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投稿者:XM-X1 - この投稿者のレビュー一覧を見る
綿矢りさの文章は溺れる。
不快な溺れ方じゃなく、とても心地よく溺れることが出来る。
タイトルの『ひらいて』は、なかなかに意味深で良かった。
手を開いてなのか、心を開いてなのか、目を開いてなのか、はたまた未来を開いてなのか。
邪魔するものは叩いて潰す、主人公の無茶苦茶度合いも好き。
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投稿者:T.s - この投稿者のレビュー一覧を見る
青春時代、我々は心で思ったことを伝えようとするのだけど、上手く伝わらない。誰しもがそんな経験をしたであろう。でも、いつからか、マニュアルと言う言葉を覚え、上手く自分の感情を表現できるようになった僕が、あなたがいる。あの頃に比べれば、純粋さ、もどかしさ、が感じれないためか、素直じゃなくなった自分がいる。
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投稿者:H2A - この投稿者のレビュー一覧を見る
映画を観た後で読んだ。高校生活という舞台設定についてくるキラキラしたイメージは早々に裏切られる。主人公の愛の視点で物語るので綿矢りさらしいユニークで痛い言葉の数々が健在で、恋愛が思いもよらぬ方向に進展していく。作者に抱いていたどこか上品そうなイメージは吹き飛ぶような踏み込んだ内容。愛という主人公の行動や心理がエキセントリック過ぎて共感できない向きもあるだろうが、そんな自己中心そのもので他人を顧みない行為の中にも好きな相手を振り向かせたいという切実さはある。物語の最後に、愛が美雪にかける言葉とは裏腹に物語では愛の恋の行方はどこにも落ち着きようもないところで結末を迎える。言葉の力がある分こちらの原作の方が映画よりも少し上のような気もするが、映画の2人のヒロインの演技も熱演で(特に愛役の女優の目力が強いので)映像の方も原作の世界と拮抗している。
奪い逃げるヒロイン
2020/05/04 22:20
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投稿者:Todoslo - この投稿者のレビュー一覧を見る
大好きな彼のために、病弱な彼女の唇を奪ってしまうヒロイン・木村愛の一途さが切ないですね。ひとり残された愛が、息苦しい教室と町を飛び出すラストも圧巻です。
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投稿者:makiko - この投稿者のレビュー一覧を見る
高校3年生の女子が同級生の男子を好きになったものの相手にされず、その男子と交際している女子に近づき、同性愛に近い行為までする話。10代後半の狂気に近いような危うい精神とそれに基づく行動を鋭く小説にしている内容。好きになれるストーリーではなかったですが、こういう小説を思いつくところがスゴイと思いました。
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投稿者:4mh - この投稿者のレビュー一覧を見る
彼の名前がとてもすてきだと思った。相手のことが気になってしまう、気になる、気になる、で、どんどん深みに嵌っていく。それが、目立たないタイプのひとなら尚更だと思う。
「わたしだけに」
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誰かに認められたいと思いながらも、本音でぶつかっていない、(自分でもその本音がわからない)が為に、全て嘘っぽく見えて、自己嫌悪して。思春期だなぁ。 誰かを愛する、その愛の基準がわからない。最後2人に対する愛が芽生えた気がするけど、恋愛でも友情でもなく、それを超えた愛を持った気がする。 ひらいて、は、心を開いて。なのかな。
