寝苦しい夜に支えてくれる「夜」や「星」をテーマにした成長物語

飛行士の「僕」が砂漠で出会ったのは、多くの星を旅してきたと語る不思議な少年でした。旅と出会いを通して、少年が成長していく過程が寓話的に語られていて、人との絆や愛について考えさせられることでしょう。大人になってから読み返すと、また違った印象が得られる一冊です。

「歩行祭」と呼ばれる夜を徹して80キロを歩き通す高校最後の大イベントを舞台にして、学生たちがそれぞれの想いを胸に、一歩ずつ成長していく青春小説です。不安や恐怖、葛藤など、10代特有の感情が満ちあふれていて、センチメンタルな気分に浸ることができます。読後には、「自分も前に進まないと」という気持ちになるでしょう。

物語は、休校やイベントの中止が相次いだコロナ禍、2020年春から始まります。自作の望遠鏡で星を観測する「スターキャッチコンテスト」の開催に向け、全国各地の中高生たちが協力し、絆を深めていく青春群像劇です。抑圧と制限のなか、自分たちの希望を見出そうとする彼らの姿は、忘れかけていた健気さを思い出させてくれるはずです。

誕生日の真夜中に街を散歩するのが唯一の癒しである34歳の冬子。対人関係に悩みを抱える彼女は、ある日、三束という男性に出会い、いつしか恋心を抱き始めます。作中で大きな事件は起こりませんが、不器用にも恋を進展させようとする主人公の姿に共感する方も多いはず。ほろ苦くも希望の持てる、大人の純愛小説です。

孤独な少年ジョバンニは、銀河を走る汽車に乗り込み親友とともに旅に出ます。幻想的な銀河をめぐる2人ですが、物語全体を通して「死生観」や「幸福論」など、著者ならではの深い哲学的テーマが感じられます。父や親友との決別とも取れるラストは、主人公のその後の成長を想像させられ、読後、儚くも美しい印象が残るでしょう。