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紙の本
昭和30年前半はまだ戦争の記憶が残っていた
2022/09/15 16:37
1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:夏の雨 - この投稿者のレビュー一覧を見る
松本清張の名前を知ったのは、小学6年の頃でした。
昭和40年頃でしょうか。
何故、覚えているかというと、松本清張を読んでいる同級生がいたからで、
え、それって大人の読み物なのにすごいなと圧倒されたものです。
しかも、まだ文庫本にはなっていなくて、
同級生はカッパノベルス版で読んでいたような気がします。
この『ゼロの焦点』は雑誌連載のあと昭和34年(1959年)に刊行されていますから、
松本清張の作品としても初期の推理小説です。
新婚間もない夫が仕事先の金沢で消息とたつところから始まります。
妻は行ったこともない金沢に向かいますが、結婚したといっても、夫のことをほとんど知りません。
何故夫は失踪したのか?
夫の過去を調べ始めた妻は、夫は終戦後間もない時期をアメリカの駐留軍がいたところで
警官をしていたことを突きとめます。
果たして、そのことと夫の失踪は関係しているのか。
そもそも夫は生きているのか。
そして、次々と起こる関連殺人。
犯人が明らかになった時、
読者は犯人は時代そのものではなかったかと思うことでしょう。
昭和30年前半は、まだ終戦後の混乱の影が色濃く残っていたのでしょう。
松本清張はその影の悲劇性を、推理小説として見事に結実させています。
清張作品の中でも、傑作という評価の高い作品です。
電子書籍
いつまでも心に残る作品
2022/01/27 14:54
2人中、2人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:imikuto - この投稿者のレビュー一覧を見る
荒廃した戦後という背景抜きには語れない推理小説です。
この点が読ませるミステリーとなっている所以でしょう。社会派ミステリーとして申し分なしです。
さらに、冒頭が素晴らしい。冒頭の1ページを読んでしまえば、あとは一気呵成に、という感じ。清張さんはこういうところがじつにうまい。
ただ欠点といえば、中途の真相にたどりつくまでの素人探偵の捜査過程をすぐに忘れてしまうところ。何回か読んだけれど、どんな感じだったかはっきりと思い出せない。
多少の本格(謎解き)要素もあったとは記憶しているのだけど、まったく思い出せない。
ラストはもちろん覚えているのですけどね。
紙の本
楽しめました
2020/06/20 01:46
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:まさがき - この投稿者のレビュー一覧を見る
はじめて松本清張の小説を読みました。
思っていたよりも読み易かったです。
展開も巧妙で、引き込まれ、楽しめました。
最後の一文が強烈に印象に残っています。
電子書籍
【ネタばれ】昔の金沢・能登の雰囲気を楽しむ作品
2020/01/09 22:22
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:KazT - この投稿者のレビュー一覧を見る
北陸金沢を舞台に夫の失踪の謎を追う新妻の物語です。
ミステリーのような前半ではありますが、後半は主人公の禎子の推測で語られる内容で占められ、謎解きを期待すると拍子抜けするかもしれません。
最終的に、本当に謎が解けたのか、はっきりしません。
解説にも書かれてますが、禎子の憶測で犯人とされる人物がなぜ3人も殺害する必要があり、自殺?を図るのか、非常に疑問が残ります。
昔の金沢、能登半島の雰囲気を楽しむにはよい作品だと思いますが、本格ミステリーを期待する方は読まない方が良いかもしれません。
文学的な作品として読むと、最後の余韻に浸れるのかもしれません。
紙の本
代表作といえば
2015/12/22 17:53
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:huzan - この投稿者のレビュー一覧を見る
松本清張さんの代表作といえば、これだと思います。予想だにしない展開、深まりゆく謎、真相には目から鱗でした