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内面と表面が乖離したむちゃくちゃな女の子が、少女漫画の理想像のようなプラトニックな「かんぺきな恋愛」をおもしろがって(いるつもりで)かきみだそうとするけど、うまくいかずにただ自分だけがずたぼろに傷ついて、でも自分でも自分の内面のことがよくわからないから傷ついていることにさえ不安を抱いて、渦巻く衝動を抑えられない。最後には「かんぺきな二人」に許されながらも、むきだしのむちゃくちゃな自分のまま、ひたすら生きようとする、クソみたいな少女性の物語。
とにかく刺さる。友人達を見る冷めた目も、本心からではない言葉を止められない衝動も。病気を抱えつつも強く生きる美少女と、どこかいつも遠くを見ている物静かな少年、この二人こそが異常だ。本当に人間らしくもがき、「愛は唾棄すべきものだ」とうそぶく主人公の愛こそが、ぼくの心を揺らす。
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『二十万年の勝利の跡が、今の、どの街のどんな隅にもころがっているのである。私たちの肉体のどの隅にも。
嘘だと思うなら、立ち上がって歩いてみろ、嘘だと思うなら独言いってみろ、その簡単な事実こそが、二十万年の勝利のしるしである』
『過剰さは悪、退廃、点滅、夢見てはいけない堕落。山の頂きは信仰の対象なのに、高すぎる人口の塔は、満足感と同時に人間をうっすらと怯えさせる。禁忌なんていい加減な、人によって程度の差がある概念なのに。』
『私はいままで水を混ぜて、味が分からなくなるくらい恋を薄めて、方々にふりまいていたんだ。いま恋は煮つめ凝縮され、彼にだけ向かっている。』
『ポテトの二本めを食べ終わると、満足感が急激に同じ体積のまま後悔に変質したから、ポテトに手を伸ばすのを止めた。』
『なにかを得て、なにかを失って、でもとにもかくにも継続していく。
それが大事なのかもしれません。
自分がいま持っているものを評価し、感謝すること。』
『私はたくさんの情報が身体を流れてゆく感覚が好きだ。それらは私になんの影響も与えずに透過してゆくけれど、確実に私をよごしてくれる。毎日のニュースは、その日浴びなければいけない外での喧騒を耐えるための、免疫をつけてくれる。』
『十二位はてんびん座。なにそれ最悪じゃない。少しも信じていないけど、世の中には順位があることを朝から徹底的に思い出させてくれる星座占いは好きだ。』
『メールがあるのに、手紙なんておかしいかな。
でも手紙って、読んでいるとき、会っている気分になりませんか。
その人のぬくもりや気配が、字といっしょに紙の上に残っているような。』
「あれって、愛ちゃんとの? ふふ、そうだね。あれが初めて。最高のキスだよ、危機を救ってくれた助けのキス」
「もう一回しようか」
「え?」
「あのとき、意識がもうろうとしてたでしょ。もう一回やり直そうよ、ファーストキス。まあ、私は初めてじゃないけど」
『でもいつかその弱さも受け止められるように。
言葉にしなくても、つないだ手のあたたかさで安心できるように。
心の底から祈っています。
この手紙も、その祈りの一部です。』
『彼女をもっと支配したい気持ちとむちゃくちゃに壊したい衝動が激しく混ざり合う。この、相手を掴んで握りつぶしたくなるような欲を、男の子たちがいままで"かわいい"という言葉に変換して私に浴びせてきたのだとしたら、私はその言葉を、まったく別なものとしてひどく勘違いしていたことになる。』
『せめて名前だけでも答案に書き入れる。愛。常に発情している、陳腐な私の名前。黒鉛で書いても、真っ赤に染まっている。』
『彼とまた会う機会ができれば、私はきっと、文字通り飛んでいく。心と同じスピードで走れたら、どんなに気持ち良いだろう。』
『理由なんか、どうでもいい。私たちはいつもときどき、ひどくつらい。』
『ああ柔らかい、ちょっと力を込めて吸いすぎると傷つけてしまいそうなやわいピンク色。歯の生えた人間が口��含んでいいものなんだろうか、これは。』
『たとえを忘れて、また違う好きな人ができて、大人になった私とやらは"あの頃は思いつめてた。でもいまはすっかり吹っ切れて元気"なんて言って笑うのか。』
『だから私が気付いているのは、ちゃんと覚醒をしているのは、今しかない。今しかない。今しかこの恋の真の価値は分からない。人は忘れる生き物だと、だからこそ生きていられると知っていても、身体じゅうに刻みこみたい。一生に一度の恋をして、そして失った時点で自分の稼働を終わりにしてしまいたい。二度と、他の人を、同じように愛したくなんかない。』
