2015年の本格ミステリ最大の話題作
2016/12/13 10:01
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投稿者:アントネスト - この投稿者のレビュー一覧を見る
『恋と禁忌の述語定理』に登場した個性的な三人の名探偵の中でも、特に印象的な「奇跡の実在を証明するために探偵をしている」名探偵・上苙丞の単独主役編。
共同生活をしていた宗教団体の村で起きた大量殺戮。唯一の生き残りの女性は言う。「私を救ってくれた男の子は、首を切断されてから、私を抱いて逃げてくれたような気がするんです」
普通の推理小説なら、何らかの錯誤やトリックの存在があることを前提にして、それを解明する話になります。が、上苙は違います。
まずは、普通の探偵どおり、あらゆるトリックを検討する。そして、その全てが否定されたのなら――これは人間の知恵でなせる業ではない。僕が求め続けた真の奇跡だ。
相棒の守銭奴・フーリン姐さんの愛ある(あるよね!?)ツッコミもなんのその、「奇跡」を求めて猪突猛進する名探偵のひねりの利いたミステリ。決して設定の奇抜さだけでなく、検討されるトリックや、それを否定する推理の構築もきわめて上質。新たな傑作シリーズの開巻です。
耽美的で精緻な新本格
2016/08/15 17:31
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投稿者:わびすけ - この投稿者のレビュー一覧を見る
読後感が初期の古野まほろっぽい。漫画化するなら全盛期の魔夜峰夫かな?ミステリ部分はルールに忠実に、設定や人物は過剰にラノベ的。最近探偵小説に飢えていたのでシリーズで楽しみたい。
タイトルに惹かれて
2015/12/26 20:15
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投稿者:おーばっち - この投稿者のレビュー一覧を見る
「その可能性はすでに考えた」は、探偵役の決め台詞なんですね。
主人公は、ありとあらゆる可能性を否定していくというスタイルの消去法探偵さん。
本作で、登場する可能性は大筋で3つ程度なので、ボリューム不足感・・・
不可能犯罪が題材なのでパターンは限られるとは思うが、可能性の提示数が少なく、掘り下げも浅いので物足りない感じがした。
本筋に関係ないが、作者の博識っぷりが凄く、随所に雑学が書かれているので勉強にもなるかも。
可能性を否定する
2019/05/03 17:40
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投稿者:咲耶子 - この投稿者のレビュー一覧を見る
持ち込まれた相談に対し、謎を解いていくのではなく可能性を潰し「奇蹟」であることを証明する探偵さんです。
次々現れる人たちの語る可能性を否定していきます。この周囲の人たちがうるさい。
探偵が「奇蹟」にこだわる理由も明らかになっていきます。
いろいろ不完全燃焼
2017/03/20 18:33
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投稿者:しゅんじ - この投稿者のレビュー一覧を見る
好みの感じなんだけどな。力業なのはいいとして、色んなトコに無理がありすぎないか。この人物設定で、なんで舞台を日本にする? あともう少し挑戦者を出さないと、「全ての可能性」を網羅し切れた感がでない。最後の真相が割とすぐに思いつきそう。フーリンは必要か? 敵役の枢機卿が無茶をしすぎ(宗教家なのに)。時々ある「あ〜もう、ワシが書き直したい(無理だけど)!」と感じる作品の一つだなあ。まあ、メフィストだし、直すと良さがなくなっちゃうよな気もする。
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奇蹟を証明したい探偵の元に不可解な事件が持ち込まれる。探偵はついに奇蹟を確信するが、次々と証明する勝負を挑まれ打ち破っていく。
探偵がロジックを否定する側というのが面白い。色々と難癖をつけられるが「その可能性はすでに考えた」と決めゼリフを言い否定する。映像化しても面白そうではある。
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仮説に対して反論する、という設定は面白かった。ただ、一作目なのに設定を詰め込みすぎてて、仮説と反論を追いたいのに設定を理解しなきゃいけないのがかったるく感じた。
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以下、一部前作のネタバレも含みます。
〈奇蹟〉を証明するためあらゆる可能性を排除していく探偵。前作に登場したモブ探偵をフルに使った作品。
多重解決もののミステリとして見た場合、それまでの推理の前提の積み上げで新たな真相が導かれる、という推理合戦の醍醐味が体現されていて素晴しい。「無理筋のバカトリックでも可能性があるならば奇蹟ではない」という理屈の下で、ダイナミックなバカトリックを巧いこと消費しているのは考えたなあと思った。
そして、黒幕との最終決戦でそれまでの多重解決という趣向そのものに仕掛けられたトリックが探偵に牙を剥くのも、前作の連作短編を利用した趣向の上を行っていて、それまでの推理はふぅんという感じだったが、とても唸らされた。
しかし、「あらゆる可能性を潰して奇蹟を証明する」という割りには、出て来て潰される可能性は三つしかないし、「あらゆる場合分けをしている」という所はマクガフィン的に出て来る「厖大な報告書」に押し付けられてしまっているきらいがあるのが残念。三つの可能性を否定する仮定でそれぞれの「方向性」を原理的に否定できればよかったのだが。
