償いの雪が降る みんなのレビュー
- アレン・エスケンス(著), 務台夏子(訳)
- 税込価格:1,222円(11pt)
- 出版社:東京創元社
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重くなり過ぎない軽やかな味付け
2021/01/31 22:35
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投稿者:pinpoko - この投稿者のレビュー一覧を見る
作者のデビュー作とは思えない、完成度の高さが目を引く。
厳しい環境にあっても、そこから高く飛翔しようと、実家を離れ大学へ進学する主人公ジョー・タルバート。登場人物紹介欄での主人公家族の苗字がみな違っているところからして、一筋縄ではいかない家庭環境なんだとすでに身構えさせる。
しかし、ふたを開けてみると自分を縛るろくでなしばかりではなく、自分が助けてやらなければならない自閉症の弟がいる、というのがジョーの人間形成に大きく関わってくる。彼の人間としての成長を阻害するのか、後押しするのか、どちらに転んでも読ませるテーマなのに、さらにそこに末期がんで死を目前にしたカールとの関係が絡んでくる。ひとつのストーリーの中にこれだけの要素を盛り込んで、なおかつこのボリュームにまとめ上げているのがうまい。
主要登場人物はみなそれぞれ過去のつらい記憶に苦しめられ、そこから逃れようとしている。作者は刑事弁護士としての経験があり、実際に登場人物たちのような境遇の関係者たちと身近に関わってきた。法の裁きの及ばない各人の様々な人生を実際に見つめてきた経験が、確かにこの作品に生かされているのを感じる。そこには実際の裁判ではなかなか触れられない癒しと救いが示されており、作者の虐げられたものたちへの限りない優しさと共感が強く感じられた。
タイトルから内容まで秀逸
2020/08/10 12:58
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投稿者:あお - この投稿者のレビュー一覧を見る
原題の「The life We bury」も、読み終わって振り返るといいタイトルだよなあと思うのだけど。
日本語版のこのタイトルも、これしかない、というぐらいの決まり方だ。
考え抜かれて研ぎ澄まされ、とちゅうから激流のように走り出すプロットに、スピードを上げるジェットコースターにしがみつくように、ついて行った感じだった。
若いのにずいぶん苦労人の大学生の語り手(アメリカの大学生には、肌の色関係なく、こういう苦学生も結構いる。)と、人生をいま終わろうとして、来し方を振り返っている老人との対話が、深い。
登場人物の抱える痛み、半端なく痛いはずなのに、それを大したことないよ、という風に語るのが、アメリカ人あるあるだと思った。
そして決して明るい話ではないのだけど、希望が持てる終わり方で、読後感がさわやかだった。
本編中でちらっと登場する脇役が主役になる、別シリーズの作品ももうじき発売だそうで、秋が来るのが楽しみになった。
応援せずにはいられない主人公
2021/12/31 02:05
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投稿者:docuciaA - この投稿者のレビュー一覧を見る
新聞か何かで紹介されていたのをキッカケに知り、手に取った一冊。
主人公が度重なる困難に見舞われ、その度に読んでいるこちらもダメージを受ける…というヘビーな読書体験でしたが、読後感は爽やかでした。
読んでよかった!
タイトル通り冬の読書にオススメの一冊です。
青春ミステリの良作
2019/03/25 03:27
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投稿者:かしこん - この投稿者のレビュー一覧を見る
“僕”こと一人暮らしの大学生ジョー・タルバートはアルバイトをしながら講義と課題をこなす貧乏学生。ある日、年長者の伝記を書く、というお題が出る。母親のことは絶対書きたくない“僕”は、近所の介護施設を訪れて事情を話し、院長に誰か紹介してほしいとお願いする。そこで引き合わされたのは末期がん患者のカール。
実はカールは30年前の殺人事件の犯人として服役していたが、現在は病気のため仮釈放中だった。「臨終の供述」をすべき時が来た、として“僕”との対話に応じてくれることになったカールに疑惑を持って応じていたが、当時の裁判資料を手に入れて調べていくうちに、カールは犯人ではないのではないかと思い始めて・・・という話。
いわゆる<冤罪もの>ではあるのだが・・・あくまで青春ミステリのテイストを崩さないところが新鮮。
ジョーとカールの間に『羊たちの沈黙』のクラリスとレクターのようなやりとりが生まれるのかと思いきや、ジョーの隣人のライラが一緒に調査に加わることでかわいこちゃんにぼやっとなるロマンステイストが加味され(カールよりライラのほうが確実に出番が多い)、調査の過程で弁護士や刑事と知り合いになっていろいろ連絡がつけやすくなるというのも自然ななりゆき。
とはいえ若者にありがちの危険な方向に我知らず飛び込んでしまうジョーのキャラクターに説得力をつけるためにか、飲んだくれのジョーの母親(子供にカネをたかる厄介なタイプ)と自閉症の弟ジェレミーの存在を最初からぶち込んでくるので、読者はついジョーを応援したくなってしまうのかなぁ。家族関係が絶対、みたいなアメリカ文化では親を捨てるためにこれくらい理由がないとダメなのかも。
カールと、ベトナム時代の戦友ヴァージルとの関係にはつい涙が出ちゃうし、若者の話だけではないところに深みがあって、でも語られすぎないところが程よい感じで。
「そ、それはダメだろ!」とジョーの無計画っぷりに何度もつっこんでしまったが・・・それはすっかりはまって読んでしまった、ということでしょう。
追っていきたい作家
2024/08/11 02:51
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投稿者:たっきい - この投稿者のレビュー一覧を見る
すごく読みやすい海外ミステリーでした!とはいえ、ミステリーよりもサスペンス色が強め。30年以上も前に有罪が確定し、今は病気で死を待つばかりの人物の冤罪を立証しようとすると主人公の話。ハラハラする場面もあり、面白かったです。今作で登場した人物で、主人公でなかった人物が、次作め以降は主人公などで登場するようですので、今後世界観が広がっていきそうで、この作家、追っていきたい作家の1人になりました!
デビュー作
2020/12/16 19:15
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投稿者:くみみ - この投稿者のレビュー一覧を見る
末期癌殺人犯に課題で仕方なく普通の大学生がインタビューする事に始まるミステリー。序盤のやる気の無さが滲む主人公がジワジワと殺人犯の話にのめり込んでいくように入り込み易かった。ストーリーは王道で犯人もラストも推測出来たけど、そういう部分ではない歪みなどが繊細に表現されていて良かった
いつかどこかで読んだ内容
2021/08/30 12:28
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投稿者:かきつばた - この投稿者のレビュー一覧を見る
数々の賞を総なめにしている作家のデビュー作。
題名に惹かれて購入したものの、内容はいただけない。
主人公は不幸な母子家庭育ち、そして障害を持つ弟。
アパートの向かいに住む女学生への淡い恋心。
そして大学から出された課題でなんとなく始めた、少女殺しで有罪になった人物の調査。
これら全部、どこかで聞いた事がある。
物語を読むのは、惹き込まれるほどの魅力を持っているから。
でもこの本には言葉でも、話の展開も意外性がない。