電子書籍
戦後の現実
2022/08/26 10:29
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投稿者:ざらめ - この投稿者のレビュー一覧を見る
戦争を知らない世代にとってはとても衝撃的な描写が多いが、知ることは大切なことだと思う。ここに書かれていることは一部であり実際にはもっと残酷で悲惨な現実があったと思う。「流れる星は生きている」も衝撃的だったが、この本もずっとこの先も心に残る内容の本の一冊。
子供のころ戦争のことを祖父母に尋ねたが、言葉を濁して話していた意味が少しだけ分かった気がする。
紙の本
アカシアに込められた過去
2021/02/28 13:26
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投稿者:GORI - この投稿者のレビュー一覧を見る
満州で孤児として生き残った益江と佳代。
二人は生き残り日本に帰って来られた。
70年後益江は認知症になり、彼女の過去が自分を苦しめる。ご主人は二人の友人に益江の過去に折り合いをつける旅をお願いする。
三人は大津、松山、長崎県國先島を旅しながら、さらにアカシアの句に歌われた満州の出来事も明らかにされ、二人の過去が徐々に明らかにされる。
俳句と旅による謎解きは、読者を戦後の満州の街中、大陸の線路を歩く二人の側、引き揚げ船の中へ放り込む。
逃げろ!と叫んだり、食べ物を分け与えたり、なんとか二人の力になりたいと思わされる。
生きるために必要だと選んで生き続けてきた二人。
そんな二人の未来は決して平安な人生ではなかったが、そんな危機から二人を守るために友人達が活躍する。
圀先島の教会で歌われる讃美歌に包まれ、益江と佳代が見つめ合って笑い合う姿がいつまでも心に残される。
電子書籍
フィクションだが
2021/10/10 07:03
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投稿者:エムチャン - この投稿者のレビュー一覧を見る
あの頃の満州引き揚げの苦しさを……まるで、ノンフィクションのような前半の展開は、読んでいて苦しいものでした。後半が、それに比べると、いまいち、でしたけれど、あの時代を生きた人が、あとは死ぬだけと言うには……悲しすぎ……
紙の本
残された時間を生き抜く
2021/02/24 07:41
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投稿者:nekodanshaku - この投稿者のレビュー一覧を見る
認知症となり、記憶がとぎれとぎれとなり、さらに過去の想いを窺わさせる言葉を発すようになった老女と、その親しい友人たちが、思い出が隠されているかもしれない土地を訪ね歩く。終戦後の満州からの引き上げ時の酷い記憶から、戦後の間もない時期の、戦争の後遺症のような影を人々に投げかけていた時期の、エピソードが、結末へと続いていく。自分が生きのびること、大事な者を生かすこと、それをしっかりと心に刻んで生き抜いてきた老女たちに、「後は死ぬだけ」と言い放つ、凛とした姿に、感動する。
紙の本
思わぬ展開
2024/02/02 16:51
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投稿者:302 - この投稿者のレビュー一覧を見る
戦争の凄絶な話が読んでいても辛く苦しかったが、現代の話は夫や友人の心の広さ、豊かさを感じられて何とか読み進められた。
後半の展開には驚いた!そんな計画、実際やらないでしょうと最後まで疑っていた。
紙の本
五分五分
2021/05/26 19:53
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投稿者:漂白 - この投稿者のレビュー一覧を見る
戦争の悲惨な体験を描き出す表現方法は宇佐美まことならもってこいなんだけど、後半の安っぽさにより残念ながら台無し。前半は読むのが辛く、それでも希望を求めて読み続けられた。後半で著者がかわったのかというぐらいサッパリしていて中途半端だった。考えてみれば、著者らしいというか最後の甘さがいかにも。装丁が素晴らしいだけに余計残念。
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過去の断片が、まあさんを苦しめている。それまで理性で抑えつけていたものが溢れ出してきているのだ。彼女の心のつかえを取り除いてあげたい――
アイと富士子は、二十年来の友人・益恵を “最後の旅" に連れ出すことにした。それは、益恵がかつて暮らした土地を巡る旅。大津、松山、五島列島……満州からの引揚者だった益恵は、いかにして敗戦の苛酷を生き延び、今日の平穏を得たのか。彼女が隠しつづけてきた秘密とは? 旅の果て、益恵がこれまで見せたことのない感情を露わにした時、老女たちの運命は急転する――。
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認知症の老婆の話だと思って読んだけれど、その女性が生きた人生を辿る物語になっていて面白かった。戦争の悲痛さが胸にぐさぐさと刺さる。目を背けたくなって何度も本を閉じるほどだった。
過酷だが強く優しく生きてきた人生には、周りの人のよさが、人望がついてくるのだと思った。
人生の最期を迎える時に、周りの人に愛され想われる人というのは、そのような生き方をしてきたことを物語っているのだ。
物語の最後は、え?そう来るの?という展開で、このエピソードはなくても面白かったんじゃないかな…と個人的には思った。
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認知症を患い、86歳になるまあさんには、誰にも話していないことがあった。
それが彼女を苦しめ、完全に認知症の世界に入っていけない足枷になっている。
最初の方は、よくありそうな、年配女性の趣味の集いからの友人関係を描かれていて、なにが始まるのか予想つかなかった。
