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投稿者:phi - この投稿者のレビュー一覧を見る
第 1 部は比較的──飽くまで「比較的」ですが──スムースに進めます。しかし,第 2 部に移ると,ゲーテの,“気迫”と言うか,重さがずっしりと伸し掛って来ます。前以てホメロスの『イリアス』や『オデュッセイア』,ウェルギリウスの『アエネーイス』,又,旧・新約聖書あたりを読んでおけば,更に愉しむことが出来ただろうな,と思います。■
世界征服の夢から天使墜落へと
2012/07/22 16:57
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投稿者:SlowBird - この投稿者のレビュー一覧を見る
ファウストはメフィストフェレスの誘惑に乗って、あらゆる欲望を実現する。彼の欲望は強靭で醜悪だ。むしろその激しさにメフィストの方が引きずられている。
ファウストは少女を毒牙にかけて破滅させる。美少女グレートヘンの悲劇など歯牙にもかけないのは、彼が人類を超越した者だと自認しているのか、悪魔の、そして神の後ろ盾によって保護されているのか、肉体は若返っても脳は瑞々しさを失っているのか、彼の描くヴィジョンの前には些細なことでしかないのか。肥大する欲望は魔女たちとの祝宴、ワルプルギスの夜を経て、もはや現世は顧みる必要も失われてしまうのだろうか。
あらゆる俗事は、究極の美女ヘレナとの愛の前には霞んでしまうのは仕方がない。時空を超え、詐術と権力を総動員して、結局どれほどの快楽だったのだろう。王国一つを征服し、侵略戦争を起こして、そうまでして手に入れずにはいられない激しい欲望だったのか。そこまでする価値のある至福だったのか。その巨大な仕掛けと壮麗さには目を見張る。神話上の賢女、妖精たち、科学の粋による人造人間ホムンクルスなどに彩られた展開は素晴らしい。
そんな美が奏でられるのは、もしかするとこの時代が最後だったのかもしれない。神の名の下にあらゆる生贄が許されるのは、既に19世紀には稀少だったはずだ。人々は皇帝を疑い、神の不在を疑う。自然は決して征服されることはなく、天地は法則に従い、理性は常に狂気と一体なのだと、人々は悟った。罪の清算は自らの中にメカニズムを求めた。
ファウストは、最後にはその欲望を人々に奉仕することに求める。世間の約束事を無視して自在に振舞うことより、その底に沈むことをを願うことで安寧を得るという対比こそが、この作品の眼目で、その落差のためにも華麗にしてグロテスクな遍歴は必要だったのかもしれない。そのような華麗なショーを見せてくれる最後の作家がゲーテだったのではないか。
ホフマンも、ネルヴァルも、ハイネも、そのような世界観からは既に離れている。聖的な世界は地に堕ちている。時代の境目として見れば、人間中心の哲学と神学的哲学の混交がゲーテの中にあったということか。
この古典中の古典、傑作中の傑作について、ど素人が分析するなんてゴメンナサイなのだけど、はてさて僕の中ではそういう位置に落ち着きましたよ。
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投稿者:ドーテ - この投稿者のレビュー一覧を見る
私はこのゲーテ作品に、ゲーテの特質をみたような気がしている。あの二者間のやりとりだけではなく、数多くの登場人物。
これは物事を真に多面的にみることを伝えている。人はあらゆる役割をどの瞬間にも演じ分けているのである。
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投稿者:ないものねだり - この投稿者のレビュー一覧を見る
手を伸ばせば本棚に本がある環境で成長する。階級格差が厳しい社会で書物に触れる機会に恵まれた幸運な人。
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あらゆる学問を極めたものの空虚さを抱くファウストが、悪魔メフィストフェレスと契約を交わし世を謳歌する。メフィストフェレスとはどの人間でも持つ秘められた感情である、と感じた。人間の生をテーマにしたようなモノは結構好きで、小難しい文章で長々と書かれたこの本も、結構スラスラ読めてしまった。
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ゼヒ再読したい本。
なかなかというより、かなり難しかったと思うけど、面白かった。
第二部はまだ読んでないけど、近いうちに読めればと思ってます。
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ファウストとメフィストの出会い、そして冒険の始まり。ファウストが人としてたどり着いた境地は只の絶望と儚さ。自らを哀れな者と思い変化を望んでいたところにメフィストが現れ彼の旅は始まる。そして、旅の途中ファウストは自分にとって全てとなりうる女性に出会う。しかし、幸せは続かず彼の愛した女性グレートヒェンは不幸の淵に陥り二人は別れの時を迎える。
