美しくなりたい・・・その願いゆえに華麗なる大変身を遂げた女たちの物語

『カワイイというだけで キレイというだけで やせているというだけで マユミはすでに私よりも上の人間なのだ』。人生に行き詰まりを感じていたぽっちゃり女子・のこは、やせてキレイになることを決意します。登場人物は皆どこか偏った価値観を持っていて、人の“執着”がコミカルに描かれています。

彗星のごとく現れ、瞬くうちにトップモデルに上り詰めたりりこ。だが、その完璧な美貌は全身整形によるものでした。りりこの妖しい魅力に惹かれる者、秘密を暴こうとする者、利用しようとする者。それぞれの思いが交錯するなかで次第に狂気がりりこを蝕みはじめ、物語は転げ落ちるように凄惨な結末へと向かいます。

演技の才能に恵まれながら化け物のような容姿に生まれついた累（かさね）が手に入れたのは、キスした相手と顔を入れかえることができる口紅でした。望む道を歩むために累はこの夢のような口紅の力を借りて暗躍し始めます。たった一つの願いのため、罪を重ねる主人公に待ち受ける運命とは？ラストまで息もつかせぬ展開が続きます。

美容師を目指して上京した「アタシ」は、都会のハイクラスな女の子たちに熱烈な憧れを抱きます。名前を変え、売春で得たお金で整形をして、勝手に人のバーキンを写真に撮りブログで披露。オンラインでお嬢様になるという夢を叶えた「アタシ」でしたが、ついた嘘は雪だるま式に大きくなり・・・。闇に引き込まれる小説です。

体の一部分をテーマにしたこの短編集の中で、「臍」と「尻」という2編は女性の美への執着が生々しく描いた物語です。顔のしわ取りをした愛子、自分の尻の大きさが気になり始めた弘恵。気にし始めると止まらず、世界のすべてがそれを中心に回り始め、日常が崩れていきます。この話を笑うのか、恐れるのかはあなた次第です。