認知症に踏み込み始めた妻を苦しめている何かを解消とまでは行かなくても、受け入れることが出来るレベルにして穏やかな老後を送らせたいと願う、優しいご主人。
そのバックグラウンドには、壮絶との一言では言い表せない過去があった。敗戦後の満州のこと、こんな経験をしている人が、まだ生きているはず。
そしてかよちゃんは誰なのか。
かよちゃんとまあちゃんは、満州でどんな生活を送っていたのか。
それなのにどうして、あえて連絡を取らなかったのか。
読み進めていくうち、驚くことばかりで、それでもまあちゃんにはこのようないい友に恵まれたから、このような人生を歩んでこれたのか、とも思う。
この俳句仲間であるアイ、富士子、益恵のこの先が穏やかで幸せであるよう、そうなってほしいと強く願わずにはいられない。
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アラエイティ(こんな言葉あるんでしょうか?)の仲良し三人旅。
痴呆症が始まった益恵の過去をたどる人生仕舞の旅がこんなにも深い物語を秘めていたなんて。
70年以上前、満州での敗戦からの生還が家族を亡くした11歳の少女にとってどれほど過酷であったか。
よくぞ、よくぞ生きて帰ってきてくれた、と物語の向こうに思わず手を合わせてしまうほど。
そこから始まる益恵の物語。痴呆が進むにつれてにじむように出てくる過去の話。口をついて出てくる名前。
今を共に生きる夫や友人たちには見えない、知らない何かがそこに引っかかっているはず。それをほどく、旅。
過去を過去としてきちんと心にしまうこと。それがちゃんと生きて死ぬことの第一歩なのだろう。
満州での話、壮絶すぎて震えが止まらない。ヒトがヒトで無くなるもの、それが戦争。
醜く浅ましく愚かな狂気に染まっていくなかで、出会う心優しき人々。その優しさに涙が止まらない。
そして、たどり着いた益恵の「始まりの島」。ここからの展開にページをめくる手が止まらない。
二つの美しい友情の物語に、こんな、こんな、こんな秘密と結末が隠されていたなんて!
いやいやいやいや、これはすごい。アラエイティ、おそれいった!!
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壮絶で壮大な人間ドラマだった。
真実が明らかになるに連れて、
ページをめくる手が止まらず、
朝になるまで一気に読んでしまった。
益恵の満州での過酷な引き揚げまでの道のりに、心が震える。ただただ震える。
***ここからネタバレ***
凄絶な満州での行程を共に生き延び、
日本に帰ってきた益恵とかよちゃん。
これからは穏やかな人生を歩むべき二人が、
抱えることになった真実。
その真実が明らかになったとき、
すべてが一本の線で繋がりました。
そしてさらにそこから圧倒された。
真実を知ったアイと富士子が、
大事な友人である益恵と、
覚悟を決めてすべてを話してくれたかよちゃん
のために、なんと、
殺人を犯す計画を高揚しながら立てる!
これが人生の最後といわんばかりに。
旅の最後にこんなことが待ってるなんて、
アイと富士子も思わなかっただろう。
長い人生を生きてきた老女たちの覚悟に
想いを馳せました。
結局その殺人計画は、ひっそりと未遂に終わり、
最後はほっとしました。
長い間、同じ心のつかえを抱きながら
生きてきた益恵とかよちゃん、
そしてそんな益恵に寄り添い、
最後の旅に出たアイと富士子が、
残り少ないであろう余生を、
穏やかに微笑みながら過ごしてほしいなと
願わずにはいられない一冊でした。
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認知症になった老婆の過去が少しずつ明らかになっていく旅。壮絶な戦争体験の描写には思わず固唾を呑みます。満州を生き抜いた友との秘密の絆は、真実の愛の形でした。オススメ★4つ。
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丁寧に種を蒔き 丁寧に育て花を咲かせ実らせしっかり刈り取る作者の力に感嘆しました
今回は戦争という事実を克明に 俳句という創作を豊かに巧みに使ったところも秀逸でした
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本のタイトル・装丁に惹かれて、あらすじを知らないまま読み始める。
傑作だった。一度は読むべき作品と思う。最後まで読んで、表紙の意味も分かる。
認知症になる前は俳句を楽しみ、17文字の世界に自らの想いをのせていた”まあさん”。
物語は、まあさんが詠んだ句の背景となる過去の壮絶な体験と、親友・アイと富士子とめぐる人生をさかのぼる旅の両面から、真実に近づいていく。
満州からの引揚者だったまあさんの、壮絶という言葉では表せられないほどの身も心もえぐられるような体験。
途中で読むのをやめたくなるくらい、恐ろしかった。たった75年前の出来事。
でも今に生きる日本人として、目をそらすべきではない真実。
作者の描く、人間が人間でなくなっていく様子は本当に恐ろしい。
戦争は人が人であることを奪うものだ。
幼い益恵の「これはいったい誰のせいなのだろう」という言葉が胸に迫る。
一方、現在もそれぞれがそれぞれの人生でさまざまな問題と直面している。
それでも。
「これまで生きてきた重さを背負い、堂々としていて何が悪いのだ」
前を向いた老女はかっこよかった。
真実に近づく後半は、一気に読み終えた。
急展開で予想外な結末だったけど、まあさんのように人生の最後まで、手を携えていける友がいることは本当に大切なことだと思う。
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装丁含め完璧な小説で、宇佐美氏の代表作のひとつになると思う作品。満州からの引き上げと現在とを詠まれた俳句を通して行きつ戻りつしながら、益恵の人生をその親友たちが遡りながら自分の人生の意義や終着点を見出していく。悲惨な内容が多いにも関わらず、軽快で柔らかな雰囲気をまとっていて、より力強い生命力が浮き彫りになる文章力は流石。