紙の本
小さな世界で、心をのぞき込む
2021/06/18 19:53
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投稿者:nekodanshaku - この投稿者のレビュー一覧を見る
思い通りにならない不条理な世界が、少しだけ愛おしいものになる短編集。一つ一つの物語に、明らかなつながりはないけれど、読み終えたときの、不思議なやるせなさで、つながっているのだと思う。こじんまりとした箱庭のような物語だ。
紙の本
なるほどねー
2022/02/13 15:23
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投稿者:nap - この投稿者のレビュー一覧を見る
たぶん評価高いんだろうなと思ったら、やっぱり。
社会派ってことになるのかな。
でも、どの作品も、他の作家さんに似た感じ。
目新しさはない。
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投稿者:テラちゃん - この投稿者のレビュー一覧を見る
夫婦、父子、母子、家族、友達……様々な小さな世界を描く短編6作は、まさに表題通り。だが、どれも薄っぺらで感動に欠けるのは筆力が足りないからか。吉川英治文学賞の新人賞というが、少々、お粗末ではないか。文学そのものの質が低下しているのだろう。本屋大賞3位は分かるけどネ。
紙の本
短編集だが
2021/10/20 01:57
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投稿者:エムチャン - この投稿者のレビュー一覧を見る
それぞれが連作のような続き方で始まります。後味のいいもの、悪いもの、さまざま……。中でも「魔王の帰還」は、自分はいいと思いましたが、逆の感想の方もありそう。むしろ……「愛を適量」もそうかな、これって……
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投稿者:漂白 - この投稿者のレビュー一覧を見る
新感覚という評判に惹かれて読みました。
読み終え、ん?どこが?でした。どれも普通の展開に終わらない短編ですが、捻られても「そうですか」。繋がりがあると見られるネオンテトラと式日もなんだかパッとせず。
blから一般文芸で書かれた作家さんらしい。blも読んでみようかなとは思いました。
凪良さん同様の著者紹介で、こういう感じで一般文芸も書く作家さんが増えてくるんですね。作風が似ているので受け入れ易いとは思いますが、目新しさは感じられませんでした。
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投稿者:エムチャン - この投稿者のレビュー一覧を見る
読み終わると、なんというか嫌な感じ……あえていうならば、毒、を感じるものばかりでした。好きな人はこういうカタチの小説を読むのでしょうかー。自分は、ちょっとね……。スミマセン
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最後にゾクッとするもの、素敵な結末でよかったなとほっこりするものと多様で楽しめた
魔王の帰還のお姉さん、懐深くてパワフルで格好いい。幸せになれますように
でも個人的にはゾクッときた1章と3章が印象深い
5章と6章のつながりだけわからず…気になる!
そうしたつながりを見つけるの含め、また読み返したいと思える作品
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ずっと星の評価をやめてたんですが、数年ぶりにつけました。
「ネオンテトラ」
『夜のコンビニは、水槽に似ている。』……うまくレビューが書けない、言葉を立てられない。こういう余韻を残すのが小説なんだよなと思う。やるせなさが肌感覚として迫ってくる。妊娠できない。夫の浮気。よくある題材なんだけど、こんな男の子どもなんか、ではなく、こんな男からは子供くらい回収しないと割に合わない、と思う主人公、水槽のネオンテトラを自分を重ね、行き場のない姪の同級生男子を重ね、彼との時間が、彼が必要で、それは恋でも愛でもなかったはずなのに、彼の横顔に囚われた、瞬間、心臓が胸ではなく腹の奥で鳴った、という表現。こうして並べるとありきたりに思えるけど違うのよ、とりあえず読んでほしい。結末にはびっくりで、主人公の狂気も感じなくはないけど、決意した人間の強さは狂気みたいなもんなのだろうな。舌を巻く。
あ、そっか、なぜか「望んでいない幸運に恵まれる」と言った主人公が、望んだ幸運に恵まれる話なんだな。姪が笙一の子を孕んで泣きついてきてくれた奇跡。書き出しの回収がこれまた見事だ〜。
「魔王の帰還」
「魔王」というキャラを生んだ時点で優勝、みたいなお話じゃん……優勝だよ……エピソードや描かれる場面が厳選されててどこを切り取っても魅力的。田舎に帰還してきた魔王(お姉ちゃん)よ、夫・勇のところに帰還していけ、魔王の帰還、タイトルまでこんなにもスマート。主人公の野球部でのエピソードも金魚掬いの様子も、あーもう本当に、画が残るんだ一穂さんの小説は。
