登場人物がクロスオーバー！知ればより深く堪能できる、宮部みゆきの時代小説

岡っ引き見習いの北一と湯屋の釜焚き・喜多次が、身近で起きるトラブルに翻弄されながらも成長していく物語です。少し頼りない北一が自分で道を切り開いていく姿にエールを送りたくなります。宮部みゆきが「生涯書き続けたい」というシリーズで、あの人物がこんなふうに年を重ねたのか・・・と、ファンなら感慨深くなるはずです。

藩の権力争いに巻き込まれ、切腹に追いやられた父の汚名を晴らすため、江戸に出てきた古橋笙之介。他人の筆跡を本物そっくりに書き、偽文書を作った者が事件の背後にいることを知り、貸本屋の治兵衛の助けを借りながら真相に迫っていきます。笙之介が住む富勘長屋の部屋は、のちに『きたきた捕物帖』の北一が暮らすことになる場所です。

深川の岡っ引きを受け継いできた、茂七→政五郎→千吉。初代の茂七が深川で起きる事件を解決していく捕物短編集です。『きたきた捕物帖』に登場する喜多次と関係がありそうな謎の稲荷寿司屋が、茂七に事件のヒントを与える役割を果たします。人間の業や弱さを知っている茂七が、人情深く深川の暮らしを守る姿が魅力的です。

同心・井筒平四郎が、次々に住人が失踪していく鉄瓶長屋の謎に迫る一作です。甥である賢い弓之助や、この作品内では茂七の手下である政五郎、そして、聞いたことすべてを覚えてしまう少年・おでこの力を借りて事件を解決していきます。『きたきた捕物帖』の続編では大人になったおでこが登場し、北一を助けることになります。

怪しくてゾクっとして、最後は切ない気持ちになる。そんな人間味あふれる物語が詰まった怪談集です。怪しいものは人間のすぐ近くに存在していて、弱った心の隙間にスッと入り込んでいくという描写は、怖いけれど引き込まれます。本書には、岡っ引きの政五郎が登場。事件捜査のなかで、その過去が明かされていきます。