紙の本
五感に訴えかける生々しい一夏の恋愛
2019/10/01 19:26
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:ルカ - この投稿者のレビュー一覧を見る
身嗜みも無頓着で恋愛経験0の大学生・藤子は、父を亡くしたばかり。突如現れた初老のカメラマン・全に、父性を求めながらも、いつしか恋心が芽生える。
これは、単なる歳の差のある恋愛物語ではない。若さと老い、ほとばしる生と抱え込む闇を、五感特に嗅覚や湿度等に訴えかける表現で、非常に生々しく感じさせている。
あの一瞬から藤子を撮りたいと思ってしまった全。彼が撮った写真とは。。。
千早茜さんの真骨頂を見た作品。
紙の本
喰らい尽すような恋
2019/09/14 20:04
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:咲耶子 - この投稿者のレビュー一覧を見る
背が高くて無愛想な二十歳の藤子。そんな藤子の目の前に父の友人で近所に住んでた写真家が現れます。
恋に臆病な藤子にとって、ただのおっちゃんだった人が何か心に引っ掛かり、急激に引き付けられていきます。
出会った頃と数年後の今と行き来しなが話が展開し、あの出会いは何だったのか振り返っていきます。
多くの未来を持ってる二十歳と、人生を閉じようとしている写真家の食い荒らすような恋愛がなまなましくて一気に読めます。
藤子の大学の友人里見くんも魅力的なキャラ。
紙の本
私を輝かせる父の友
2022/06/02 18:23
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:Todoslo - この投稿者のレビュー一覧を見る
生命力に満ち溢れたヒロイン・藤子と、傷だらけで老いた広瀬全とのコントラストが見事です。他人から見ると汚れていても、恋する自分こそが美しいのかもしれません。
紙の本
うだるような暑さの中で読むのが似合う
2020/08/24 16:51
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:kochimi - この投稿者のレビュー一覧を見る
ひと夏の恋、というサラサラとした響きとは真逆の
猥雑で濃密な、でもどこか純粋さが潜む夏。
その季節は、その人生を変えてしまったけど、
それもこれも、俯瞰で見れば神様の暇つぶし。
とらわれすぎることなく前に進んでいってほしい。
じっとりとした暑さの中で読むと、
空気感が肌から伝わってくるようです。
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:なま - この投稿者のレビュー一覧を見る
神様の暇つぶしとは、いったいどういう事だろうと思い、この本を読むことにしました。そういう意味でも、タイトルというのは大事なものだと思います。
投稿元:
レビューを見る
いつか嗅いだことのある汗と絡み合う甘い煙草の香りが鼻につく。
太陽のギラギラと日陰の暗さのコントラストの残酷さ。
言葉が脳内を刺激して完全に映像化して読んでる。
これだけは言いたい、承認欲求して何が悪いんだよ。
投稿元:
レビューを見る
若く傲慢で痛々しいと本文にある。
その通り。
大学生の藤子が出会った全さんは亡くなった父より年上で、有名な写真家で、既婚者で、女癖が悪くて、けれど惹かれていく様が痛々しい。
藤子が大人になる。生と性。
里見くん、よかった。
投稿元:
レビューを見る
久しぶりに本の中の世界にハマってしまった。
心の中の何かが疼いて、忘れてたものがちょっと甦ってきてしまった。
ただ、タイトルだけは納得がいかないのだが…
投稿元:
レビューを見る
父の友であり、父より年上の写真家「全さん」と女子大生「藤子」の胸を締め付けられる様な、苦味を含んだ物語。いきいきと語られる藤子の姿と苦しみ。闇と葛藤を持った全さんのカッコいい姿に目が放せなくなって一気読みしてしまった。
さびしい、悔しい、ずるい、クソジジイ!