「ピクニック」
「魔王の帰還」でテレビに出てきたニュースが繋がってる〜! でもそれどころじゃない〜! 自分自身母親だし現在進行形で乳幼児育ててるのでそれだけでも読んでてエグエグしてしまったんだがそれどころじゃないじゃん何この締め方……ホラーだった……オカルト……この話にピクニックてタイトルつけちゃうセンスは最高に好き。
「花うた」
鼻歌とかけているんだな……そう気づいたときまた身震いが。詩的センスも結局大好きです。
六篇中四本目のこの話を読みながら、最初から薄ら違和感を覚えていた帯の煽り「共感度5つ星」について、やっぱりこの本を「共感」で売るの違和感あるなーと思った。これは犯罪被害者・加害者の往復書簡を軸に綴られる物語だけど、伝わってくるのは「誰も他人のことはわからない」というメッセージなんだよな。「ネオンテトラ」から始まるここまでの四篇すべてそう、共感に関して言えば、共感できるよというより、共感なんて安易にするなという強い示唆を感じるよ。わからないから思いやれる。でもそれも思いやってるつもりなだけ。わからない。わかり合えない。やるせない。だけど、それが私たちの世界。一穂さんは、自分の目と耳だけでは知れないわからないことで世界は構成されてるんだって、そういうことを伝えてくれている。そんな気がしています。
あ、でも「まだまし」のくだりは共感だった。刺さって抜けない。
「愛を適量」
ここまでの話、テーマはどれも社会派というか、繊細な問題なんだよね。不妊とかいじめ��か加害者・被害者関係とか。この話もそう。心と体の性の不一致。
主人公の父と子の再会、書き出しから上手だなぁ。途中のどんでん返しも。「俺のをやれたらいいんだけどな」は泣いてしまった。ここまでの五篇ではいちばん救いの見える、後味のすっきりした話な気がする。古典を持ち出すのは一穂さんぽい。
「式日」
いちばんキャッチーじゃない……何を描きたいんだろう……と読み進めていって最後でわかったね。ネオンテトラ。そうか。名もない先輩と後輩の語り。同性愛を描いてるからというだけでなく、情景描写が一穂先生って感じ。詩的で、透徹。
いちばん好きな話……と順位をつけることは無意味だけど、うーん、ネオンテトラかなぁ。BL作品もそうなんだけど私は一穂さんのかく女が好き。好きです。
ここまで、なんかとても一穂さんのファンのような書き方でレビュー書いてますが、私は拗らせているファンで、お門違いだとわかっても、まだなんか、一穂さんが世に出ることに感動ともやもやが混在している。嬉しい。悔しい。やっぱりすごい人だったんだ、所詮敵わないんだ、という気持ちが、二十年も前の私をいとも簡単に召喚してそのそばから打ちのめしてしまう。
私にとって彼女は永久に綾城さんなんだと思う。吉見さんの作品、全然読んできてないくせに。
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約50ページほどの物語が6つ集まった短編集。
全く違うテーマを扱ったそれぞれの物語は、読後の余韻がどれも凄くて、一日に一話ずつしか読み進めることができなかった。
最後まで読んだら、また最初を読み返したくなる、というような感想を以前読んだ気がするが、全くその通り。気づくのに少し時間がかかったが、あ、と思ったときには最初の物語へと逆戻りしていた。
それぞれの物語について思うことはいろいろとあるけれど、全体を通じて得た教訓を一点だけ。
他人の行いに対して、ニュースやマスコミ、SNSや噂話など、ある物事の一面だけを見聞きしただけで、簡単にいいとか悪いとかあれこれ判断するのは無謀すぎる行いなのだということ。
人生における行為や選択なんて、終わってみてから、もしくは何世代か後に初めて見えてくるものがあるのだから。そしてそれは当人にしか(もしかしたら当人ですらも)わからないものであるから。
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色々なテイストの短編集。
すごく読みやすくてすらすら読めた。
ハッピーエンドではないけど、心に残る話たち。
花うたが1番好き。
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短編6作、どれもよかった。
特に読後感爽やかな『魔王の帰還』と、
トランスジェンダーを扱った旬な『愛を適量』が好き。
『ネオンテトラ』のモヤモヤを『式日』で回収したのもとても良かった。
『愛を適量』で、佳澄の勧めで身綺麗にして学校へ行った慎悟が生徒から馬鹿にされ、もうこんなことはしないと言う場面で、佳澄が
「時間かけんのだるいって思ったらやめればいいし、今の自分を続けたいならやればいい。ただ、生徒に笑われたからっていうのはNGな。あいつらがあんなこと言ったせいだってなっちゃうだろ。理由とか原因を他人に紐づけると人生がどんどん不自由になる」
と言っていたの、とてもよかった。
