すべての人をやさしく包む込む。はじめての吉本ばなな

「なんくるない」それは、悲しみをやさしく削り取ってくれる言葉。やさしさと強さに満ちた沖縄の人々と、きらめく光や海の描写に、傷ついた心が少しずつ癒されていく4つの物語が楽しめます。心がしぼんだとき、傷つき疲れ果てたときに読めば、きっと爽やかな風がゆっくりと涙を乾かしてくれるのを感じられるはずです。

どんなにつらい人生にもふいに訪れる、幸せな瞬間を紡いだ短編集。自然体の文章のなかに、疲れた心に深く響くフレーズがいくつもあり、前向きな気持ちにさせてくれます。生きていれば傷つくことも失うこともあるけれど、小さな幸せは日常のなかに確かに存在するのだと気づかせてくれる。やさしい処方箋のような一冊です。

病弱で粗暴な美少女・つぐみと、強烈な個性を持つ彼女に振り回されながらも常に気にかけている従姉妹のまりあが、故郷の海辺の町で過ごす最後の夏。希望と絶望、生と死、ヒリヒリするような恋の切なさ。その10代のきらめきを、二度と戻らない夏の物語のなかに閉じ込めたような、いつまでも色褪せることのない青春小説の名作です。

両親の愛に包まれて育ったのに、なぜか幼少期の記憶がない弥生。そんな彼女が変わり者のおばと一緒に過ごすうちに、忘れ去っていた大切な記憶を取り戻していくさまが描かれます。自分に正直でいるために、困難な道を選ぶしかなかった人の強さと切なさが胸に迫る一冊。そのラストには、きっと心が癒やされるはずです。

母を亡くしひとりぼっちになったちひろと、幼少期の体験がもとで心身の病に苦しむ中島くんは、出会い、少しずつお互いを知っていくなかで、ともに心の闇と向き合います。悲しみや後悔ばかりの人生でも、あなたの人生は間違いなく愛おしいものなのだ。そうやさしく肯定してもらえるような、癒しに満ちた命の物語です。