巧みな心理描写と圧倒的な読みやすさ！はじめての雫井脩介

主人公は元裁判官。自身が冤罪だとして無罪判決を下した男が隣人として引っ越して来てから、周りで不審なことが起こるように。ひょっとして判決は間違いだったのか？不気味で不穏、真綿で首を絞められるような展開にハラハラドキドキが止まりません。夢中になって読み切ること必至の、サイコスリラーの金字塔です。

誘拐事件を担当する捜査員をテレビ出演させ犯人に呼びかける、「劇場型捜査」を行う警察と犯人との戦いを描いたミステリーです。捜査の緊迫感と臨場感がよく伝わり、主人公・巻島の魅力あるキャラクターが物語を引き立てます。2007年には映画化され、著者の代表作に挙げる人も多く、シリーズ化もされている人気作です。

時効が成立した過去の殺人事件の重要参考人だった男が、別の殺人事件の容疑者として浮かび上がる。過去の罪をも償わせようと強引な取り調べをし、善と悪、公人と私人の狭間で揺れ動き苦悩するベテラン検事と若手検事の姿を描きます。正義とは、真実とは何かと突き付けられ物語に引き込まれる、映画化もされた話題作です。

自分の息子が殺人を犯してしまうか、あるいは殺人の被害者として死んでしまうか。そんな選びようのない究極の二択をテーマにしたミステリーです。犯罪者となれば家庭崩壊を招き一生罪を償い続けることに。一方、被害者であればもう二度と会えない。揺れ動く両親の心と葛藤を丹念に描いた、心理サスペンスの傑作です。

殺人事件の犯人たちが刑務所から仮釈放されるものの殺され、余命わずかの刑事がその事件を追います。顔にさまざまな悩みを持つ登場人物の内面や行動の詳細な描写のおかげで、人物像を頭に描きながら読むことができます。デビュー2作目にして驚きのトリックが味わえる、著者「らしさ」が充分に発揮された骨太な一品です。