「人間」を繊細に紡ぎ、大胆にさらけ出す。女性作家による直木賞を受賞した小説

戦国末期の石見銀山で、天才山師の喜兵衛に拾われた少女ウメ。彼女と関わった男たちの人ざまが深く胸に迫ってきます。著者・千早茜は、人の仄暗さや出会いと別れで生まれる孤独を重厚な言葉で紡ぎ、描き出すことが得意な作家。繊細な心の機微と重厚な歴史小説のよさがマッチした本書は、生きることの覚悟と出会える良書です。

本書には、星をキーワードにした短編5つが収録されています。どの作品も人と人が関わり合い、出会いと別れを経験するなかで、一度は味わったことがある「ひずみやすれ違い」を鮮やかに描き出しています。大切な人を失った衝撃は大きくても、時は容赦なく進んでいく・・・。そのままならなさを見事に表現した一冊です。

孤児になった10歳の花を引き取ったのは、若い淳吾という男。2人は父と娘の関係になるものの、互いの孤独を曝け出し、愛に飢える、特殊な繋がりを築いていきます。桜庭一樹らしく、少女から大人の女性までさまざまな「女」の心模様に迫った小説。狂気とも呼べる感情を濃密な物語展開と文章で描き切った重厚な一冊です。

12の短編の主人公は、すべて女性。自分だけの幸福を知る女性たちの強さと寂しさに迫りつつ、生きたいように生きるその姿を克明に描き出します。江國香織の作品に登場するのは、幸福で孤独で、強い女性たちばかり。1人であることの強さに目覚めたいとき、ぜひ読んでみてください。

「鍵」がキーワードとなる5人の女性の物語が詰まった短編集。登場人物はいずれも普通の日常生活を送っていたはずなのに、ちょっとしたきっかけで世界はくるりと暗転します。日々の疲れや些細な不遇が積み重なり、静かに確実に何かが壊れていく様子がリアルに描かれていて、不安になる読後感も癖になるはずです。