一種のスパイもの
2023/08/02 15:11
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投稿者:Koukun - この投稿者のレビュー一覧を見る
戦国時代のスパイものというと、すぐに黒尽くめの忍者の活躍を思い浮かべるが、本書の大藤一族の得意とする「入込」は敵中枢部を操る非常に高度な「芸」である。陰湿で爽快感がないためテレビドラマなどにはなりにくいが、実際には遥かに効果的で多用されたのではないか。作者の筆は、この大藤一族の活躍を実にいきいきと描き出している。軍神と言われる上杉謙信の話も面白かった。戦は非常に巧かったのだろうが、目指すものが室町旧政体の再構築ではうまくゆくはずがない。
裏から北条氏を支えた一族の年代記
2020/05/17 00:30
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投稿者:とりこま - この投稿者のレビュー一覧を見る
北条氏のもとで敵地に潜入し、攻略の足がかり作りを担った大藤一族を主人公にした作品。
著者は北条氏を始め、関東の戦国を多数取り上げているが、短編で大藤氏の年代記を綴っていくスタイルが独特で伊東氏らしい。
城を攻略していくのに、力でなく相手の心、性格を捉えていく入込という技を駆使していく様が良い。
追いかけたい北条氏
2021/02/14 19:56
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投稿者:たっきい - この投稿者のレビュー一覧を見る
紙の本だったら気付くのですが、電子書籍で購入したため、購入してから連作短編集であることが発覚!この辺りは電子書籍ならではですねぇ^_^;さて内容は。五代にわたる北条氏に仕え、間者として働いた大藤氏一族の物語。敵の大将に取り入り、言葉巧みに操って北条氏を勝ちに導く手腕はお見事!戦国ものは大好きでありながら、今まで北条ものは読んだことがなく、大河ドラマでもとりあげられたこともないのではと思いますので、ほとんど知らず新鮮でした。北条氏の話、追いかけたいと思いました。
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投稿者:イシカミハサミ - この投稿者のレビュー一覧を見る
「城をひとつ、お取りすればよろしいか」
出だしのわくわくが強すぎて読後感はちょっと尻すぼみ。
伊東さんの本は大鳥圭介を題材にした本以来の2冊目だけれど、
あちらは終始大鳥さんの幕府嫌いが文に出てきて辟易した。
こちらは章ごとの出来事が基本ワンパターンで、
どちらの作品も1冊の作品としての構成でもうちょっと工夫の仕方ありそうな、とはおもうけれど、
やっぱり着眼点は面白いし、
繰り返しではあるけれど調略の流れも鮮やかで面白い。
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投稿者:earosmith - この投稿者のレビュー一覧を見る
入込という言葉を初めて聞きましたが、人の心理を読み、巧みに操る様がスリリングで面白かったです。最後も意外な終わり方ですが、すっきりしていました。
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所謂「北条五代」(早雲・氏綱・氏康・氏政・氏直)の中、二代目の氏綱の頃から、豊臣秀吉との戦いに敗れる五代目の氏直の時代までを背景に6つの挿話で構成されている物語である。
6つの挿話を通読すると、北条家が勢威を拡大し、関東の覇者となり、そして滅ぼされてしまうまでの経過が視えるのだが、本作はそういう経過を少し変わった視点で描いている。代々の北条家に仕え続けて独特な活動を展開していたという大藤家の人達を主要視点人物に据えて各挿話が綴られているのだ。
最初の挿話の冒頭は「城をひとつ、お取りすればよろしいか」という台詞で始まる。この『城をひとつ』が最初の挿話の題名であり、同時に本作全般の題名ともなっている。
この「城をひとつ、お取りすればよろしいか」という台詞を口にする男、大藤信基(だいとう のぶもと)が挿話の主人公で、やや先走ればその息子達、孫、曾孫が各挿話の主人公となって行くのだ。
紀州の根来から北条氏綱を訪ねて現れた大藤信基は北条早雲と交流が在り、北条早雲に仕えると約束していたが、身辺整理に手間を要していた間に北条早雲が逝去してしまったので、後継者である北条氏綱を訪ねて仕官を願い出ているということだった。その仕官を願い出る場面の描写が物語の冒頭で、「城をひとつ、お取りすればよろしいか」という台詞が出て来る。
“城”というのは、軍勢が拠る場所で、諸勢力が争う場合の拠点となる場所であり、時代が下ると一帯を差配する領主の権威の象徴となって行く場所である。その“城”を「取る」というのは、正しく「言うは易く、行うは難し」というものである。戦国時代には方々に“城”と呼ばれるモノは夥しい数が在った。戦いの焦点となった“城”も多い訳だが、「お取りすればよろしいか」と簡単に陣営が切り替わった例が多々在るのでもない。
この「城をひとつ、お取りすればよろしいか」という台詞を口にした大藤信基という男…何をどうしようというのか?
