紙の本
戦争は人の心を壊す
2023/02/23 10:09
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投稿者:トマト - この投稿者のレビュー一覧を見る
戦場で起きた事件の真相を求め探偵小説家(従軍ペン部隊)が、いかにこの戦争の理不尽さ、人を狂わすのかを目の当たりにする。
戦争がいけない事であることは分かっているが、その戦争を起こすのは人間です。自分たちが起こして大義なき戦争の中で弱い者が犠牲になっていく。悲劇に次ぐ悲劇。常識人や優しい人が苦しみ・排除されていく。陸軍内部の腐乱した仕組みがドンドン読み解けていくにつけ、恐ろしさと共に「なぜ?」という疑問が湧いてきました。
世の中は、今も理不尽な戦争のために悲劇が繰り広げられている。一刻も早く、このようなことを止めなくては。
時代は変わっても、この理不尽さは変わっていない事実に愕然とします。
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戦争とは・・・に迫るミステリー
2021/11/01 18:05
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投稿者:BB - この投稿者のレビュー一覧を見る
浅田次郎さんが戦争を題材にした作品はほかにも読んだことがあったが、本作は戦地を舞台にした本格ミステリー。
日中戦争の最中、従軍作家として北京にいた探偵小説家が、突然前線への出張を命じられ、分隊全員が死亡した事件の謎を解く・・・という話。
ミステリー要素に歴史的事実を織り交ぜ、戦争とは、人間とは、を浮かび上がらせていく。硬派だがユーモアもある歴史エンタメだ。
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訳の分からない戦争でのミステリー
2021/06/19 18:33
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投稿者:nekodanshaku - この投稿者のレビュー一覧を見る
とても深みのある戦場ミステリー小説である。1938年11月の中国大陸を舞台に、わけのわからない戦争である日中戦争の最中に起きた大量日本兵死亡事件の謎が解き明かされる。戦争の記憶を失った現代日本社会は、戦争の痛みと平和のありがたみを忘れてしまうのかもしれない。トリックの謎を解き、犯人を突き止め、動悸が明らかになると、そこにはたたく理由が見いだせない、分けのわからない戦争に駆り出された人々の、時代の論理を押し付けられた人生が炙り出される。
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長く高い壁
2021/08/23 10:25
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投稿者:kotep - この投稿者のレビュー一覧を見る
従軍作家として北京にいた流行探偵作家の小柳逸馬は軍の要請で万里の張飛嶺へ
向かう。彼が向かった先では10人小隊が死亡していた。彼の任務は10名の死亡の原因を見つけることであった。彼らは何故死ななければならなかったか、またどのようにして殺害されたのか?小柳は原因を探るべく関係者に聞き取りを始めるが・・・。
赤紙一枚で招集される兵士の悲哀を描き謎解き要素もあり、読み応えがありました。
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事実と真実
2021/08/26 16:46
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投稿者:とめ - この投稿者のレビュー一覧を見る
日本軍は皇軍でありこの戦争は聖戦であると軍人勅諭の体現者である軍人らも実は地方人と変わらぬ人間味を持っているがために起きた事件。人間の虚栄心のせいで小説が売れるとはよく言ったものだ。
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中国を舞台にした「戦場ミステリー」。
浅田センセは、軍隊・自衛隊の現場の空気を描かせたら秀逸だなぁ。
最終的にどこに落ち着くのかと思ったら、ラストはなんだか救われた気がする。
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昭和13年暮、中国張飛嶺を舞台にした戦争小説
2018年2月28日 KADOKAWA 単行本 で読んだ
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日本の軍人の致命的な性格を評した一節。規模の大小にかかわらず理想の戦果を特定しそれに向かって作戦を立案する癖。負の要素を想定せず希望的観測よってのみ戦争を遂行する。
