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ハロー!ブラッグバード!!(笑)
2010/09/14 15:33
4人中、4人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:空蝉 - この投稿者のレビュー一覧を見る
毎回何か新しいスタイル、新しい試みを模索している伊坂氏の今回の仕掛けは「ゆうびん小説」。
1話につき50人×5話=150人のラッキーなファンのもと(ポスト)にまだ世に出ていない伊坂氏の最新作が届いたのだ。なんて幸福なことだろう!羨ましいことこの上ない。
さて、その中身は期待通りの伊坂節、しかも「逃亡者」のように行く先々で事件問題を解決し去っていくロードムービーである。
伊坂特有の幾重にも張り巡らされた伏線や謎解き要素はなく、単純明快でテンポのよい、時に痛快な再生物語?になっているからミステリを期待して臨むべきではないだろう。がそれを差し引いてもなんら遜色ない面白さである。
主人公・星野一彦は職業もタイプも違う五人の女と同時に交際していたという点以外は、おそらく極普通の好青年である(むろん、五股もかけている時点で規格外だが)。彼は規格外の巨体と態度と豪腕を併せ持つゴリラ女・繭美に監視され、2週間という執行猶予ののち「あのバス」に乗せられて想像を絶する地獄のような場所に連れて行かれることになっているらしい。
繭美の雇い主は星野の「5人ときっちり別れておきたい」という願いをなぜか聞き入れ、かくして星野と監視役である繭美の連続告別訪問が敢行される。
...こう書くと別れ話がこじれてすったもんだする恋愛ものか?とか地獄からの逃避行か?などと思われがちだが、まずそれは無い。なにしろこの繭美はまさにゴリラのような豪腕と巨体で自分に害をなす物に容赦ない。共に行動する星野はそのおかげで何度となく危機を脱するのだが、彼自身は徹底的に容赦ない精神的暴力をことあるごとに受けている。まさに傷跡に塩をぬる、である。
ようするに、星野は最強最悪のボディーガード兼監視員にいたぶられつつ守られつつ、安全な?訪問を続けるのである。
そんな星野は行く先々で「彼女」やその周囲の人々の悩みや障害、不幸をなんとかしようと試みる。
ラーメンの大食い競争で他人のためにそれを詰め込んだり。
当て逃げ犯を捉えるべく張り込み、ひいてはカーレースを展開したり。
「○ャッツアイ」オタク?の彼女の身を案じて友人宅に忍び込み、その友人のために大立ち回りしたり。
癌の検査結果に怯える彼女のためブランドショップの店員まで巻き込み病院へ押し掛けたり。
人気女優である彼女の映画にエキストラで登場しつつ女優人生へのきっかけを教えることになったり。
全くもって伊坂氏はキャラクター設定がうまい。キャラの創作がうまいというのだろうか。
一癖ある凡人から二癖ある変人、どうにも憎めない悪役から不思議な能力を持った人間まで現実にいそうでいない、いてほしくないようでいて欲しい、愛すべき個性豊かなキャラクターがその魅力で読者をぐいぐいひき込んでくれる。
そして今回の一番の魅力的なキャラは、なんといっても主人公…を監視する豪傑女、繭美だ。
作品の中で主人公が様々な人との出会いと別れを繰り返しl成長し答えを見つける物語は定番だろう。
が、本作は主人公はもちろんのこと、それ以上に繭美の変化が面白いのだ。
心身ともに星野を苛め自分以外をなすものを蹴散らし 気に入らない言葉を塗りつぶすために辞書を常時持ち歩くという唯我独尊の巨漢(男じゃないけど)繭美。
彼女が星野の今生の別れ旅に付き合ううちどう変化するのか?
繰り返すが主人公星野自身は力も能力もさしてない極普通のいいで、あるのは(繭美に言わせれば)そのバカさ加減、お人好しさである。
星野は進んで厄介ごとに首を突っ込み、彼女たちを「回復」させ、無意識のうちいつのまにか全てを丸く納めて去って行く。映画「逃亡者」さながらの役回りだ。
そんな彼が人助けと無縁の女、繭美にどのような行動を起こさせるのか?
