綿密な取材に基づく圧倒的リアリティ！はじめての塩田武士

将棋のプロ棋士を目指す男を描いた、塩田武士のデビュー作。新聞社勤務時代、将棋担当記者だった著者の経験が活かされています。棋士の立ち居振る舞いや、勝負に向かう姿勢などがリアルなタッチで綴られていて、ぐいぐいと引き込まれます。登場人物たちが発する関西弁にも柔らかみがあり、読みやすくまとめられた小説です。

実際に起きた劇場型犯罪「グリコ・森永事件」をモチーフにした、著者の出世作。子どものころの自分の声が録音されたテープ。それはとある未解決事件に使われた脅迫電話の音声だった・・・という、衝撃の幕開けから始まるサスペンスです。史実がベースのため臨場感は抜群で、2020年には実写映画化もされました。

演じる俳優を決めて書くことを「当て書き」といい、この作品は主役の雑誌編集長を人気俳優の大泉洋で当て書きした小説です。それを念頭に読めば、セリフが脳内で完全再生される快感があります。出版業界の現実をリアルに描きつつ、希望を感じさせるラストは秀逸。2021年には映画化もされ、主演はもちろん大泉洋が務めました。

「誤報」をテーマにした連作短編集です。タイトルは著者が影響を受けたという松本清張作品が意識され、新聞やテレビ、インターネットといったメディアが抱える危うさと、それに携わる人間の弱さに切り込んでいます。超情報化社会である現代の問題点を改めて確認・認識することができる社会派＆エンタメミステリーの傑作です。

大好きなSF小説をアニメ化したいと願う製作プロデューサー・渡瀬とアニメーター・文月を中心に、アニメ製作に関わる人々の熱い思いと奮闘を描いた物語。取材の経験を反映した刺激的かつ鮮烈な業界内エピソードを随所に織り交ぜつつ、見事なエンタメ作品に仕上げています。アニメ好きの方にもぜひ読んで欲しい名作です。