これは日本人全てに言える事だ。コロナ対策に於いても、いつか収束する、という楽観が何処かに潜み対応が中途半端且つ後手になる。経済活動も然り。いずれかつての高度成長が戻るという根拠のない希望的観測により20年もの歳月が空虚に費やされた。
我が身にも常に肝に銘じておきたい一節なり。
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満州時代の万里の長城を舞台に起きた殺人事件のお話。
軍人と従軍作家の立場から、必ずしも本音が言えないという時代背景と、真実を解き明かさなければいけない正義感の狭間にいる主人公達。
浅田先生の小説は非常に面白いのですが、設定の深いところをもっと知りたくなってしまう。
蒼穹の昴や中原の虹あたりの話も見え隠れして、繋がりがあるのが面白い。
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日中戦争は、「なんのために始まり、なぜ終わらないのか」が分からぬ、不可解な戦争だったと言われているそうです。
大義のない戦争で、色々な境遇の兵士が集まった時、何を正義とし、何を悪とするのか。軍隊という組織の中では、何をよしとするのか。
私は今まで、大戦中の兵士というのは、「お国のため」という大義名分のもと、一丸となって戦っていた、悲しいくらい真面目な人の集まりだと思っていました。THEサムライというような…。
でもそれは綺麗事。生活やお金のために仕方なく戦地に赴くことが普通。そこで真剣に取り組むか、適当に取り組むか、やりたい放題に堕落するか、それは各々の人間性に依っていたようです。それは、現代と何も変わらないし、人間というのは普遍的なものなのだと実感しました。
読み終えた時、これが最善だったと思いました。それなのにどこか心が重くなる、とても考えさせられる話でした。
浅田次郎の現地取材と資料調査により、今まで私が考えていた戦争と、実際の戦争の違いがたくさん知れて、とても勉強になりました。
ハッと、心に残った言葉(ネタバレになります)
「海野さんが悪いのではなく、海野さん以外の人がみな悪い。悪人から見れば、善人が悪人。だとすると、海野さんを悪人だと思っているみなさんこそが、実は悪人ということになりますがね。」
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実力・実績の著者ならではの、情景描写のクオリティだが、結城昌治の戦争小説の名作「軍旗はためく下に」の劣化版コピー作品と評価されてもしょうがない作品。少し残念であった。
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日中戦争を舞台としたミステリー。従軍作家として北京に滞在していた売れっ子推理作家に下されたのは万里の長城で起きた事件の調査。
関係者への聞き込みを進める際に、それぞれの軍関係者の一人称視点で語られる。事件の解き明かし自体は大したことはなく、事件の真相も安直すぎる。
ただし、大正の軍縮時代と昭和初期に入ってからの大陸での戦争遂行状態で兵役というものが全く異なっていたこと、それに伴って世代によって兵隊の資質が異なっていたことを知れたのは収穫。
また、士官学校出身の将校と、兵卒からのたたき上げの下士官の関係性を描いた作品は数あれど、最初の兵役満了後に一般社会人として生活をしたあと、予備役招集で再び大陸に送られた当時の日本人男性たちの姿の描写はリアルだった。このまま坂を転がり落ちるように太平洋戦争が始まり何百万人もの普通の男たちが戦争に絡め取られていく未来があったことが悲しい。
一方で、日本軍、国民党軍、共産党軍が群雄割拠している状況にあっても中国の来週、それも食生活が豊かであったという描写は興味深い。
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2021年11月20日(土)にジュンク堂書店 三宮駅前店で購入。11月22日(月)に読み始め、24日(水)に読み終える。
浅田次郎の作品を読むのは、『壬生義士伝』『地下鉄に乗って』に次いで3作目(だと思う)。泣かせるような話ではなかったけど、とてもよかった。
何かに関わるとか、その原因になるとはどういうことなのか、特に最後の部分で考えさせられる。
涮羊肉(シュワンヤンロウ)を食べたくなる。
59ページに「長く高い壁である。」
244ページに秋口に採れたきのこもまだたっぷりとありますと。
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日中戦争のさ中、万里の長城・張飛嶺でみつかった10名の兵士たちの死体。これは戦死ではなく殺人。やがて明らかになる真実に、作者が描いたものはトリックではなく、嘘で塗り固められた戦争の姿だと気づきました。
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浅田次郎の中で書きたい核のところがあったのだろうが、そこまで理解ができなかった。
解説を読みたいな。