ブックキュレーター在野研究者 荒木優太
在野でものを書きはじめるためのスターターキット
なにかものを書いて発表するには特別の資格があると思いがちだ。いうまでもなく、そんなものはない。が、それでもなお気後れするようならば、あなたはきっと多くの先人たちがいかにして素手で書き言葉と格闘してきたか、その歴史を知らないのだ。誰に認められなくたって人類は書いてきたし、書いている。そう、あなただって決して例外ではないのだ。
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大学に属さずにものを書くのは大変だ。物理的にはゆとりがないし、制度的には図書館が使いにくい。変なことを書いちゃいないか、甚だ心許ない。それでも、色んな立場や境遇の人々が自分のペースで研究成果を残そうと齷齪してきた、その記録を知っているならば、ほんの少し頭の働かせ方も変わってくるというもの。本書はそのための実例集である。
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いわずとしれた沖仲仕の哲学者の代表作。断片調なのは愛読していたモンテーニュ『エセ―』の影響か。痛烈な知識人批判も読み処の一つだが、働くことと書くことの両立を考えるうえで、たとえば、「疲労曲線」という考え方は興味深い。疲れてしまうと書くどころではないが、どんな労働が自分を疲弊させるのかは手探りで見つけていくしかない。
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ドイツには大学教授の手前に私講師というのがあって、講義で学生を集めたそのぶんだけカネがもらえる。人気がないとカネにならない。ジンメルはずっと私講師で頑張っていた男で、そのおかげもあってか彼の文章は非常に面白い。扉や把手や額縁といったなんでもない日常茶飯から思考をはじめることを教えてくれる。
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「われわれがたいてい忘れてしまうのは、話をするのは所詮、一人称であるということだ」とソローはいう。学術論文は「私」がどう思ったかではなく、誰がどう思おうと真実であることを記述するようなスタイルによって洗練されている。にも拘らず、その奥底には書く「一人称」(私)がある。どんなレトリックを覚えたとしても、これを手放しては元も子もない。
ブックキュレーター
在野研究者 荒木優太1987年東京生まれ。在野研究者(専門は有島武郎)。明治大学文学部文学科日本文学専攻博士前期課程修了。2015年、第59回群像新人評論優秀賞を受賞。著書に『これからのエリック・ホッファーのために――在野研究者の生と心得』(東京書籍)ほか、『貧しい出版者』(フィルムアート社)、『仮説的偶然文学論』(月曜社)、『無責任の新体系』(晶文社)、『在野研究ビギナーズ――勝手にはじめる研究生活』(明石書店)など。
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