あなたの普通は本当に「普通」？立場による価値観の違いを描いた物語

親の遺したグループホームで生活する、身体障害者の釈華。ある日、1人の男性職員に自身のSNSアカウントが特定され、物語は進展していきます。障害者の「性」をテーマにした本作は、主人公と同様の難病を抱える著者ゆえのリアルな当事者性が印象に残ります。読書好きの方には、思わずハッとさせられるシーンもあるでしょう。

物語は「推し」のアイドルが誰かを殴り、炎上する場面から始まります。周囲から見れば、ただの「ファン」である主人公。しかし、事件は彼女の生活を狂わせるほど重大なものでした。誰かが誰かを愛し愛されるといった、普遍的な営みのなかで生まれる一種の特異性が描かれています。ネットスラングを多様した文章も新鮮です。

イギリスで暮らすとある家族の日常を綴ったノンフィクションです。価値観の違いや人種差別といった厳しい現実を前に、母と息子が奮闘する姿が描かれています。息子の視点を通して語られる異国の学校生活は、残酷でありながらもどこか微笑ましく、普段の生活では体験することのできない実社会の一端を教えてくれます。

立場や性別、境遇のまったく異なる登場人物たちの運命が、交差しながらとある事件の真相へと迫る物語。「欲」を題材とした本書は、LGBTや多様性という言葉がもたらした負の側面にまで踏み込んでいます。社会で常識とされている価値観が、人によっては必ずしも正しいものではない、と改めて感じさせてくれる小説です。

主人公の古倉恵子は、コンビニエンストアでの単調な仕事を生きがいとする36歳のアルバイトで、周囲の期待や社会の普通に合わせるのが苦手な女性です。そんな彼女の前に、白羽という男が現れて事態は思わぬ方向へと進みます。社会に生きづらさを感じている方は、共感できる部分も多いはず。ユニークな語り口も印象的な小説です。