彼はバスに乗るのか?地獄に連れて行かれるのか?
最後の最後まで 読者は楽しめるに違いない。
物語の行く先は
2010/07/19 20:13
4人中、3人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:こぶた - この投稿者のレビュー一覧を見る
5股男星野君の「そのバス」に乗る日までを
丁寧に優しく描いていて
星野君の不実に見える5股さえ
彼の寂しがり屋のせいだと
星野君に肩入れしてしまうくらい
頼りなささえ感じさせる星野君の人間像が浮かんでくる
「そのバス」に乗り込んだ星野君はどこまで行くのだろう
その先には何がある?
繭美のバイクのエンジンはかかるのか?
余韻を残したまま物語は終わる
5股をかけているくせに、律儀に別れを告げに行く男
2010/07/13 13:23
3人中、3人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:かつき - この投稿者のレビュー一覧を見る
動物に関連する話題から始まり
独特のエピソードで人との繋がりを語り
そして物語の行く末は絶対、読者には見えない。
洒脱な伊坂幸太郎の味わいが満載。
中心となる星野一彦は、30歳の若くもなければ
年をとっているわけでもない男で
ハンサムでもなければ、ヒドイ外見でもない。
でもとってもモテてしまって、なんと5股をかけています。
しかし、2週間後には「あのバス」に乗せられて
悲惨な運命のなかで、もうこの街には帰ってこれない、
という未来が待ち受けています。
なんとも人を食ったような設定。
この5人の女性に、律儀に別れを告げたいと
星野一彦は願います。
これは太宰治の「グッド・バイ」から
インスパイアされた設定です。
身長180cmの巨漢で粗野な繭美という女性が登場し、
彼をバスに乗せるのが仕事なので、それに付き合いますが、
その凶暴さと横柄な態度と意地悪な暴言を
好き勝手に散らして歩く――すごいキャラクターです。
それぞれの女性の話を連作短編で綴りますが
読者を惹きつけてやまない。
別れるためにジャンボラーメンに挑戦したり
付き合っているシングルマザーの子どもが星野に懐いていたり。
さらには美人の女優と付き合っているんですよ。
安心して伊坂ワールドを楽しめました。
これぞ伊坂カラー。
2012/01/03 12:56
2人中、2人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:桜李 - この投稿者のレビュー一覧を見る
どこにでもいそうな、どちらかというと冴えない男が繭美という巨体でデリカシーも何も無い女と一緒に、五股かけていた女性各々に別れを告げに行く話。・・・というと魅力を感じないのだが、キャラクターの魅力にどんどん引き込まれていく。
間違っても連れて歩きたいなんて思えない(見た目も性格も)繭美だけど何故か憎めず、段々嫌いじゃなくなっていき、最終的には愛着さえ湧いてくる。
都合の悪い言葉は全て辞書を塗りつぶしてるというネタだけで何度か笑える。
最後は賛否両論だろうけど、きちんと収めない方が本書の魅力が増すような気がするので私は賛成派。
五話とも魅力的な女性が登場するので、目移りして困る男性もおおいのではないでしょうか。たとえ、それが男性にとっての可愛い女であっても、女性だって好ましいタイプはいるんです。さしづめ、私にとっては有須睦子かな。それにしても面白い発想から生まれた話です。
2011/01/24 19:50
2人中、2人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:みーちゃん - この投稿者のレビュー一覧を見る
なんていうか、伊坂本らしくないカバーです。もし、これから著者名を取ってタイトルを変えたら、まず私は江國香織の本だと思います。それほどに伊坂本のスタイルというのは決まっている。そういう意味では、大路浩実の装幀は既成概念への挑戦っていってもいいデザインです。それに、しおり(スピン)が二本、というのもこの頁数の本では珍しいかも。「ゆうびん小説」という新機軸をフルに活かす編集者の意欲には脱帽。
