小学校 英語の効果 それほどでも
2024/02/05 22:09
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投稿者:清高 - この投稿者のレビュー一覧を見る
1.内容
本レビュー執筆当時である2024年において、「外国語活動」(筆者がすべてを調べたわけではないが、本書で「英語」が取り上げられているので、以下も外国語=英語として論じる)が小学3、4年生の必修になり、「外国語」が小学5、6年生の必修になった。しかし、それ以前の、平成20年、21年改訂の学習指導要領で小学5、6年の必修だった「外国語活動」の効果も明らかではないうえに、、本書刊行当時の2020年においては、予算や教員の負担を看過できない。本書では、小学校段階における外国語学習の歴史(「外国語活動」等を導入することの賛否も含め)をまずは振り返り、実際に効果があったのか、また、小学校英語導入における負担面をも検討する。
2.評価
(1)本書においては、現在の「外国語」が採用されるまでの歴史が概観できるのがよかった。小学校段階の「外国語活動」は、外国語を身に着けるのではなく、国際理解等が主眼であることを知らなかった。
(2)次に、可能な限り「外国語活動」の効果に迫ったり、日本において外国語が必要かどうかの検討がなされており、なるほどと思わされる出来であった。「外国語活動」の経験の効果は微弱であり、英語使用は右肩上がりで増えるわけではない(第8章)ということは、本書を読まないと考えないだろう。以上の通りであるから5点。
3.本書においては、まず「はじめに」と「おわりに」を読んで著者の見解をざっと掴み、第2(アラビア数字に直した)部から読み始めた方が、退屈しなくていいと思う。
『小学校英語のジレンマ』
2020/04/17 21:10
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投稿者:百書繚乱 - この投稿者のレビュー一覧を見る
2020年度から教科化された小学校英語の問題を“ジレンマ”ととらえ
その複雑さをタテ=歴史的、ヨコ=社会的な制約条件から読み解き
いくつかの現実的な方向性を見出す画期的な新書
日本の小学校英語を考えるうえで絶対に区別しなければならない3つのポイントは
・小学校英語は第二言語学習の話であり、母語習得と混同してはならないこと
・非英語圏環境での英語学習を、周囲に英語があふれている社会での英語学習と混同してはならないこと
・「臨界期仮説」は、小学校英語の議論と基本的に無関係であること
(日常語ではない専門用語としての)「エビデンス」により小学校英語の効果・有効性を検討した結果
・小学校英語を経験すればするほど英語力や情意面が発達するという傾向は見出せない
・英語力、英語学習への肯定的態度に微弱ながら有意な効果が見られるが、コストに対しては有効性があるとは言えない
・少なくとも、二〇〇〇年代に行われていた小学校英語一般には概して有効性が認められない
そして、今後とりうる選択肢として著者が提示するのは
1.英語専門の専科教員が教える
2.学級担任が教える
3.必修をやめる
4.全廃する
《その中でも筆者が特に推したいのは、案○と案○である。》
小学校英語を論じるなら読んでおくべき一冊
問題点が多すぎる
2024/01/04 10:01
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投稿者:ふみちゃん - この投稿者のレビュー一覧を見る
「学習開始時期より、学習の質・量の方が重要」「学級担任の負担増」「年少から始めれば身につく」「異文化・グローバル社会に役立つ」「少なくとも、2000年代に行われていた小学校英語一般には概して有効性が認められない」、次々に飛び出す問題点、問題山積みでのスタート、安倍総理主導のものにはそういったものが多すぎる
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これはジレンマか?もう、ほとんど、問題だらけのなか、鶴の一声で決まったようなものではないのか?まずは早期の英語教育が英語力向上につながるかどうかが疑わしい。もちろん、良き指導者が時間をかけて取り組めば効果は望めるのだろう。しかし、英語教育の基本も知らない、下手をすると「英語なんて大の苦手でした」というような小学校教員が初学者に英語を指導する可能性もある。楽しくできるわけがない。と思う。英語専科の教員をかなりの数、採用するそうだ。それは文科省もがんばったのだろう。しかし、全小学校に1人とはとても言えない。研修にしても、たとえば専門家が全国から代表を集めて研修し、その代表が各都道府県で研修し、それを持ち帰って各学校で研修し、と言ったような、孫とかひ孫とかいうような教員たちが子どもたちを指導する。はあ、とため息が出る。学校の取り組み方、担任の取り組み方次第でずいぶんと受けられる英語教育に隔たりがある。それを是正するために教科化する。それはわかる。しかし、システムが変わっても実際に指導する人間が変わっていなければ何も変わらない。きっと。本書ではあまり言及されていないが、中1になる段階で、子どもたちの英語力には大きな差があるのは事実だ。