紙の本
なぜ夫と打ち解けていない妻が夫の失踪を追うのか。制作の謎を楽しんだ。
2012/01/08 18:49
7人中、6人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:toku - この投稿者のレビュー一覧を見る
【あらすじ】
板根禎子(いたねていこ)は人に薦められるまま、鵜原憲一(うはらけんいち)と結婚した。
鵜原は広告社に勤務する北陸方面の出張主任で、月に二十日は金沢、十日は東京で過ごす生活をしている。
しかし、今度の出張を最後に東京の本店勤務となる予定である。
禎子は鵜原との新婚旅行に北陸を希望した。
夫が二年の間、月に二十日も生活している土地を見ておきたかったのだ。
ところが鵜原は、いかにも飽き飽きしているというように別の場所がいいと言った。
その言い方には拒絶めいた響きがあった。
新婚旅行から帰って十日後、鵜原は最後の出張に発った。
夫は一週間後に帰ってくる。
夫には多くの未知があったが、それも夫が帰ってくれば溶けるはずだ。
そして夫の持つ禎子の未知も溶け、両方の溶解が交じりあい、世間の夫婦のようになるだろう。
しかし、十二日には帰れるという便りを最後に、夫の消息は途絶えた。
【書評】
徐々に明らかになっていく夫の失踪の謎や、夫の失踪にまつわる新たな事件の発生など、物語に飽きることなく楽しめた。
それだけに、一部の犯行動機の弱さ、妻・禎子の鋭すぎる推理、妻や義兄、会社の同僚本人が鵜原捜索を労力かけていること、などの疑問が残るのは残念だった。
その一つに、なぜ禎子を夫と打ち解けていない妻という設定にしたのか、という疑問がある。
普通なら警察に任せてしまうのに、夫に心を開ききれていない妻が、金沢に長期滞在し夫の消息を探すだろうか。
もし夫の消息を根気よく探すなら、情の通い合った妻の執念としたほうが自然だ。
禎子の行動を肯定するとすれば、彼女は情で行動してはいないだろう。
とすれば、まだ知らない夫の秘密を知りたい、失踪の真相を知りたいという好奇心があったのではないか。
でなければ、夫がかつて立川で警察官をしていたと知って、わざわざ立川警察署まで夫の過去を聞きに行くはずはない。
ところが禎子の好奇心は、真相に迫る推定に到ったとき、犯人への同情を含むものに変わった。
情の通い合った妻という設定なら、理由はどうあれ犯人への憎しみが湧くはずで、同情心が湧けば不自然だっただろう。
とすれば、作者は犯人への同情と、同情せざるを得ない凶行の背景を描きたかったに違いない。
そのために、禎子を夫と打ち解けていない妻にしたのだろう。
この結論は、社会派ミステリーを書く松本清張だから当たり前かもしれない。
しかし、この人物設定の工夫に気づいたことは、初めて読んだ清張作品に対して、長く読み続けてきたような親近感を感じた。
紙の本
たまには渋めにオールドボトルでも。さて風味の程は?
2011/09/29 13:50
2人中、2人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:koo± - この投稿者のレビュー一覧を見る
たまには渋めにオールドボトルでも。さて風味の程は?
時代は戦後の混乱期。新婚早々謎の失踪をした夫、憲一の行方を捜し、東京~金沢間を往復する美貌の若妻、禎子。夫の兄や同僚と尋ね歩くうちに、次第に不明瞭だった夫の黒い過去が姿を現す。一体、金沢にどんな謎が隠されていたのか? その驚愕の真実とは・・・。
どんよりとした北陸の情景描写と、前半部の先の読めないサスペンスフルな展開が秀逸。「〇〇が怪しい」と思っていたが、殺害されあっさり退出。僕の推理力もアテにならないなトホホ。そしてまさかの真犯人とその動機。まさにトラベルミステリのスタンダードクラシック。熟練されたプロットに感服しました。
女性の内包する悪意の描き方が間接的で巧み。以前読んだ「黒革の手帳」でも感じたのだが、女性描写が東野圭吾っぽい。あ、こっちが本家か。ネタバレにつながるので詳しく書けないが、東野さんの名作「〇〇〇」を彷彿とさせる。こういう表現、超好み。
しかし何故だか不思議なことに、クライマックスのミステリ的なカタルシスがまるで感じられなかった。いちばんおいしいとこなのに、なんで? 前述のあらすじネタバレも大きな理由のひとつなのだが、更なる問題は解決編。のんべんだらりんと平坦であまりにも説明的。なんだこりゃ?