奇蹟としての解決が与えられた後、ラストに「それまで見逃していた可能性」として上苙はこの小説での暫定的な「一番ありうる可能性」としての真相を語るが、先述の〈報告書〉がブラックボックスになっているため、いまいちインパクトに欠ける。勿論、それまでの推理と黒幕による論理的陥穽を踏まえた上の結論ではあるのだけれど。
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奇蹟の存在を証明するため、全てのトリックの可能性を否定する。可能性の列挙と事実に基づいた反証の丁々発止のやり取り。探偵の反証を逆手に取った矛盾点の追及とそこからの鮮やかな切り返し。そして最後に現れる美しい奇蹟。そのすべてに大満足です。
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前作の印象からして、次作を買うことはないだろうと思っていましたが、出版社側の猛烈なプッシュ、そしてなにより麻耶の帯に吊られて買ってしまいました。
その内容はと言うと、うーん、評価が難しい…
一風変わった推理合戦の果てに起こる矛盾。その導き出し方はかなり面白いと思います。否定に否定を重ねてきた推理が、さらに否定される。その過程は極めてロジカルで、なるほど文三が推したい気持ちもわかります。
それでも、この真相はこの設定に在っては肩すかしと感じてしまいました。ミステリとしての設定、趣向に殺られてる感は否めません。
推理自体は面白いのに、真相がチープでつまらない。
光る部分はあるのに、何とも勿体無い作品です。
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提示されるトリックとそれへの割合明快な反証の応酬は小気味好くもあるが、クライマックスのアレの物分かりの良さが少し物足りなくもある。しかし奇跡を産んだものの尊みは好き。あとフーリン可愛いよフーリン
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特殊な設定を創りだして、最後まで設定を突き通した
という点をまずは評価したいと思う。
突っ込みどころやら細かい破綻やらはあるにせよ、
その志や良しというか、立ち向かう姿勢を見せる
若き才能に拍手を贈らなくてはいけない。
次回作に期待したい。
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探偵の名前、なんとかならんか。
前作でも出てたよね、この探偵さん。けったいな推理を披露してたような気がしなくもない。
この話も「提示された推理に対する反証」で進んでいく形式。奇蹟を信じたがっている探偵の話。キャラ設定やらなにやらはトンデモなんだけど、推理自体は細かいし、最後のカヴァリエーレ卿の反論あたりはものすごく面白い。こういう切り口があるのか、っていう。
いやそもそも本来の「探偵小説」であれば、「やったことを証明」が基本だしな。複数の反論を組み合わせることによって出来上がる矛盾だとか、そんな状況にはならんよな。
だからそういう状況を書いたってことがまずすげぇなって。面白かった。決定的に「うぉおお」ってなったとこはなかったけどな。全体的に面白かった。
悪魔の証明はやっぱりどう足掻いても人間には無理だと思うよ。バカ正直に真っ向から突っ込んで行ってどうにかなる相手じゃない。「すべての可能性を潰す」ことなんて無理。QEDをどこで叫べばいいのか分からないんだからさ。現時点で思いつく限りをすべて反証したとして、五十年後に誰かが別の推理を思いつく可能性は否定できないだろ。だからこの話自体はとても好きなんだけど、探偵の姿勢に疑問が残る。
ていうかこの探偵の過去の話って前作にもちらっと出てきた? どっかで読んだことがあるような、ないような。
タイトルがすごくいい味を出しているので、ラストの部分にもうまい具合に捻じ込んでもらえてたらなぁって願望。そうだね、「結局自分で奇蹟を否定せざるを得なかった」ってなる下りに、物語的にもうひとひねり、ガツンとくるような文章でもぶち込んであれば「うおおお」ってなったかもしれない。
ところで、フーリンさん、どれくらいのぽっちゃりなの?
抜粋。宋女士のお言葉より。
「(略)なんとなれば、単に愛する者を手元に置きたいだけなら、首ではなくただ両脚を切断すればよいのですから……。(略)」
すっごいどうでもいいけど、この話の帯に麻耶雄嵩を連れてくる講談社、ほんと好きです。途中で気づいたわ、なんで麻耶くんなのか。
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帯に釣られてwkwkしてしまったのです
多重推理と言うよりは、提示される可能性を否定していく形式でお話は進んでいくのです。しかも安楽椅子。
多分これが嵐の山荘や館でリアルタイムに進んでる話なら、細かい人間関係や建物や環境のイメージがもっとピンと来ると思うのです。
そう言うのを全部取っ払って、最後の推理合戦だけ読ませてくれる……と言う感じなのですね。
出てくるキャラがなんと言うか、ちょっとアレな感じばかりで、最近出る本はそんなんばっかりだなーと思って読んでたのです。
ラブコメ要素を足せば立派なラノベか中2なキャラばかりなのですけど、展開自体は面白かったのです。
ミステリーアリーナの前に読みたかった……ora
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かつて、カルト宗教団体が首を斬り落とす集団自殺を行った。その十数年後、唯一の生き残りの少女は事件の謎を解くために、青髪の探偵・上笠丞と相棒のフーリンのもとを訪れる。彼女の中に眠る、不可思議な記憶。それは、ともに暮らした少年が首を斬り落とされながらも、少女の命を守るため、彼女を抱きかかえ運んだ、というものだった。首なし聖人の伝説を彷彿とさせる、その奇蹟の正体とは…!?探偵は、奇蹟がこの世に存在することを証明するため、すべてのトリックが不成立であることを立証する!!