ついでに書けば、双葉社は色変わりのほぼ同じデザインで、この小説を楽しむための副本『『バイバイ、ブラックバード』をより楽しむために』まで出すという張り切りぶり。こちらは伊坂幸太郎ロングインタビュー、解説“あのバス”の行き先(門賀美央子)、グッド・バイ(太宰治の未完の絶筆)を収めていて、99頁で630円。本体が270頁で1470円、二冊揃えると2100円、あちゃ~、やっぱここは2000円で収めるべきだったんじゃ・・・
で、その新機軸について触れておけば、本の最後に
*
「バイバイ、ブラックバード」1~5は、09年5月から10年2月にかけて、「ゆうびん小説」として1話につき50名に届けられ、最終話の6は書き下ろされました。
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とあってこれだけでは「ゆうびん小説」の何たるかが分かりにくい(ついでに言えば、各話がいつ発送されたか、くらいは書誌データのためにも書いておいて欲しかった)。でも、その前に頁に載っている伊坂の言葉が丁寧に「ゆうびん小説」を説明していて、内容もいいので、そちらも写しておくと
*
この小説は、双葉社の企画[郵便小説]として、書かせていただきました。短編を一つ書き終えるたびに、五十名の方たちに送って読んでもらう、というものです。最近はネットによる電子書籍や携帯小説が話題に上ることが多いのですが、そういったものへの反発というよりは、「ある日、小説がポストに届いていたら、楽しいに違いない」という編集者の思いからできあがった企画のようです。僕自身、非常に楽しく仕事ができ、参加させてもらえて、ありがたく感じました。
抽選に応募していただいた方たちをはじめ、携わってくださった方たちに感謝申し上げます。本当にありがとうございました。
*
とあります。ネットではなく郵便で配達される限定版の小説、届いた読者にとっては一生の宝ではないでしょうか。ううむ、いつかオークションに出たら高値がつくんだろうなあ、などと思ってしまいます。今回も娘二人に読ませましたが、次女いわく〈一般受けしそうな本〉だそうです。各話の内容については、その章の登場人物とともにあとで触れますが、その前に大きな流れについて書いておきましょう。
主人公は星野一彦、繭美に〈あのバス〉で連れて行かれる前に、五股かけていた女性の何人かに会わせて欲しいと頼み込んだ、平気で嘘をつく三十の男で、本人いわく「普通の会社員」だそうです。で、彼は繭美と結婚する、ということで彼女たちに別れを納得してもらおうとするわけです。ただし、問題は繭美の容姿にあります。
繭美は、身体もでかければ、腕も太く、何から何まで規格外で、おまけに態度も大きく肝も据わっている、自ら「身長が百八十センチ、体重は百八十キロあるんだ、でかいだろ」という肉のついた丸顔で、目つきも悪く鼻も大きい醜女です。こんな BUSU と結婚する、といって納得する女性がいるのか、と思ったりしますが、それはともかく、一彦が五股かけていた女性たちのところを訪れ別れてもらおうとする、そういうお話です。
いよいよ五人の女性の登場です。初出はデータがないのでかけませんが、各話の内容だけは簡単に紹介しておきましょう。
Bye Bye BlackBird 1:廣瀬あかりは、都内のマンション住む女性です。年齢はよく分かりませんが20代でしょう。ディズニーの偽者みたいなキャラクター作って大儲けした男と不倫していて、それに嫌気が差して出かけたブドウ狩りで一彦と知り合って二ヶ月・・・
Bye Bye BlackBird 2:霜月りさは五年前に離婚、小学一年生の息子・海斗とマンションの10階に二人暮しをしている35歳の元人妻。りさが運転するミニバンの前に一彦が飛び出し、知り合います。海斗は自己紹介のとき「名刺を切らしています」ということを覚えたばかり・・・
Bye Bye BlackBird 3:如月ユミは、マンションの4階に住んでいる独身女性で、あかり同様年齢不詳、多分20代。ロープを使ってビルの窓から侵入するのが趣味? 真っ黒なつなぎを着て肩にロープを担いでいるところを、(泣き)は自分の発明だという一彦にみつかり、その言葉を信じて・・・