それまでの取り組みの違いだろう。(これが、小学校高学年の担任の差が大きな原因であるならば大いに問題である。もっとも、それは他の教科についても言えることではあるが。)しかし、この差が、1,2年の中学英語の学習のもとで縮まっていくのか。最初に苦手意識がついてしまって、余計に差が広がることもあるだろう。我が家の子ども2人はともにこのケースだと思う。一方で、どうも語学には向き不向きがあるような気がしてならない。最初後れを取っていても、すぐに追いつく子もいる。いくら時間をかけても、身につかない、覚えられない生徒もいる。他教科も同じだろうが、特に英語(語学全般?)はそういう気がする。そして、道徳科についても、似たような問題があると思う。私は専科にすべきだと思うが、反対の専門家が多そうだ。担任の仕事って、とにかく大変なんだからなあ。せめて、担任手当でもつければいいのに。お金は出さないが口は出す。最悪だ。
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小学校英語教科化の歴史的経緯が、かなり詳しく記述されており、なるほど、と思うこと多数。今後の展望も説得力あり。
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英語が2020年度をもって小学校5年生から正式な教科として始まるに際して、そのまさに当事者の小学5年生が家族にいるものとして、その英語教育がどのような考え方を背景にデザインされてきたものなのか、その内容を確認することができた。
英語が要るのか要らないのか、ただちにその深いところには立ち入らず、評価の妥当性をどこに求めるべきかという論旨になっている。まあ、これはこれでいいだろう。
ただ、当事者として気になるのは、英語教育の質である。小学校教員にはもともと英語教育の資格がなく、現場は右往左往の混乱にあるようである。これで授業が成り立つのかという「?」は至極自然な感覚ではないだろうか。
入門レベルの英語を技術的に教えることぐらいならば、親の自分にでもできる。将来へと繋がる外国語教育の戦略がまるで見えない。
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小学校英語について最もよくまとまった本である。また共分散構造分析のモデルも使っていた。
研究の基礎文献になりうる本である。
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小学校英語の問題点を丹念に調査した好著だ.結論めいた件がp204にある.「小学校英語は熟議なしで拙速に決定されたものであり、そもそも劇的な効果は望めない.また、グローバル化に対応するために小学校から英語を導入すべしという根拠も不明である.」お金がないからか担任の先生が英語を教えることになり、先生の負担も増大している.第二次安倍内閣で、官邸主導の進め方が目立つとの指摘もあるが、例によって議事録がない事例が多いようだ.誰がどのような形で決めたのか、反論はあったのか、ものごとの進め方が稚拙だと感じた.
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英語教育はどこに向かっているんだろう。と疑問を持って読んだ。
早期英語教育を公教育に盛り込んだところですぐに子どもが英語ペラペラになるわけではない。実生活と結びついているわけではないから。
教員の負担も増えるし研修する時間もお金もない。
だから著者は専科教員が担当するか、全廃かの案が良いとしていた。
担任て本当に忙しいし、だったら専科に教えてもらって空き時間にしたいという人が多い。だが専科は専門性はある程度あるものの、500人弱の児童を顔も名前も覚えて週1-2コマという短時間で理解しきれないまま苦しい思いをしていることもある。
個人的には教員の負担と教育効果を考えると専科制に賛成だが、それが正解とは思っていない。担任によってクラスの雰囲気や文化は十人十色で、全く違うものだから、単発ではいった教員がすべてをコントロールするというのは至難の業だということを感じている。
しかし一方で専科を経験したから強く思うこと。どんな教科でも目の前の子どもがどうなってほしいか常にありたい姿を描き、それを子どもと共に作り上げていくことが子どもたちの成長に大切だということだ。
専科制でも担任がやるのでも、ぷいっとせずに英語に歩みよってほしいと思う。
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グローバル化は呪文
全ての日本人に必要なものではない
グローバルビジネス、国際交渉の前線に立つ人の英語力向上させる施策が一番コスパがよい。例・企業内教育、職業訓練
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非常にわかりやすく、客観的な分析。歴史的経緯の中で、小学校英語がどのように位置づけられてきたか、そして、肝心の課題とは何か、早期英語教育の効果は何か、が整理できた。早くに英語を学習することに、個人単位では意味がないと改めて認識。