世の中って些細な言葉に縛られた不自由に溢れてて、ジェンダーに関係なく「自分がいいと思うもの」がわからなくなる。
希望と絶望を行ったり来たりさせられる感じ。
この本に書かれていることは、知らない世界の話にみえて、私の、誰かの小さな世界と繋がっている。
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一穂さんがとてつもない才能の塊で作風の振れ幅がすごいこと(イエスノーと新聞社を書いた人ですからね…)も、BLを離れての一般向けで素晴らしい作品を書かれることも知ってはいましたが(猫だまりでも昭和ララバイでも他作品から完全に浮いていた)これは本当にすごい。読んでいて鳥肌が立ち、ただひたすら圧倒されながら何度も泣きました。
発売前から話題騒然になるのも、前代未聞の総力を上げた大プッシュ展開にも納得するほかない。
BL作品でも数多描かれてきた家族の関係性を縦軸に紐解かれていくのは、市井の人たちの中に密やかに眠るドラマたち。
ここには安易な救いはない、わかりやすい感動や相互理解、生ぬるい共感もなければカタルシスもない。
細やかに張り巡らされた伏線とともに、この世界で生きる人たちが心の中で眠らせてきた幾つもの生々しくも痛ましい感情、人と人とが恐れや不安を感じながらもひたむきに向き合う姿が真摯に描かれる。
小説にはこんな表現の可能性があったのかと読みながら唸らされるばかり。
取り返しのつかない罪を犯した時/大切なものを奪われた時、人はその後の人生をどう生きればいいのか。
既存の作品で運命の恋物語の背景として繰り返し描かれてきたテーマはより深く鋭く貫かれる。
犯罪加害者とその遺族の往復書簡を描いた「はなうた」の圧倒的な構成力と彼らのたどる人生の顛末には圧倒されるばかり。
物語は時にゆるやかな相互の繋がりを描き、ラストの「式日」では驚きの(ある意味とても残酷な)フィナーレを迎える。
家族を亡くした主人公の弔いもまた繰り返し描かれてきたモチーフですが、つかず離れずの心地よい関係で寄り添う二人の姿、そこで初めて明かされる痛ましい真実のひとつひとつがとてつもなく胸に突き刺さる。
ネグレクトされた子どもは一穂作品に度々登場してきましたが、本当に彼らの心理に深く迫る描写がうまい……。
街の中で行き交う人々にも、通り過ぎる家々の明かりにも、それぞれに窺い知ることのない秘密があるのかもしれない。
全編を通しての仄暗い息苦しさの中に、ゆるすこと、受け入れること、人々の生きる日々を見守り、寄り添い続ける圧倒的な優しさと希望がここには描かれる。
ほんとうにすごい作品が生まれてしまった。
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一章ごとに感情を上げたり下げたり横に振られたり。こんなに感情を四方八方に揺さぶられるなんて!
これぞ短編集!という感じ。
ある章の主人公に対しては冷めた目で、この人には感情を同期できないな、と思った次の章の主人公の、その存在そのものに全力で愛情を感じ、また次の章ではぞぞぞぞっと鳥肌たてられたり、とにかくふり幅広いですわ。
世の中捨てたもんじゃない、なんて簡単に言えない人に読んで欲しい。
人生いろいろ、とか、楽ありゃ苦もあるさ、とか、七転び八起き、とか、そんなことは知ってるし、わかってる。
だけど、ままならないんだ、人生は。ままならないまま、ずっと生きていかなきゃならない。
何かを手に入れるために何かを失う、でも、たくさんのものを失ったとしてもそれでも手に入れたいものがあれば、それだけでいいのかもしれない。最後まで手に入らなかったとしても。
街ですれ違った知らない誰かにも、その人の人生がある。当たり前なそんなことを思える自分を愛しく思う。
なんていうか、とにかく世界がこちらの懐にぬるっと入ってくる。この感じ、癖になりますわ。
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もし自分がその主人公の立場だったらどうするだろう。そんなことを考えてしまう短編が6つ。ネオンテトラは最近よくあるテーマだなどと考えていたら思わぬところからパンチを喰らってびっくりした。魔王の帰還は特に惹かれたがとにかくラストまでぐいぐい掴まれひきずられた。少し繋がっているものもあるが、短編一つ一つが普通ではない、でも文句のつけようのないインパクトと読後感を運んでくる。人の気持ちの機微をリアルに描くのが上手いのだと思う。最初の一編のテーマに辟易して積んだままだったのを猛烈に後悔した。新刊が楽しみだ。
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大好きな作家さんです。
きれいすぎない人間の書き方というのでしょうか。どんな人間にもこういう面あるよね、という普遍的で、でもあまり表向き善とはされない心理をえぐってくる人物の描写がとにかく凄いと思います。
複雑で単純には理解できないからこそ物語のなかでの深みがより増していると思います。
本当に好きな一冊となりました。
一穂ミチさんの作品と出会えてよかったです。