多方面から女性を見つめ、描き出す。直木賞作家・窪美澄によるオススメの小説

年上の主婦と週に何度かセックスする高校生、姑に不妊治療を迫られる女性など、5つの物語が同じ世界でつながる連作です。「生」や「性」、「愛」や「恋」に焦点を当てています。それぞれの物語の主人公は各々で問題を抱え、作中でそれが完全に解決されるわけではないものの、主人公たちが懸命に生きることを選択するまでが丁寧に描かれています。

2022年上半期の直木賞を受賞した、星座をキーワードにした5編を収録した短編集。母親の幽霊と生活する女子中学生、継母との距離に戸惑う小学生、コロナ禍で婚活アプリで出会いを求める女性など、ままならない現実を歩き続ける登場人物たちの物語です。ラストに光が差し込む描写には心が救われます。

過去と向き合う男女を描いた長編小説です。主人公の史也は建築写真家で、アルコール依存症の父を中学のころに殺そうとした過去があります。史也は、自分と似たものを抱える看護師の梓と出会い、過去と対峙していきます。過去は変えられなくても、新たに人と出会うことで少しずつ自分を変えられる。勇気が湧いてくる物語です。

「誰かとともに生きていくこと」をテーマにした長編小説です。トラウマを抱えている壱晴は桜子と出会います。桜子は父の家業が倒産し、家族を支えようと懸命に働いていました。困難ななかで大事に想う相手と関係を積み重ね、一緒に年齢を重ねることを描いた、心が温まること間違いなしな一冊です。

1960年代、高度経済成長を生きた女性たちの物語です。主婦として家庭に入った事務の女性、フリーライターとして夫を支えた代々物書き一族の女性、田舎の母子家庭で育って一世を風靡するイラストレーターとなった女性。この3人の生き方を、確かな熱量で描き切っています。女性の強さを再認識できる一冊です。