混乱の歴史を生き抜いた創造力。現代アフリカ作家の才能を味わう小説

ナイジェリア出身のイボ人である著者は、西洋の文化がアフリカに「暗黒大陸」というレッテルを貼ったことに対抗した文豪で、「アフリカ文学の父」と呼ばれています。本書では、植民地支配直前の村で起こった共同体の崩壊と変遷を、伝統的な口承文芸と西洋的な手法を織り交ぜて語る、深奥なテクストを味わえます。

著者は、現代アフリカ文学の先駆的存在であるナイジェリア出身の作家です。子宝に恵まれる妙薬を入手するため「女薬草まじない師」を訪ねる若き狩人。しかし、彼を待ち受けていたのは奇怪な悪鬼たちでした。故郷の伝統文化をもとに神話的世界を築き上げた、型破りな冒険譚にたちまち飲み込まれてしまうでしょう。

南アフリカ出身の著者が、末期癌患者である老婦人を通して、アパルトヘイト撤廃前の動乱を描き出した長編小説。人種隔離政策という人種差別の合法化は日常に暴力をはびこらせ、数匹の猫と浮浪者としかつながりを持たない孤独な老婦人をも巻き込みました。渡米した娘宛てに遺書を残し、最後の時間を生きる彼女の姿は胸に迫ります。

ジブチ独立後の混乱を物語る5人のモノローグ。母国を脱出し、フランスの難民無国籍者保護センターを目指すバシールとハルビ。彼らの脳裏をよぎるのは、強権統治と部族対立に起因する内戦で地獄と化したジブチの光景でした。フランス領ソマリランド（現ジプチ）出身の著者がジブチ現代史に切り込み、痛烈な群像劇に仕上げた力作です。

現代アフリカ文学を牽引するナイジェリア人作家による短編小説集です。移民である黒人女性と白人男性の交流を描いた表題作をはじめ、誤認逮捕された兄を妹の視点で描く「セル・ワン」、アメリカかぶれの夫に失望する妻の内面に迫る「結婚の世話人」など12編を収録。繊細な心理描写と差別問題に鋭く切り込む、その筆力に魅了されることでしょう。