評価の変わる白人至上主義
2022/02/12 18:32
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投稿者:いて座O型 - この投稿者のレビュー一覧を見る
アメリカの白人至上主義という、急速な反社会思想化のあと、近年また急速に社会に馴染む思想としての復活を遂げてきた、わかったようでわからない思想潮流が、どのような背景を持つ担い手たちによって推移してきたのかを描いた一冊。
昔は普通だった「アメリカの白人」の生活を維持したいだけで黒人差別ではないという、本人たちの意識は、いまの日本の保守層と同じ根底の理論構造で、問題の難しさを感じる。
トランプ政権誕生以降に注目を集める「白人ナショナリズム」という特殊な思想について丁寧に解説してくれる一冊です!
2021/03/04 11:47
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投稿者:ちこ - この投稿者のレビュー一覧を見る
本書は、アメリカ研究、文化政策論を専門に研究され、『アフター・アメリカ』や『アメリカン・コミュニティ』、『アメリカン・センター』、『アメリカン・デモクラシーの逆説』、『文化と外交』、『アメリカのジレンマ』、『沈まぬアメリカ』、『〈文化〉を捉え直す』などの話題作で知られる渡辺靖氏の作品です。同書は、白人至上主義と自国第一主義が結びついた「白人ナショナリズム」について書かれた興味深い内容となっています。この白人ナショナリズムとは、トランプ政権の誕生以降、注目を集めるオルトライトをはじめ、さまざまな勢力が連なる反動思想です。反共、反多文化主義、反ポリティカル・コレクトネスといった旧来の保守と共通する性格の一方、軍備拡張や対外関与、グローバル資本主義を否定します。社会の分断が深まる中、自由主義の盟主アメリカはどこへ行くのかについて考えさせてくれる一冊です!
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投稿者:なつめ - この投稿者のレビュー一覧を見る
これからのアメリカについて、いろいろな角度から分析されていて、よかったです。白人至上主義に、不安を感じました。
早めに読み切れました
2020/09/06 16:12
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投稿者:広島の中日ファン - この投稿者のレビュー一覧を見る
中公新書ですが、結構早めに読み切れました。
著者が、アメリカの白人至上主義の思想の人たちと会談した様子が書かれています。こういう考えを持つ人もいるのだなと思いました。
白人ナショナリズム
2020/07/31 23:21
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投稿者:denndennmakimaki - この投稿者のレビュー一覧を見る
全米に広がりいまだ深い根を張る白人至上主義。
人種差別の深い闇。アメリカの負った原罪。
人種差別への反動と抗議が繰り返される国。
自由で民主的で世界一、多様な国家だからこその矛盾の連鎖。
あらためて合衆国・アメリカとはなにかと問い直される。
新たなるナショナリズム
2020/05/22 10:41
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投稿者:ニッキー - この投稿者のレビュー一覧を見る
一般にナショナリズムは、一国の多数民族が発揮することが多い。しかし、アメリカは多民族国家であり、アメリカ・ナショナリズムというものは、あり得るのか。もちろん、アメリカ人は国家を軸に団結することはある。白人ナショナリズムは、ある意味でアメリカ的なものだろう。それは、アメリカ国内での人種的な分断をも象徴するものである。
批判的視点はやや弱い
2022/09/28 13:41
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投稿者:ichikawan - この投稿者のレビュー一覧を見る
近年アメリカで広がりを見せる白人ナショナリズム。主にインテリの当事者への取材やその歴史、ヨーロッパなど国際的なネットワークなどが論じられる。読むのが気が重くなるものであるがこの現実を知る必要がある。一方で、著者はむろん白人ナショナリズムにシンパシーを持っているのではないが、リベラルへの不満や猜疑はある程度共有しており、そのせいでこのテーマを論じるにあたって持つべき批判的視点がやや弱くなっているのではないかという懸念もある。被害者側の視点をもう少し積極的に取り上げないと白人ナショナリズムの暴力性の真の部分が薄められてしまうのではないだろうか。
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「彼らと同じ言い分」を、最近、日本でもほんとうに多く見聞きする。トランプ大統領の誕生とヘイト犯罪の増加の関連性は、安倍政権の存在が引き起こしている数々の事態と決して無関係とは言えない。読んでいて、そんな薄気味悪い感覚に襲われた。白人ナショナリストの「人種思考の強さ」を指摘した第4章は、人種の本質を考える上で必読!
