ブックキュレーターhonto編集員
コミカルだからこそ皮肉が利く！ブラックユーモアが光る小説
ユーモアの表現法にも色々ありますが、数ある文学作品の中には痛烈な皮肉を利かせるブラックユーモアに満ちたものもあります。あえて道徳に反するテーマを設けたり、不謹慎とも受け取れる言動を用いることで、社会や世間の暗部を白日の下に晒すスタイルには独特の魅力を感じます。そうしたブラックユーモアを漂わせる小説を厳選しました。
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アメリカの小説家、ブコウスキーのデビュー作です。非正規雇用の郵便配達員として雇われるも、正規職員との露骨な待遇差、無茶苦茶な配達の割り振りといった理不尽な扱われ方に憤激するヘンリー・チナスキー。過労による身体の痛みに耐えながら酒と競馬に明け暮れ、女性遍歴を重ねる彼の生きる力に満ちあふれた無頼日記です。
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クローヴィス物語
サキ（著） , 和爾 桃子（訳）
短編小説の名手、イギリスの小説家サキの作品集です。全28編の物語は独立していますが、クローヴィスという青年を主役とするシリーズものとして読める一冊となっています。頭脳明晰ながら皮肉屋で毒舌が持ち味なクローヴィス。人々を動揺させる辛辣な言動は鋭い観察眼と洞察力の賜物でもあり、独創的な風刺を楽しめます。
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「日本SFシリーズ」の一冊として刊行された安部公房の異色SF小説。火星人をネタにしたラジオ番組の脚本家のもとに、火星人を自称する奇妙な男が突然現れます。その男は弁舌巧みに火星人の実在を説き、次々に話を変転させて脚本家を翻弄し、徐々に彼を混乱の渦に巻き込んでいきます。ほぼ対話で構成された絶妙な会話劇です。
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高齢化社会に一石を投じる、極上のブラック・コメディです。老齢人口の増加問題を解消するため政府は「老人相互処刑制度（シルバー・バトル）」を開始。70歳以上の老人たちが血で血を洗うという地獄絵図を、和菓子司の隠居・宇谷九一郎を筆頭とする個性派が駆け抜けます。社会問題を笑いに換え、ドスの利いた風刺劇に仕上げた老人文学の傑作です。
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