『いつ魔法がとけるかと怯えている。女の子でいることは魔法だし、人目を惹く女の子でいることは、もっと魔法だから。』
『およそ、忍耐力など持ち合わせていない人が、たとえ打算があったとしても、私の前でおそろしく辛抱強くふるまい続けるのであれば、私は愛さずにはいられません。
ほんのひとときでも、心を開いてくれたのであれば、私はその瞬間を忘れることはできません。』
『正しい道を選ぶのが、正しい。でも正しい道しか選べなければ、なぜ生きているのか分からない。』
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愛は過激だけど、とても普通の女の子だと思う。私も色々なものを手に入れたいが、なかなかそうはならない日常をやり過ごしている。
私も、あまりにも自分の為に生きているくせに、あなたは生きているだけで美しいと丁寧に言い聞かせてくれる、だれかのそんな存在になりたいと思う。なれるなら。
もう、社会人だし、光浦さんのあとがきに出てくる職業に就いている私だって、むこうみずの狂気がある気がする。
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痛々しい、と一言では片づけられない強烈な行動の数々。
ラブレターを盗み見たことから、ここまでの行動に出てくるのは、どんな心情からなのか・・・それは私には理解ができなかった。
本編もさることながら、光浦靖子のあとがきがとてもよかった。
2015.2.8読了
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昨日買った2冊。綿矢りさの「ひらいて」と、西加奈子の「窓の魚」。
まず「ひらいて」を読了。女子高生小説と帯に書いてあるけれど、甘い淡いストーリーではないから心が強くないと読めない。
小説の主人公というのは、共感してもらえそうな、好かれるキャラクターが多いと思うけれどこれは違う。いい子ぶっていないし媚びてもいない。人物のこういう描写ができるというのは、綿矢さんは凄い人なんだなと思った。
彼女は(主人公の愛も綿矢さん自身も)これからどうなっていくのだろう。
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この期に及んでなぜ私を怖がる。私がここまでさらけ出しているのに、なぜ自分の不器用さにばかり目を向けて、私の不器用さに気づいてくれない。彼だけが迷っているのではない。私だって、きっと、同じくらい怖い。でも思わず身体を突き動かされる、なんとかして事態を好転させたい思いに負けて、ほとんど本能だけを頼りに、真っ暗闇のなかを突き進んでいるだけだ。
この文書を読んだ瞬間に愛のことが好きになれた。やってることは間違いまくってるけど、その気持ちは間違ってない。
あと、巻末の光浦靖子の書評がとてもよかった。新潮社の編集者の方、良い仕事です。
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―――でも、生きてるって感じがする。―――
新潮(文芸誌)で読了済みなことをすっかり忘れて購入。
読み始めてすぐ思い出したのは、わたしのなかにインパクトが残っていたせいか。
あらためて読んで好きな箇所は少し変容していた。
それがおもしろかった。
登場人物、誰も好きじゃないなあ。
おどろおどろしい話だけど、すんなりとしたエンドロール。
印象に残るのは美雪が発作で倒れるところと、ラスト付近の美雪からの手紙。
心にフッと明るみが差す。
たとえ宛の手紙に記される「澄みたい」いい言葉。
詩的なことば文章が多く、声に出して読みたくなる。
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結構な時間をかけて無理やり封じ込めようとしていた感情を、いとも簡単に解き放たれてしまった。登場人物につられるかのように、ほんとの気持ちを、美しいものも醜いものも自分自身につまびらかにされてしまうのが、病み付きになりそうに快感。生きてる実感が強くなる、めったにない体験をした。自分の調子も関係するのかもしれないけれど、すごい絵や音楽にあるぴんと、しんとした緊張感があるなぁと思う。