こんな世界もあったのか!?ちょっと変わったプロの仕事を覗き見できる本

主人公・二ノ宮こと葉は、退屈だが平凡な生活を送るOL。そんな彼女の日常は、言葉のプロであるスピーチライター・久遠久美との出会いによって変化していきます。作中に挿入されるスピーチはどれも心に響くものばかりで、小説としてのおもしろさはもちろん、スピーチの実用書としても参考になるはずです。

落語家・立川談春によるエッセイ集。厳しい上下関係に成り立つ落語界で、下積みから真打昇進までの道のりが、ユーモアと人情味あふれる語りで描かれます。師匠である談志から与えられる課題はときに理不尽にも思えますが、そこにも確かな師弟愛が感じられ、ひたすら落語を愛し、笑いを追求する噺家たちの姿に胸打たれます。

アダルトビデオ業界の撮影現場で長年にわたって化粧師として働く聖月（みづき）は、樹木に囲まれた洋館で祖母と静かに暮らしています。どこか浮世離れした彼女の日常が、過酷な世界を生きる女性たちの姿と対となり、それぞれの世界の「境界線」をより一層際立たせる構成が見事。この業界ならではの生々しい描写が印象的な一冊です。

隠れた才能から辞書編集部に引き抜かれた出版社の営業部員・馬締は、壮大な辞書編纂の世界へと足を踏み入れます。情熱を忘れることなく、10年以上の歳月を辞書編纂に捧げる編集部員たちの姿は、まさにプロフェッショナル。実際に辞書を手に取って、普段何気なく口にしている言葉の意味について調べてみたくなる、そんな小説です。

現代日本を代表する作家・村上春樹が、自らの小説観を記した一冊。喫茶店の経営者時代から小説を書こうと思った意外なきっかけ、実際の執筆スタイルなどが包み隠さず語られていて、世界中の人々を魅了する作品が絶えまない試行錯誤によって生み出されたものだということがわかります。一流の思考を学びたい方の参考にもなるはずです。