この「何をどうしようと?」が最初の挿話の顛末であり、以降は大藤信基の一族が北条家の下で展開する「独自の戦い」の有様が綴られる挿話が折り重なっている。
“戦国時代”というモノの中には、勇壮な合戦譚も多々在る訳だが、そればかりでもない色々な要素が在る訳だ。本作はそういう方面に光を当てるような物語である。
何れにしても、本作は夢中になってしまうものが在る。「城をひとつ、お取りすればよろしいか」と言い出して、何がどうなるのか?是非、本作で!!
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少し前に読んだ同じ時代の、同じ人物を取り巻く話を別の角度からアプローチした物語だ。
フィクションではあるが別の作者が書いた作品を読むと、面白さの深みが増す感じだ。
この様な読み方も良いと思った。
歴史物をいくつか読んでいくと人間物語であり、伝えられている程に単純な話では無いと思ってくる。
面白い。
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小説としても、歴史ものとしても陰に生きる一族の歴史や城をめぐる戦国武将の思惑を見事に描いていると思う
作者が城に精通していることがよくわかる記載はさすがに読みごたえがあるし、短編集でありながら、全体で後北条氏の盛衰が見事に描かれる
一方で戦国時代とはいえ、「入込」といういわば謀略ともいえる技で欺いて城をとるのは、いくら民の安寧のためといわれても読んでいて微妙な気分になる
実際この技術が生まれた国は、さらに手の込んだ方法で日本をはじめ色々な国に入込をしていると思うとちょっと複雑
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後北条氏五代に仕え、‘入込’の調略を担った大藤氏一族を扱った小説。信基から曾孫の直信まで、連綿と続く陰の仕事人にスポットを当てており大変渋い。
難事難局に駆り出されては鮮やかな手際で事に当たる。まさに名人芸!
やはり当代無双・足利義明との駆け引きに手に汗握る。また、秀信と越後の龍・上杉輝虎の応酬では軍神を完璧に手玉に取る模様に心躍る。…というよりも思った以上に「上杉謙信」について私自身が無知であったことに気付かされた。
次は謙信を扱ったものを読んでみたい。
これは伊東潤氏の作風なのか、この『城をひとつ』の特徴なのか残念ながら語れないのだが、人物の人間味というか呼吸・溜息まで伝わってくるような文章であると感じました。
短編ながら土方雄久の苦労振りや足利晴氏のどうしようも無さが、まるで知り合いの話のようによく伝わります。
個人的に弓を得意とする人が好きなので横井神助が妙に印象に残りました。
1刷
2021.2.2
2021.2.3 追記
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講談社決戦シリーズで伊東先生を知り、いろいろ読み始めました。「城をひとつ」もそのひとつ。
後北条氏については知らない事が多いので、その動向や、主人公である大藤一族の活躍を新鮮に楽しめました。
特に、関東公方や里見氏や上杉氏の動向などをメインに描かれた小説は、少ないのではないかと。
どの攻城戦も同じような展開がなく、楽しめました。
伊東先生の作品、いろいろ読んでみます。
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後北条氏や関東公方が描かれた東国の話は初めてで、興味深く読んだ。東国の城がたくさん出てきたが、いつか訪ねてみたい。
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簡単に説明すると歴史小説×スパイ小説。
まず書き出しの「城をひとつ、お取りすればよろしいか」の言葉だけで、カッコいいたらありゃしない!
城攻めというのは本来落とされないように厳重に作られ、敵の装備や食料などの準備も万端なところを攻めるわけなので、長期戦になりがち。
そのため攻め手にとってもかなりリスクの伴う戦いなのだけど、それをこともなげにこう言い切ってしまう。それだけで先のしびれるものがあるし、先の展開にワクワクしてしまいました。
関東を治めた北条五代。彼らに陰から使えた大藤一族を描く連作短編。時の武将たちの欲や心理のスキを突いた鮮やかな手法と展開の数々! いかに敵を惑わし分断するか、心理戦や頭脳戦に引き込まれます。
それでいて伊東潤さんらしい歴史小説ならではの悲哀も、作品に深みを与えます。どれだけカリスマ性があっても、立派な理念があっても、それが時代の趨勢と合わなければ消えゆくしかない厳しい戦国の時代。
そうした悲哀を描きつつも、一方でその先に広がる新たな人生の広がりも鮮やかに力強く描かれていて、今まで読んできた戦国時代を舞台にした伊東潤さんの作品の中でも少し違った感慨が残る、爽やかな作品でした。
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北条五代を陰から支えた一族の活躍が描かれているが、なんで先まで見通していて、また、どれだけ手札を用意しているのだと感じさせられた。また、常にうまくいくのではなく、壁にぶつかりつつも、当意即妙な対応をとっており、より痛快に感じた。
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北条家に仕えた謎多き軍師大藤家をベースに関東一円を統べた北条家の栄枯盛衰を連作短編の流れで描く作品。大藤家は「入込」と呼ばれる術(敵の内部に侵入しやり込め内部から瓦解させる手法)を武器に城をとっていく。その様はいわゆるスパイものの読み口でく読みやすい。この手のストーリーにありがちな誰が化けているか分からない、ということは無いがどのようにして大将を取り込んでいくかで読ませるので面白い。気になった所として相手方がコロッと騙されすぎでは?と感じる場面も。北条家の物語は詳しく知らなかったので中々に楽しかった。