内大臣としての木戸
2025/05/02 08:23
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投稿者:福原京だるま - この投稿者のレビュー一覧を見る
開戦から終戦まで昭和天皇の宮中で仕えた木戸幸一内大臣の果たした役割について陸軍への協力、開戦への誤算、終戦聖断への役割と知らなかったことが多く勉強になった。
昭和天皇の最側近の評伝
2020/09/05 17:06
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投稿者:トリコ - この投稿者のレビュー一覧を見る
木戸幸一については、「木戸幸一日記」、また、近衛文麿や東条英機、昭和天皇の評伝などには必ず登場する人物だから知名度は高いが、こうして本人を主題にして評伝がまとめられるのはほとんどなかったのではないか。著者は「昭和陸軍全史」など、おおくの新書の著作があるので、読み始めたばかりではあるが、読みやすい。
昭和史の裏側に立つ内府
2021/11/25 14:40
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投稿者:かずさん - この投稿者のレビュー一覧を見る
昭和史前期、特に太平洋戦争開戦から終戦まで宮中にあって天皇を輔弼し首相の推挙に大きく関わった内大臣木戸幸一の働きを考察した一冊。木戸幸一は歴史上大きな役割を負ってたわりに名前だけは出てても生涯を書いたものや思想・考えを伝える本は少なく近代史を読んでみたい一般読者向けはさらに少ない。著者は木戸幸一の太平洋戦争開戦時の考え、近衛文麿や軍部上層部との関り、東条英機を総理に推挙したときの背景。終戦工作時の動き、天皇への上奏等を中心に纏めている。決して表舞台に立っていた人物ではないが戦争に関わった重要人物の一人。ボリュームがあるが興味があれば読んでおいた方がよい。
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投稿者:エムチャン - この投稿者のレビュー一覧を見る
完読までにかなりの時間を要しました。内容はそれなりに興味深いものや初耳、裏話のようなことまで書いてありましたがー。長くて長くて。もう少し短く、面白いところだけ要約したものを発売して欲しかったです
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天皇を「常侍輔弼」する内大臣を太平洋戦争期に務めた木戸幸一の要を得た評伝。重要なキーパーソンであった木戸を通して、太平洋戦争の開戦から敗戦に至る昭和戦前政治史についての理解が深まった。
なんとなくのイメージで木戸も西園寺公望などと同じく根はリベラルと思い込んでいたが、実際の木戸は元来政党政治に反感を持ち、外交でも対米英協調路線からの脱却を模索する陸軍の伴奏者的存在だったというのは目から鱗だった。木戸と近衛文麿とがずっと二人三脚で歩んできたということも改めて確認できた。
太平洋戦争の開戦から敗戦に至るまでに、独ソ戦など木戸等のアクターにとっての誤算が重なり、かつ、適切な判断ができずにずるずるといってしまったということが理解できた。
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【昭和史のキーパーソン本格評伝】東条内閣の生みの親、木戸幸一。二・二六事件から終戦まで、日本の岐路で重大な役割を果たした政治家の生涯を追う。
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副題に「内大臣の太平洋戦争」とあるように、本書は木戸幸一を通して見た満州事変から太平洋戦争開戦に至る過程を詳細に分析したものである。同著者の『昭和陸軍全史』(全三巻、講談社現代新書)も併せて読むことをお勧めしたい。
読者の問題関心は日本はどうしてあのような無謀な戦争に突入してしまったのかという点に集中するように思われる。満州事変や五・一五事件、二・二六事件、近衛内閣の成立と日中戦争の泥沼化、三国同盟締結、北進・南進政策をめぐっての意見対立、独ソ開戦、日米首脳会談挫折、東條英機内閣の成立、そして開戦してからはどのタイミングで戦争を止め得たのか……すべて昭和戦前・戦中期のターニングポイントであり、そのいずれも木戸幸一は天皇側近として重要な役割を担っていた。
最後の元老・西園寺の側近としてスタートし、西園寺亡き後は内大臣として首相選定の事実上最大有力者となった木戸の考え方は、近衛に非常に近く、議会主義、英米協調路線の否定という点で一致していた。陸軍の先手を打ち(近衛)、善導する(木戸)という方策は、結果として2人を陸軍の考え方に近いものとしていった。