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白人ナショナリズムが米国だけではなく、世界情勢にも大きな影響を与えることを危惧しつつ書かれた一冊。もっとも、その筆致は白人ナショナリストに対しても超越的ではなく、それゆえにかえって著者の危機感が伝わってくる。白人ナショナリズムにはダイバーシティですら否定的な言葉として受け止められていることに、衝撃を受けた。
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彼らが強まっている力学、というよりは内部からの声に真摯に向き合ったという印象で、どういう理論で彼らが発言しているのか、というのが判断抜きで語られる。
その点、とても中立的で真摯な印象をうけるし、その上での筆者の判断もそれとわかる形で明示されているので押し付けがましくなく、とても読んでいて気持ちがいい。
この本を選んだ問題意識はなぜ白人ナショナリズムの高まりがこれほどとなっているのか、だったがそれ自体の答えは明示されず、筆者も考えている、という印象。
現在進行形の問題に対してはこういう態度が実は一番紳士的で、読者にとっても、考えて今を分析するツールの一つになるのだなぁと気がついた
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渡辺靖(1967年~)氏は、上智大外国語学部卒、ハーバード大学大学院博士の、国際政治学者。慶大SFC教授。専門は現代アメリカ研究。
本書は本年5月25日に発行され、著者は本書を著した動機を、「異形のトランプ政権、そして米国の今後を理解するうえで、「白人ナショナリズム」の問題は避けて通れないと思った」と書いているのだが、まさにその出版当日に、ミネアポリス近郊で黒人のジョージ・フロイド氏が白人警察官4人に殺される事件が発生し、「Black Lives Matter」をスローガンとした人種差別に抗議する動きが、瞬く間に全米・全世界に広がった。
私はもともと、近年欧米で拡大している右傾化、自国第一主義、人種差別の流れに強い危機感を持っているのだが、こうした問題についての米国の現状を知る目的で本書を手に取り、大きく以下のような理解を得た。
◆白人ナショナリストといわれる団体・集団は、KKK、オルトライト(新極右)、ペイリオコン(「黄金の50年代」と称される第二次大戦直後の米国社会を理想とする集団)、米国自由党など多様であり、それぞれの主張・立場は必ずしも同じではない。
◆白人ナショナリストにとっては、オバマ氏が米国史上初の黒人大統領になったこと、学校や職場でアファーマティブ・アクション(積極的差別是正措置)が続いていること、南北戦争の英雄の銅像などを撤去する動きが広がっていること、女性の社会参加が進み、LGBTへの寛容度が高まっていることなどは、白人であることの否定(彼らに言わせれば、侵略・虐殺・乗っ取り)に映り、「「多様性」は白人大虐殺の隠語だ(Diversity is a Code Word for White Genocide.)」のようなスローガンが生まれる。
◆白人ナショナリストの多くは、「人種」について、現代世界において主流となっている、人種概念は「所与」ではなく「構築」されたものと考える「社会構築主義」ではなく、人種間には遺伝子によって規定され、継承される明確な差異があると考える「人種現実主義」の立場であり、人種ごとに能力や社会の作り方に違いがある以上、人種に固執することよりも、むしろ人種の違いに目をつぶることこそ「人種差別」だと考える。「反人種差別主義者は反白人の隠語だ(Anti-Racist is a Code Word for Anti-White.)」というスローガンもある。
◆1971年に作られた「ノーラン・チャート」によると、現代の政治的思想は「個人の自由」と「経済的自由」の2軸のマトリックスで捉えられる。現在の多くの民主国家の考え方は、「保守」(共和党)と「リベラル」(民主党)に区分され、「保守」は、個人の自由は軽視(キリスト教的価値観重視など)/経済的自由は重視(グローバリズム礼讃など)、「リベラル」は、個人の自由は重視(LGBT賛成など)/経済的自由は軽視(国民皆保険賛成など)である。しかし、実際には、個人の自由も経済的自由も重視する「リバタリアン」と、双方とも軽視する「権威主義」という考え方が存在し、両者は、正反対の考え方でありつつ、二大政党制は「ポリティカル・コレクトネス」(政治的タテマエ)に支配されていると考えている。白人ナショナリストは、上記マトリックスの「権威主義」に含まれる(権威主義者は、共同体主義者、ナシ��ナリスト、ポピュリストなどとも称される)。
読了してなおというか、やはりというか、この問題は難しい。
人種間における遺伝子による差異は、確かにあるのかも知れない(身体能力にはほぼ間違いなくある)。また、同質性の高い社会の方が居心地はいいのも事実かも知れない。しかし、現実の世界には、人種に限らず、民族、宗教、ジェンダー等に差異のある人びとが暮らしているのだ。とすれば、差異のある集団が共存する道を探る以外に方法はない。トライバリズム(人種・民族・宗教・ジェンダーなどの差異に沿って、各自が自分の属する集団に閉じこもること)を能動的に打破していく以外、未来を拓くことはできないのだ。
BLMの運動が世界に広がる今こそ、読んでおきたい一冊と思う。
(2020年7月了)
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自由主義の盟主である合衆国が反動思想に揺れている。トランプ政権支持の有無に関らず、白人至上主義と自国第一主義が結び付いた “白人ナショナリズム”の現地からの報告書。▷米国の白人ナショナリズムの起源は、先住民(インディアン)の制圧の理論(先住民は生物学的かつ文化的に白人より下等である故、自分たちの支配下に入ることが幸福であるという優越主義的発想)にあり、今日も消えていない。▷「私は人種差別主義者ではない。白人として、ごく当たり前の権利を主張しているだけです」(元kkk幹部)▷社会の分断が顕著に・・・。
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また渡辺靖氏の現代アメリカ研究に耽溺した。
最後のコロナ影響への言及まで、止まることを知らないアメリカの変化と懸念が、白人ナショナリズムを通じて明確に浮かび上げていく。
そして日本への眼差しも忘れない視点が素晴らしいです、毎回。
自分達がこれまでグローバリズムの恩恵を受けてきた事とこれからのナショナリズム勃興への危惧を感じ、その前提でどのように行動すべきか問われていると自覚した。
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BLMが正義であり、KKKに代表される白人至上主義が悪である、という単純な理解がまかり通る日本において本書が刊行される意義は大きい。読後に、白人ナショナリストたちが理想とする「単一民族」日本の実態とは?白人から見れば同系民族である朝鮮人を差別するのはなぜなのか?移民が確実に増加していく将来のあり方は?、と自問することになる。
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20200725ー0801 題名の『白人ナショナリズム』とは、白人至上主義と自国第一主義が結びついた反動思想だと言う。著者はトランプ政権下での草の根のリアルな動向を伝えている。コロナ禍に世界中が見舞われているなか、アメリカではBLM運動が炎上している