二人の間に用意された結末、それは悲劇。
うーん、こんな感じでしょうか・・、正直短く纏めるには無理があるほど素晴らしい作品であると思います。
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人間の欲望、醜さ。そんな物をこんなに美しい言葉で綴る事の出来る人も早々居まい。
そしてメフィストフェレスの実に悪魔らしい所なんて思わずニヤリとしてしまう。
でも、やはり悪魔は神に敵わない。そういう事ですね。
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悪魔の力を借りて、人生の享楽を体験しまくりたいファウスト博士の物語。たくさんの哲学と思想、それからあらゆる生命への賛美に溢れた文体は天下逸品。でも結局悪魔メフィストも天才ファウストも完璧ではないし必ずしも正しいわけではない。そんなキャラ設定が、物語を受け入れやすくしてくれました。
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大学者ファウストと悪魔メフィストとの話を通じて、人間の本質と愚かさを語らせた長編。悲劇に向かって蛇行しながら生きる登場人物を通して、思想(良くも悪くもキリスト教圏の詩人が辿り着いた思想ですが)させる内容。
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ゲーテ(1749‐1832)はこの大作を24歳で書きはじめて82歳で書きおえ、83歳で没した。詩人の天才をもってしても完成に殆ど全生涯を要したのである。『ファウスト』第1部では、学問の無力に絶望した大学者ファウストが悪魔メフィストの助力を得て官能的享楽の限りをつくそうとするが、それは心清き少女グレートヘンの痛ましい悲劇におわる。
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〜ゲーテ(1749−1832)はこの大作を24歳で書き始め、82歳で書き終え、83歳で没した。詩人の天才を持ってしても完成に殆ど全生涯を要したのである。絶望した大学者ファウストの悲劇とその中から生まれる人類愛という救いを描く、ゲーテの全生涯をかけた大作〜予想していた内容と違っていた。もっとファウストの苦悩が中心かと思えば、一概にそうでも無かった。むしろ個人的には、この作品の主役はメフィストでは無いかと感じた。悪魔なのに、ある意味ファウストよりも人間くさく感じたのは気のせいでしょうか。訳の影響かも知れませんが。いや、この作品において、そもそも主役というくくりで表そうとする事自体が間違いなのかも知れない。余りにも有名で歴史的な名著に感想を載せるのはおこがましい気もするが、素直な感想を。個人的には、この1部には非常に引かれたが、2部には荒唐無稽な部分が多く、イマイチ入り込めなかった。ゲーテの執筆した年齢も状況も違うし、作品場、わざとそう言う表現をしていると言われればそれまでですが、それを踏まえても…う〜ん。ラストも、結構期待していたのだが…。中盤以降の展開が尻つぼみして言った感じが、個人的にはいなめない気がした。ちょっと期待しすぎたかも。また読み返したら違う感想になるのかも知れませんが…。比較的読みやすいし、またいつか読み返してみようと思います。
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1部の最後
救出しにきたファウストを拒絶し、自分の子殺しをした女が処刑を受け入れる場面
メフィスト「彼女は裁かれた!」と叫ぶ
天上から「いや、救われたのだ」という声が響く。
(背後から)ハインリヒ、ハインリヒさん。
この一説に最も高揚しました。
現実に起きた事実「グレートヘンの悲劇」とゲーテの自己の経験を重ね合わせて、書いたと言われています。
最近話題の赤ちゃんボックス肯定派の人にこの本を読んでいただき、お聞きしたいです。
「なぜ、グレートヘンは救われたのですか?」
神にすがったからではないです。
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有名な作品だと知っており、試しに読んでみました。そしたら戯曲だったので、慣れるのが大変だった(笑)
でも、内容が深くて深くて。後半の流れがうはwwwイミフwwおkwwwwみたいな感じでした。就職する前に、もう一度マジで読み直したい一冊。
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こいつぁまじでやばい。
最終的に悪魔にも勝っちゃう知の力。正直いいとこ取りてきな主人公が嫌いになる人もいるかもしれんけど。
知力のみでは人生うまくいかないのかなぁ。悪の力もバランス的には大切ってことか。ようはバランス。彼ほどの知にはメフィストほどの悪でちょうどいい。