結局のところ、近衛や木戸は独自の政治基盤を持たず、政党政治が崩壊する中で唯一国家戦略足りうるヴィジョンを持ち得た陸軍の同調者とならざるを得なかった。それは日本にとって非常に危うい選択肢しか残されていなかったということであった。それを念頭に置くと、やはり昭和恐慌という経済的危機の中での政党政治の行き詰まり感が重要なポイントであるように思う。実際には高橋財政の成功により経済は回復に向かうのだが、一般には(そして近衛や木戸にも)政党政治、英米協調主義ではもうダメだという意識を強めていったのであろう。
ところで木戸は経済官僚(農商務省から商工省)として自らのキャリアをスタートさせている。その際に欧米の産業合理化運動を9ヶ月半にわたって視察しているのだが、経済的自由主義から合理化運動(統制主義)への移行をどのように見ていたのだろうか。本書の大筋とは関係ないが気になった。
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2020/11/30木戸幸一 川田稔 ☆☆☆
太平洋戦争の傑作本 これまでの歴史書にはない明晰さ
「昭和天皇の日本国敗戦記」というほうが適切と思う
日本はなぜ日米戦争に突き進んだのか
「失敗の本質」が本書でかなりクリアーになった
これまでの歴史書を凌駕する
380116近衛「爾後国民政府を相手にせず」
400827近衛「新体制運動」 天皇に対する「幕府」との批判で頓挫
400927近衛「三国同盟締結」 米国の欧州参戦を牽制(ヒトラー)
4011 近衛「南京の汪兆銘政権を承認」重慶蒋介石との和平絶望
410413「日ソ中立条約」 米国を牽制 南方武力行使=対英開戦へ
410414「日米諒解案」 米国の対独参戦
410622独ソ開戦 バルバロッサ作戦 なぜ?→過信
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内大臣・木戸幸一を通して昭和史を考察する本書。
読み終わって改めて思ったのが、当時の日本が思い上がり、のぼせ上っていたのだという点。特に指導者層やエリート、軍部、上流階級といった上層部の思い上がりは甚だしい。
こういう時に出る、国民もという論法ではとても希釈できない体たらくである。
明治の第一世代、本当に国(藩、幕府)が滅びる事はどういう事かと肌身で感じていた世代が交代すると、ここまで視野が狭くなる(劣化する)かと忸怩たる思いを抱く。
本書の木戸幸一もその点では同罪であり、トップクラスの人物である。
勿論、終戦時の根回しなど功績に値する部分はある。それでもマッチポンプが酷すぎて、功が霞んで霞んで仕方ない。盛大なしっぺ返しを食らっているようにも見える。
例えば、反英(米)、反政党のあまり軍部に同調するのみならず、軍部を「善導」しようという思いあがった姿勢。「善導」するならば何か独自の国家戦略なり構想なりを考えていたかというと、それに関しては軍部の構想に全乗っかりというお粗末さ。
総理大臣任命の際、昭和天皇から訓示される憲法尊重、対米英協調、財界を動揺させずの3カ条の内、近衛からの要請で前2カ条を削った事を本書で初めて知ったが、本当にこの近衛一党(同じ穴の狢)は碌な事をしないとつくづく思った。
別に思想が反英米でも構わない。当時の欧米列強の植民地支配は酷いものだし、健全な感性ならそれに反感を覚えるのもある種当然の部分がある。
しかし、国家の要職にあるものの優先順位一番は、所属する国家の生き残りであろう。それが木戸をはじめとする近衛たちには欠けていると言わざるを得ない(勿論、軍部やアジア主義者などは言わずもがなであり、左翼は元々欠けている)。
言う事はいかにも立派なのだが、中身がなく、しかも粘り強く泥臭く実現しようとする姿勢もない。官僚的で貴族的な悪い部分がもろに出ている(その点、岩倉具視や三条実美はバランサーとしての役目も含めて偉大だった)。
木戸については、終戦前後の侍従長・藤田尚徳が「あまりにも人間的に弱く、君側にあって百難を排しても正しきを貫く気力に欠けた一貴族の姿がある」と述べたらしいが、近衛も含めてとても腑に落ちる見解である。
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著者川田稔氏は、昭和陸軍研究で有名な方。特に統制派に詳しく、これまでの著作は非常に参考になった。しかしながら、この木戸についてはやや不完全燃焼の感がある。これは木戸に関する資料が少ないという要因が大きいだろう。このためなのか、陸軍側資料を多用している。致し方ないとはいえ、やや残念ではある。とはいえ、内容は非常に興味深い。