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暗黒の未来へあなたをご招待します。ディストピア文学の名作選
「暗黒郷」とも翻訳されるディストピアは、理想郷であるユートピアの対義語として一般的に認知されています。文学では近未来の統制社会を風刺的に表現することが多く、その「未来に対する不安」を具現化する手法で数々の予見的な物語を生んできました。SFにおける重要な分野であると同時に、ジャンルの壁を越えて語りかける珠玉の小説を紹介します。
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時計じかけのオレンジ 完全版
アントニイ・バージェス(著) , 乾 信一郎(訳)
1962年に発表され、映画化されたことでも有名な本作。イギリスの作家バージェスが、暴力に明け暮れる若者を人格矯正療法で洗脳するという高度管理社会の脅威を描き出した快作です。人間の残虐性と人工言語「ナッドサット」を含む文体が奇跡的な合致を見せ、物語にカリスマ性を与えています。
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ロシアの作家ソローキンが2013年に発表した本作の舞台は、多数の小国家に分かれた21世紀中期のロシアとヨーロッパ。麻薬的な効果をもたらす「テルルの釘」をめぐる50の物語が語られます。分散された社会で生きる人々と、その混沌とした世界を詩文、戯曲、日記など異なる文体で表現する筆力は驚異的です。
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2022年の大統領選挙でイスラーム政党党首が勝利し、フランスにイスラーム政権が誕生。過激派によるテロ、報道管制、宗教色を強めるパリの景色。ムスリムという理由で解雇された大学教授を通し、欧州に広まる不安を風刺的に描き出しています。フランスの作家ウエルベックが、世界の激動を予言した傑作です。
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アラビア語公用語化に反対して官僚の職を辞したアルジェリアの作家サンサルによる本作は、強権統治を続ける宗教国家「アビスタン」を描いています。思想の自由を奪われ、街区で幽閉生活を送る信徒たち。自由を夢見て、国家の境界を目指す主人公とともに、読者は厳重な管理社会に戦慄することでしょう。
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