Bye Bye BlackBird 4:神田那美子は、耳鼻科で中耳炎の手術を終え、点滴をうっているとき、一彦と知り合った女性でやはり年齢不詳。イメージ的には20代後半から30台前半? ともかく数字に強い、というか計算が好きで、フェルミ推定で日本の耳鼻科の医者の数まで即座に出します。癌の疑いが・・・
Bye Bye BlackBird 5:有須睦子は、33歳、女優です。勿論、美女で人間的にも魅力があります。独身で、男性関係はそれなりにあるものの、少しもいやな感じはしません。CF撮影中にスタジオ見学に来ていた一彦と知り合います。彼女は、意外なことに一彦の話を・・・
Bye Bye BlackBird 6:五人の女性に別れを告げ、いよいよ〈あのバス〉で連れて行かれることになった一彦と繭美。この状況を変える手は・・・
一番好きだったのは、やはり有須睦子です。年齢的にも気持ちでも共感できます。「名刺を切らしている」海斗くんは勿論、その母親が嫌いなわけがありません。可愛いなあ、と思ったのは如月ユミです。そして、繭美です。彼女の容姿は好きじゃありません。町で見かけたら逃げちゃうでしょう。でも、彼女の発言はいい、本当にいいわけです。さすが伊坂幸太郎、こういう変化球できたか・・・
どうしてこうも魅力的な脇役が多いのでしょう!
2010/10/26 12:00
2人中、2人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:カフェイン中毒 - この投稿者のレビュー一覧を見る
好きな作家の書くものは、新しいものが出ると一応目を通すし、手元にも置くわけですが、
それでも「あのタイプは、読み返す回数が多いかな」という贔屓は出てくるわけで、
これもその1冊になりそうな予感があります。
ごく普通の男である星野一彦は、ある事情により、
得体のしれないバスに乗らなければならなくなりました。
そのバスの行き先も正体も明かされないのですが、なんとも恐ろしいことに、
乗ったが最後、人として戻ってくることすら不可能に近いことは確かだそうです。
星野一彦をバスに乗せる役は、繭美という規格外の巨漢(という表現もヘンですが)が担っています。
この繭美という女がすごい。
相手を精神的に追い詰めるのが好きで、手段も選ばず、やりたい放題。
もちろんいちばんの被害者は星野一彦なのですが、
このコンビが、星野一彦の恋人のもとを訪れるお話なのです。
星野一彦、別れなければいけない恋人が5人います。
そのひとりひとりに、繭美が難癖をつけ、自ら彼の婚約者と名乗り、別れを一方的に告げるのですが、
そこで見せる星野一彦の未練や執着に、繭美も付き合わされることになります。
ちょっとした小道具や、星野一彦と繭美のやりとりが、とてもおかしい。
最初のうちは、ジャンボラーメンの完食なんてものが出てきても、いまひとつ盛り上がらず、
ユーモア精神は買うけど、ちょっと空回りしてるかも……なんて思っていたのが、
どんどん弾けていく感じ。
会いに行く先の女性も、それぞれの別れの余韻も、後になればなるほどいいかもしれません。
それは、まるで星野一彦が、繭美という異星人のような女に慣れて行くことと、
繭美が物語の中で、どんどん魅力的な役割を(この場合、傍若無人なだけですが)こなしていくことに、
筆がノッてノッて仕方がないというような盛り上がりにも見えました。
さて、情け容赦ない繭美から、逃れることを諦めた星野一彦の未来は……。
最後の最後まで気が抜けず、まさかの寸止めで幕を閉じた著者に感謝。
おかげで読み終わったあとまで、物語を楽しむことができました。
スタンダードナンバーのように爽やか
2020/08/25 14:23
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:Todoslo - この投稿者のレビュー一覧を見る
シングルマザーから売れっ子の女優さんまで、立ち去る後ろ姿が皆さん美しいです。死神のような雰囲気を漂わせた繭美に、人間らしい感情が芽生えていくラストも感動的でした。
あのバス
2016/04/18 22:08
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:nazu - この投稿者のレビュー一覧を見る
何やらよくわからないけど、「あのバス」怖い…。主人公には結局共感できなかったけれど、繭美の印象は最初と最後で全然違いました。