まるで読む薬のよう。はじめての辻村深月

2018年の本屋大賞受賞作。不登校の中学生が鏡の向こうにある異世界で仲間と出会い、冒険するファンタジックなミステリーです。児童文学のような語り口で登場人物たちの内面を深く紡ぐ物語は、時につらく厳しい面を見せますが、最後には圧倒的なやさしさがあふれ出す、著者の集大成と言える傑作です。

『ドラえもん』映画の脚本を担当するなど、アニメ好きとして知られる著者。こちらはアニメ業界を舞台に「覇権」を目指して奮闘するプロデューサー、監督、アニメーターという3者の女性視点で描かれるお仕事小説。ラストの展開が見事で、前向きに頑張ろうという気持ちになることができるアニメ愛にあふれた物語です。

生者と死者を仲介する使者「ツナグ」を進行役に、4人の依頼者を描いた連作短編集です。死者との交流というドラマティックな展開のみならず、さまざまな感情を呼び起こすハートフルファンタジー。吉川英治文学新人賞を受賞し、映画化もされ、2019年には続編も出版されています。

「スロウハイツ」というアパートに暮らす脚本家や作家たちの人間模様を描いた小説です。登場人物の紹介がメインでゆったりとした上巻、物語が動き怒涛の勢いで伏線回収をしていく下巻。魅力的な人物描写に支えられた感動的な物語は、ファンの間でも人気の高い名作です。

瀬戸内海の離島で暮らす高校生男女4人の青春群像劇です。卒業後は離れ離れになることが運命づけられているなか、島での何気ない暮らしや、移住者や古くからそこに生活する人たちとの交流を通して4人の葛藤や成長が爽やかに描かれます。読後感も清々しい、辻村ワールド全開の小説です。