・レビュー
粗い部分は多いが面白い。発想を存分に活かして作品に落とし込んでいるのがよく解る。
麻耶雄嵩の「これはアンチミステリではない ただの奇跡だ」という帯はかなり正鵠を射ているというか、まさにこの作品を形容する一つの視点として真実味がある。
ジャンルとしては確かに「探偵」に対してアンチミステリ的な試みが成されているのだけれど、ストーリーというかプロットには思いの外真っ当なハウダニットのロジックが組まれていて、全体を通すとアンチミステリというより反転ミステリといったような感じだ。
かのシャーロック・ホームズは「不可能なものを排除していって、残ったものがどんなに信じられないものでも、それが真実」という名言を残しているけれど、今回の探偵である上笠丞はこのホームズのスタイルと対になるような探偵だ。
それは一見人の手によるとする解釈が困難な事件の、あらゆる人的・現実的な可能性を否定し尽くすことで、その事件が「奇蹟」であることを証明するというものである。
探偵というのは奇蹟のような事件を人の手による犯罪だと見破ることが多いわけだが、本作の上笠丞は奇蹟の存在を信じており、真の奇蹟を証明することを目指し、ライフワークにしている。
上記の通り、探偵としての上笠丞の仕事はいわばトリックの網羅だ。それで解決できなければ、それは「奇蹟」であるわけで、したがってその証明方法は奇蹟という選択肢以外のあらゆる可能性の矛盾をついてロジックで消去していくことになる。
以上の設定からしてストーリーは少々珍しい物になっている。
まず依頼人により「問題」に当たる過去の一見奇跡的な事件が語られる。それに対して上笠丞はそれが奇蹟であるという結論を出す。
そして本作の主要な内容は多重推理、多重解決のミステリとなっている点だろう。
上笠丞の「奇蹟という結論」に対して様々なキャラクターが目の前に立ちふさがり、仮説を呈するのだ。つまり、人的なトリックであると証明するのが敵であり、それを解決できない奇蹟だと証明するのが主役である上笠と相棒のヤオ・フーリンになる。立場が反転しているのが面白い。
一つの問題が最初に提示され、それに対して複数の敵がそれぞれトリックの可能性を出していく。ここで重要なのが、上笠丞は現実的根拠と証言を以ってしてその仮説やトリックを論破していく必要があるが、敵に当たる側から提示されるトリックはあくまでも可能性さえあればなんでもありという点だ。
奇蹟の証明の為にはそれ以外のすべて���可能性を排除せねばならないので、逆に言えば奇蹟でないことを証明するならばたとえ僅かでも可能性を指摘すればいいことになる。
これがルールとして前提にあるので、本作は非常にバカミス的なトリックがいくつも出てくることになる。可能性さえあればなんでもありなのだから。
しかしこれを根拠に現実的じゃなくてつまらないとか駄作というのは少々違うだろう。まず前述のルールの内なのだから実際の解決とは趣旨が違う。
面白いのはそれに対する上笠丞の矛盾の指摘にある。この作品におけるミステリ的面白みは、解決ではなく「解決の否定」の方だ。
こちらは語られる事件の内容の僅かな記述や表現を根拠に鮮やかに仮設を否定する。
それに至る根拠や論理の方が、本作の推理要素だろう。
さて、話はズレるが本作を読んで最初に僕が思ったのは、城平京の『虚構推理』に非常にロジックの運び方や手法が似ているなということだった。こういった多重解決のミステリは城平京の得意とするところで、漫画の『スパイラル~推理の絆~』やそのノベルズの2巻、デビュー小説の『名探偵に薔薇を』は、そういった要素があるか、あるいはまさに多重解決モノそのものだったりする。
城平京というあまりにコミック原作者としての名前が売れてしまっている推理作家が、小説の舞台に戻りつつある今、本作が好きなら城平京の小説も好きなのでは、とちょっと思ったりする。
最後に、本作にはラストの展開に際して、否定による逆転した多重推理・多重解決をうまく活かしたエピソードが待っている。プロットの構成美が非常に際立っているラストなので、見所といっていいだろう。