喪失とともに生きてゆく。若年の女性が「別れ」に直面する静謐な物語

絶望するには長く、未来を描くにはあまりにも短い。そんな10年という残り時間を宣告された20歳の茉莉は、限られた時間のなかで自分の生を整理し、まっとうしていきます。感情の波にも襲われながら気づいていくのは、人生のいくつかの真実と人々とのつながり。移ろう四季のなかで、生きることと死ぬことの切実さを知る物語です。

天涯孤独となった女子大学生が主人公の短編とその続編、また恋人の死を引きずる女性を描いた一編をまとめた短編集です。全編にわたって別離による静かな空白と、友人や家の温かさ、おいしそうなごはんの匂いに満ちています。住み、食べ、寝て、動き、話し、生きて死ぬ。著者の作家としてのテーマが詰まったデビュー作です。

輝きながら視界を過ぎていく流星。昼には見ることのできない星空。一瞬で勝負の行方が変わるボクシングやサッカー、野球。そうしたモチーフとともに、1人の女性と2人の男性を描いた長編小説です。大切な人への愛情や友情だけではなく、学生時代や青春といった過ぎていく思い出も、この本の中できらめいています。

消息が途絶えた時、死を受け入れた時、その思い出を捨てようとした時、忘れた時・・・。その人の「不在」はいつ、どの瞬間に現実となるのでしょう。震災によって隔てられた、残す者と残された者。「つらいままでいい」「いつまで忘れなければいいの？」それぞれの葛藤に引き込まれ、考えさせられる小説です。

映画監督・岩井俊二が、自身の代表作をノベライズした一冊。映画にないエピソードや心情描写も丁寧に綴られています。物語の根幹となるのは、死んだ恋人から届く「手紙」。それが活字になった時、その繊細な言葉をまるで自分に宛てられたもののように読むことができます。切なくも美しい愛の便りです。