ブックキュレーター建築家 レミングハウス 中村好文
思わず舌舐めずりし、料理心を掻き立てられる本たち
20歳過ぎまで自分でご飯を炊いたことも、味噌汁を作ったこともなかったぼくが、料理をしようと発心したのは、伊丹十三の『女たちよ!』という本に出会ったからである。きっかけがそうだったせいか、ぼくは料理本のレシピではなく、達意の文章で綴られた本の中で語られる方法で料理を学んだ。つまり、ここに選んだ本はぼくの料理の教科書の一部である。
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中村好文 百戦錬磨の台所 vol.1
中村好文(著)
自分の設計事務所を構えてから、かれこれ40年になるが、その間に300軒を越える住宅を設計してきた。そして、そのすべての住宅の台所を、その家庭の食生活に合わせてデザインしてきた。この本はその中から選りすぐりの5つの台所を紹介している。
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女たちよ!
伊丹 十三(著)
スパゲッティは固茹でなければならぬ。そして、その固茹でをイタリアでは「アル・デンテ」と呼ぶことを広く世の中に知らしめたのは、伊丹十三の功績のひとつに違いない。なにしろこの本の冒頭のエッセイが「スバゲッティのおいしい召し上がり方」なのだ。
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この本ぐらい台所の熱気と匂いの入り混じった朗らかな喧騒が身近に漂ってくる本はない。学生時代に買った文庫本がクタクタになってしまい、紙面も黄ばんできたなと思っていたら、このたび、写真入りのレシピ集の入った「完本」が出た。まっこと、同慶の至りである。
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十代の終わりから22、3歳頃まで、本を買うと買った日付を見返し(=遊び紙)に書き付けていた。その日付によると、この本は、今から半世紀前の1970年12月13日に買ったものだ。最初の数頁を読むやいなや、チーズ・オムレツを作ってみたせいだろう、この本からはオムレツのにおいが流れ出てくるように感じる。
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剣客商売庖丁ごよみ
池波 正太郎(著)
池波正太郎の本は読み始めるとクセになる。よくできた講談や落語を飽かずに聴いてしまうようなものだろうか。『剣客商売』シリーズなど、ぼくは、なんど読み返したかしれない。本筋の合間合間に絶妙の間合いで出てくる料理のシーンが薬味としてよく効いていて、物語の味を引き締めている。
ブックキュレーター
建築家 レミングハウス 中村好文建築家。1948年千葉県生まれ。72年武蔵野美術大学建築学科卒業。設計事務所勤務を経て、東京都立品川職業訓練校木工科で家具製作を学ぶ。81年レミングハウス設立。87年「三谷さんの家」で第1回吉岡賞受賞。93年「諸職の技術を生かした住宅」で第18回吉田五十八賞特別賞受賞。1999~2018年日本大学生産工学部建築工学科教授。 主な著書に『百戦錬磨の台所vol.1』(学芸出版社)、『住宅巡礼』『住宅読本』『意中の建築』(以上新潮社)、『普通の住宅、普通の別荘』『小屋から家へ』『集いの建築、円いの建築』(以上TOTO出版)、『食う寝る遊ぶ 小屋暮らし』(PHP研究所)、『湖畔の山荘設計図集』(エクスナレッジ)など多数。
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