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多言語多民族ならではの言語の世界。現代台湾文学を牽引する小説
多言語多民族の台湾社会には複雑な言語事情があります。言葉の結晶である文学のかたちも激動の嵐にもまれながら多様化し、さまざまな潮流が生まれてきました。そのなかで小説は、どう育まれてきたのでしょうか。ここでは、現代台湾文学を牽引する小説家の本を紹介します。物語に込められた「言葉」の力を味わってください。
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グラウンド・ゼロ 台湾第四原発事故
伊格言(著) , 倉本 知明(訳)
国民投票により運転開始された台北近郊の第四原発で、原因不明のメルトダウンが発生。生き残ったものの当時の記憶を失ったエンジニア・林群浩の脳裏には、次期総統候補者の姿が焼き付いていました。近未来のディストピアを通して原発問題に踏み込んだ意欲作で、緊迫感を湛えたサスペンス展開が読者を引き込みます。
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ここにいる
王 聡威(著) , 倉本 知明(訳)
「大阪市母子餓死事件」をモチーフに、舞台を台湾に置き換えて書かれた小説です。夫から暴力を受けて幼い娘と家を出る美君。物語は美君の独白と彼女と関わってきた人々の独白が混ざり合い、複雑な様相を呈していきます。主観的な言葉の連なりで浮き彫りになる美君の孤独は、現代社会における人間関係の難しさを示した痛烈なメッセージになっています。
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海峡を渡る幽霊 李昻短篇集
李昂(著) , 藤井省三(編・訳)
妊婦の幽霊が漢方医に復讐するため海を越えてくる「海峡を渡る幽霊」、マザーコンプレックスを抱える若い妻の苦悩と愛郷に迫る「セクシードール」など、8つの小説が収録された短編集です。著者の作風は幅広く、収録されている作品は叙情性と実験性に富んでいて、台湾の歴史に絡めながら多彩な語りが展開されています。
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冬将軍が来た夏
甘耀明(著) , 白水紀子(訳)
レイプ被害に遭い、失意に陥る「私」の前に現れた老女たちと老犬。祖母が率いる老女たちは「死道友」として終活中であり、残り少ない時間のなかで虐げられてきた過去を語ります。そして「死道友」の救済で「私」は活力を取り戻していきます。死に備える姿を通して、生きることの尊さを物語る珠玉の終活小説です。
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