ブックキュレーター長沼伸一郎
古典の中に秘められた「アフターコロナ」の資本主義を考える意外なヒント
コロナ後の世界を考える上で、われわれは未来に向けて資本主義そのものを問い直さねばならない時期に来ていることは誰の目にも明らかである。ところが過去の古典を読み直してみると、意外な未来的意義をもっていて、そのヒントを与えてくれる本が少なくない。そこでむしろここではそうした知られざる価値を秘めた古典を中心に選んでみた。
- 37
- お気に入り
- 5856
- 閲覧数
-
アメリカにおけるデモクラシーについて
トクヴィル(著) , 岩永 健吉郎(訳)
米国資本主義文明の本質を考える本としては、恐らくいまだにこれを超えるものはないと思われる。ただしこの本では未来への示唆が特に豊富に含まれているのは主として下巻なのだが、上巻から順に読み始めると、その分量に息切れしてしばしばそこまでたどり着けない。そのためこの本は、下巻から読み始めることが鉄則である。
-
法の精神
モンテスキュー(著) , 井上 堯裕(訳)
これは「誰もが書名だけは知っていても本当に読む人は少ない」という名著の代表だろう。しかし実際に読んでみると、過去の本どころか、むしろ未来に対する示唆に富んでいることに驚かされる。特に自由・民主主義の未来について考えるとき、ここに書かれていることは大いに参考になり、むしろ現代的な意義の方が大きいとすら言える。
-
貨幣改革論 若き日の信条
ケインズ(著) , 宮崎 義一(訳) , 中内 恒夫(訳)
ケインズの思想を知るためには、主著の「一般理論」を読むのは労力的にも大変だが、それよりもむしろこちらを入り口にした方が早道だと思われる。特にこの中に収められた「若き日の信条」「自由放任の終焉」の2編は、市場万能主義への疑問を先取りしたものとして、その将来を考える上で非常に参考となるだろう。
-
リデルハート戦略論 間接的アプローチ 上
B.H.リデルハート(著) , 市川 良一(訳)
これは一般読者向けに書かれた本ではなく、論拠として挙げられた大量の史例全部をカバーするのは難儀である。しかし本書で提示された「間接的アプローチ」という概念は、今後のAI時代において人間側に何ができるかを考える際には、極めて重要な意義を帯びてくるものと考えられ、エッセンス部分を読むだけでも非常に有益である。
-
『現代経済学の直観的方法』では、資本主義の将来において「縮退」という現象が重大な意味をもつことを述べた。それは天体力学の「三体問題」と関連した話なのだが、その数学的な側面や基礎について述べたのが本書の末尾部分である。そのため縮退という話題に興味のある読者は、同書と併せて目を通すことをお勧めしたい。
ブックキュレーター
長沼伸一郎1961年東京生まれ。1985年早稲田大学理工学部応用物理学科(数理物理)卒業。1985年同大学院中退。1987年『物理数学の直観的方法』の出版で理系世界に一大センセーションを巻き起こす。「パスファインダー物理学チーム」(http://pathfind.motion.ne.jp/)代表。著書に『物理数学の直観的方法 普及版』『経済数学の直観的方法 マクロ経済学編』『経済数学の直観的方法 確率・統計編』(以上、講談社ブルーバックス)、『一般相対性理論の直観的方法』『無形化世界の力学と戦略』『ステルス・デザインの方法』(以上、通商産業研究社)など。
ブックツリーとは?
ブックツリーは、本に精通したブックキュレーターが独自のテーマで集めた数千の本を、あなたの"関心・興味"や"気分"に沿って紹介するサービスです。
会員登録を行い、丸善・ジュンク堂・文教堂を含む提携書店やhontoでの購入、ほしい本・Myブックツリーに追加等を行うことで、思いがけない本が次々と提案されます。
Facebook、Twitterから人気・話題のブックツリーをチェックしませんか?
テーマ募集中!
こんなテーマでブックツリーを作ってほしいというあなたのリクエストを募集中です。あなたのリクエスト通りのブックツリーが現れるかも?
テーマ応募フォーム
こんなテーマでブックツリーを作ってほしいというあなたのリクエストを入力してください。
ご応募ありがとうございました。
このテーマにおける、あなたの”6冊目の本”は?
※投稿された内容は、このページの「みんなのコメント」に掲載されます。
コメントを入力するにはログインが必要です