研究者、植物園の職員、花屋など、植物に魅せられた人々が登場する小説

某国立大学近隣の洋食屋で働く青年と、彼が恋した植物学の女性研究者、そして大学の個性的な面々の日常を描いた青春小説です。探究心に突き動かされ、研究に情熱を注ぐ人々に対する作者の愛情と敬意がうかがえます。忙しい日々のなかで忘れがちな心のときめきを思い出させてくれる、一風変わったハートフルな物語です。

「日本の植物学の父」と呼ばれた牧野富太郎の生涯を描いた歴史小説です。学歴のない彼は独学で研鑽を積み、東京大学理学部植物学教室に出入りするように。さらに世界的な偉業を成し遂げ、植物分類学を飛躍的に前進させます。自由奔放で破天荒、不撓不屈の猪突猛進ぶりで、ひたすら己の興味や学究心に没頭する姿に圧倒させられることでしょう。

ファンタジックでハートウォーミングなお話です。心身ともに疲弊して会社を退職した風里は、風情のある古びた一軒家に移り住み、近隣の植物園で働き始めます。古い家と庭の井戸に遺る芸術家たちの記憶と夢、そして3世代の因縁・・・。脈々と続く命の歴史と想いの連鎖が、織物のように美しく紡がれた物語です。

「日常の謎」系の連作ミステリー。京都の府立植物園に勤務する青年・神苗健は、植物店に勤める若い女性と知り合い、「植物の探偵」を名乗る彼女とともにさまざまな植物絡みの謎を解明していきます。温かみのあるタッチで京都の風物が綴られていて、草花に関する雑学も同時に学べる、ほのぼのとした物語です。

江戸幕府直轄の薬草園・小石川御薬園を舞台にした時代小説です。御薬園を世襲管理する青年・水上草介はのんびり屋ですが、植物に深い愛情を寄せ、その世話に余念がありません。植物に関する豊富な知識と鋭い観察眼で、身近に持ち込まれる相談や揉めごとを穏やかに収束させます。爽やかな読後感も魅力の人情小説です。