーター
映画批評家 寺本郁夫映画批評家。80年代の季刊『リュミエール』に映画批評を発表。以来、TOWER RECORDSの『intoxicate』、『映画芸術』に映画批評を寄稿。映画の批評とはその映画の独自性を発見すること、および、その批評を通して映画とは何かを発見することと信じる映画原理主義者。さらに、映画批評は単に映画を発見するのみでなく、映画を表す言葉を発見しなければならないと信じる批評原理主義者。座右の銘はメルロ=ポンティの次の言葉。「(『語る』という現象において)話し手は語るに先立って考えるのではない。話す間に考えるのですらない。語るということが考えることなのである。」映画も読書も雑食性。好き嫌いなく食べます。
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