生きる権利と死ぬ権利。「安楽死」をテーマにした医療ミステリー

ホスピスでの勤務中に3人の患者を安楽死させたとして起訴されるも、何も語らない医師。患者の家族や看護師たちの証言から、次第に隠された背景が明らかになっていきます。「安楽死」というと患者本人とその家族に焦点が行きがちですが、本書は施術する医師の葛藤や苦悩も描いた医療ミステリーです。

父親が医師に殺されたという110番通報から始まる事件。患者本人や家族から安楽死を請け負う「ドクター・デス」は単なる人殺しか？救世主か？安楽死、終末期医療という重いテーマでありながら、ぐいぐい読ませる構成と文章力はさすが。2020年には実写映画化もされた、人気の犬養刑事シリーズの第4弾です。

法律で積極的安楽死が認められているスイスの自殺幇助団体で活動している医師・絵里香。一時帰国した日本では、連続自殺幇助事件が発生していて、彼女はその事件に関わっていくことに・・・。尊厳死についての問いかけを軸にしつつ、スピーディな展開でミステリー要素も絡んでくる、上質なエンタメ小説をお楽しみください。

末期がん患者に安楽死を施した医師・白川。患者の死後、母親から訴えられ、さらには安楽死法制化推進を進める団体の思惑まで絡んできて、話は大きく膨らんでいきます。現役の医師である著者の目線で描かれるため、医療現場のシーンは実にリアル。安楽死推進派、阻止派の議論も読み応えがある医療ミステリーの力作です。

認知症になったあとで突然死した、元医師の父親。その死は自然死だったのか？と疑問を抱く息子たちが真相を探ります。認知症に介護、治療費や遺産、そして安楽死・・・。骨太で痛快なエンタメ小説や経済小説のイメージがある著者が、正解のない問題に真っ向から挑んだ意欲作です。