解説にも「どこからか解決編か、という問題が案外むづかしい~一種の謎解き小説とみれば、その謎解きの構造は完璧なものではない~推理小説としては隙間のある不完全な作品」と記述されている。そんな具合にミステリとしては酷評だが、戦後の混乱期を生きる女性描写に「ある世俗的社会問題」を絡めた文学作品としての側面では高評価。
なぜ著者はせっかくの熟成されたオールドボトルに炭酸水をぶち込んでハイボールにするようなマネをしたのか? これだけの筆力を誇る大家がエンターテイメントとして纏めきれない筈がない。
実に不可解で自滅的なアプローチ。おそらく社会派ミステリの先駆者としての本格ミステリや純文学に対する挑戦状だったのだろうかと邪推。真意は藪の中だし価値観はいろいろだが、私的には単純にミステリとして味わいたかったな。芳醇な素材だったのにもったいない。
「映像化の方が成功している」と言われる「砂の器」の前例もあることだし、DVDに期待してみようかな? ともあれマスター、もう一杯。
紙の本
冬の北の海を背景に、夫の未知の領域を探っていく妻を描いた心理サスペンス小説
2004/10/24 20:04
1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:風(kaze) - この投稿者のレビュー一覧を見る
結婚して十日後、「今度の金沢行きが、最後の向こうでの仕事になるだろう」と、妻の禎子(ていこ)に言い残して出発した夫の鵜原憲一(うはら けんいち)。しかし、戻る予定の日が過ぎても、鵜原は出張から帰ってこない。鵜原の身に何かあったのではと危惧した禎子は、失踪した夫の行方を追って金沢へと赴く。北陸の地に滞在して鵜原のことを調べていく禎子の前に、やがて、夫の知られざる生活が浮かび上がってくる……。
北陸の金沢や能登半島を舞台に、新婚早々失踪した夫の足取りを訪ねるうちに、ヒロインの禎子が事件に巻き込まれていくミステリー。夫の秘密の領域に、徐々に踏み込んでいく妻の疑惑がサスペンスをかき立てます。とともに、日本海に面した北国の十二月、暗くもの哀しい風景が、この作品の雰囲気や色調を決定づけているように感じました。
事件犯人が誰なのか、その動機は何だったのか、といったことは、割と早くに察しがついてしまいました。そうした謎が解かれた時の驚きを楽しむミステリというよりも、これは冬の北の海を背景に、夫の過去を探っていく妻の心理サスペンス小説なんじゃないかと、そう思ったんですね。その点では、滝壺に向かって一気に流れ下るような終盤の展開にぞくぞくしたこと、文中にある箇所がここにつながるのか!とハッとさせられたラストが、とても印象深く心に残るものでした。
おしまいに、本書巻末の解説について一言。話の筋をかなり後半の部分まで記しているため、作品の前に読むと、だいぶ興が削がれてしまいます。また、文庫カバーの裏にある内容紹介文の中にも、これは明かさないほうがいいんじゃないかという一文がありました。あらすじをどこまで語るかというのは、こうしたミステリーの場合、微妙なところがありますが、本書ではそれがネタバレ領域にかかっているのではないだろうかと、それがやや気になりました。
紙の本
真実の光に浮かび上がる悲しき欲望
2001/08/22 08:36
3人中、3人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:タッピング - この投稿者のレビュー一覧を見る
結婚したばかりの主人公・禎子が、失踪した夫の行方を追っていくうちに、次々と隠されていた真実が浮かび上がってくる。一見平凡な日常の裏に秘められた闇が次第に明らかとなっていく、という過程は、松本清張の推理小説の真骨頂であり、特に本作品のこの過程は非常にスリリングだ。
物語にちりばめられた伏線が思わぬ形でつながる。そして見出された真実の中には、人々の悲しい欲望が横たわっていた…。社会的背景を織り込み、作品を単なる推理小説を超えた厚みのある人間の愛憎劇に仕上げていく著者の力量には感服させられた。
紙の本
スタンダード
2000/11/12 23:32
1人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:katokt - この投稿者のレビュー一覧を見る
特に松本清張のこの作品は、伏線の張り方が無理なく無駄なくで気持ちよく読める。青酸カリとか最後を英語の詩でしめるところなんかが、時代を感じさせるところもあるが、日本の推理小説のスタンダードと言った具合だろうか?