藤子の叫びに胸がぎゅっとなった。
最後、救われるような、一歩踏み出した展開に
心地よい読後感(^_^)
投稿元:
レビューを見る
あなたの未来を、あなたが変わっていく姿を、
見たいと望んでしまった…
わからなかった
居なくなった理由が、私にはわからなかったのですが
このセリフで分かりました。
感情移入できず…
でも読み進めたくて、4時間で読みました。
投稿元:
レビューを見る
初出 「別冊文藝春秋」329号〜338号
今年読んだ中で一番の作品。
藤子は父親を交通事故で亡くしたばかりの20才の大学生。中学の時に母親は家を出ていて、身長が高く人付き合いが下手なために、静かに沈んでいきつつあったところに現れたのが、近所の廃業した写真館の息子で、亡父より年上の写真家の全さん。
藤子は破天荒な芸術家に反発しながら惹かれていく。そのこころの揺らぎの描写がいい。映画にして欲しいと思った。
藤子は写真家の助手から近づきすぎないように警告されていたが、体を重ね続けて全さんが全てになってしまう。全さんは藤子を撮り始め、そして突然彼は消えて、藤子は世界の意味を失う。
藤子は大学を卒業してから、全さんの妻から遺作として藤子の写真集を出版する承諾を求められて驚く。彼は末期癌の最後の時期に、自分と藤子の時間を切り取って残していた。藤子は写真集に「全さんが見つけた神さまが、重く、烈しく、醜いまま、息づいていた」のを見つける。
藤子の生々しいエネルギーの発露がいい。写真を撮りたくなるのがよくわかる。
投稿元:
レビューを見る
書評を読んで。
あっという間に読めた本。
千早作品は2作目。
お父さんを亡くしたばかりの大学生藤子。
父親が生前EDに悩んでいたという事実を知り、気持ち悪いという感情を抱く。
潔癖症とまではいかないが、そんな藤子が写真家全さんにどんどん惹かれ、とうとう一線を超える。
身長とか女らしくないとか、そんなコンプレックスも忘れのめり込むが、全さんは突然姿を消す。
しばらくして、全さんの遺言だという藤子の写真集の原稿を持って奥さんが現れる。
結局写真集は世に出るわけだが、中身も見ないで「好きにしてくださいっ」というのはあまりに投げやりな気がしてしまった。普通の女の子なんだし。
結局は弄ばれた、と見られても仕方がないような。
女の子が一人で暮らしている家に頻繁に出入り。近所の目も憚らず?というのもなんだかなぁ。
それと、藤子の父親と全さんの関係がいまいちわからなかったな。
母親に会いに行くところも、急に旅立った割には、え?終わり?という感じ。
もっと若い頃の心を思い出して寄り添えたら評価も高かったかも。
「全さんは私の全てでした」という言葉が出てくるが、そりゃそうだろうな、と若くない自分は同意してしまう。
神様の暇つぶし、作中そんな言葉は出てこなかった気がしてが、全てと思ってたことも過ぎてしまうと暇つぶしくらいのそれくらい小さいことなんだよ、ということかな。
投稿元:
レビューを見る
藤子には忘れられない男がいた。
大学生の夏、束の間共に過ごし突然消えた、父よりも年上のカメラマン全。
時間が経って、彼の作品が藤子の手元に届けられた。
プロローグの全さんに嫌悪感を感じ、これダメかもと危惧していましたが、藤子が敢えて思い出していた醜いところが、後には魅力にすら感じられ、夢中でその世界に入り込みました。
芸術家からすると生を煌めかせる藤子の様な女には食指が動くのかも。でも、全さんの本当の気持ちが分かるようなラストにそれだけではなかったと嬉しい気持ちになりました。
里見がいい。性的嗜好を抜きにしても、人をフラットに見れる情緒の安定したタイプで魅力的でした。
投稿元:
レビューを見る
藤子と父親の友達だった写真家の全さんの一夏の愛.桃にかじりつく姿が印象的です.あと小川未明の牛女の話も.
投稿元:
レビューを見る
親子ほども年の離れた男と女のひと夏の出来事。美男・美女が主役ではないところに妙なリアリティを感じ、冒頭から暗示される結末に心がざわついた。主要な登場人物は一様に心に傷を負っているが、だからといって無闇に他者に優しいわけではない。突き放したような、それでいて自然に寄り添うような絶妙な距離感。いつしか自分を重ね、共に痛みを感じ涙した。人を愛する喜びと苦悩……。やばい……。