保身による現状維持が蔓延しきった社会に風穴を空ける一冊。
2021/08/09 15:16
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投稿者:ゲイリーゲイリー - この投稿者のレビュー一覧を見る
通勤ラッシュや電車内の液晶モニター、各メディアで報道される政治家及び芸能人による発言、結婚式や社内の昼食の風景など日常的に見られる光景。
当たり前のように繰り返されるそれらには、マチズモ(男性優位性)がこびりついている。
そのこびりついたマチズモを削り取るため、誰もが疑問を抱くことなく受け入れている様々な風習や社会構造についてとことん考えようというのが本書だ。
本書では、各章ごとに1つのテーマに沿ってマチズモを暴いていく。
あらゆる場面で見受けられるマチズモだが、その根底にあるのは男性の保身による現状維持。
自らの優位な立場を維持するため女性が受けている問題を矮小化し、男だって大変だと言い続け、問題解決をうやむやにする。
そういった愚行が繰り返されることにより、悪習であるはずのそれらが常識や基準へと挿げ替えられてしまうのだ。
今なおよに蔓延り続けているマチズモを一掃するためには、まず男性がマチズモの存在を自覚する必要がある。
美化され続けている体育会系の理不尽さや男が社会を背負っていくべき存在だという傲慢な態度を自覚するためにも、本書は必読と言えるだろう。
また本書は、削り取るべきマチズモを可視化するだけでなく、加害者に呆れ顔をされようと問題提起を繰り返すことの大切さも提示してくれる。
考えすぎだよと鼻で笑い現状維持に固執する社会に対して、考えすぎることで澱んだ社会に風穴を開けようとする著者の姿勢は誰もが見習うべきだ。
わざわざ書いてくださってありがとう
2021/12/05 19:27
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投稿者:BB - この投稿者のレビュー一覧を見る
砂鉄さんの本は好きで、大抵読んでいる。
この本も期待を裏切らない軽快な社会論評でとっても面白く、ところどころ笑いながら、時に泣いたり怒ったりしながら読んだ。
書いてある社会に蔓延するマチズモは、とりわけ女性にとっては何度も経験してきた「当たり前」すぎることで、新しい発見は無いかもしれない。
それでも、当たり前すぎて気づかなかったり、流してきたりする世間のあるあるを、男性の砂鉄さんがわざわざ文字にしていることで、救われた気持ちになる人もいるのではないか。
強い男性以外にとって、本当にどれだけ生きにくい社会なのだろう。
マチズモを削り取るのは、女性が生きやすくするためだけでなく、男女に関わらず人権の問題だと思う。
「削り取っていくしかない」
2021/12/30 03:55
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投稿者:はらみ79 - この投稿者のレビュー一覧を見る
世間に漂う気持ち悪さを分解していきたいという筆者の性分は、既刊の著書で知っていましたが、男性優位主義という、時には過去の自分も責めることになるテーマを扱ったのは凄いと思いました。
本書には一言も書いてないのですが、奥様への愛も感じます。
最後の「削り取っていくしかない」という表現に、みんな個人で動かないと変わらない歯痒さと覚悟が伝わってきました。
ぶっ壊したことばかり!
2022/02/04 22:33
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投稿者:咲耶子 - この投稿者のレビュー一覧を見る
マチズモって『男性優位主義』の事。当たり前すぎてなんも気が付かなかった男性優位を「それ間違ってますから」とはっきり言ってくれてて、ものすごく目からウロコだった。
世の中に蔓延ってるマチズモを深くしつこく考えてあります。
男性にとっても男性優位主義は良いことないって事実をもっと広く知って欲しい。
おかしいと思えばどんどん発言してもいい
2021/10/30 22:54
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投稿者:魚大好き - この投稿者のレビュー一覧を見る
いまだ男性優位な社会に、考えすぎるぐらい考えて議論していこうという本。
男性の立場から男性の「マチズモ」を考察していくのは、勇気がいることだと思うけれど、きっと著者は同性というよりは「個人」として日本のおかしなところを言及しているのだと感じた。
日本だけでなく全世界の男性に座って用を足すように言いたい!立ってするとどれだけ尿が飛散しているのか知るべき!
男性から見ても疑問があるのか?
2022/12/12 11:53
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投稿者:名取の姫小松 - この投稿者のレビュー一覧を見る
マチズモとは、男性優位や男性らしさを示す言葉。男性である著者はその男性らしさに疑問を呈する。
フェミニズムの興隆でかえって女性優遇ではないか、男性弱者が救済されていない、と反論される声も大きい。
しかし、女性は外を歩いていてぶつかられたり、後を付けられたり、向かってくる人を避けるよう気を遣わなければならない。意図せず男性と二人きりになった場合に湧く警戒感。賃金格差は解消されていないのに、防犯の為の出費は避けられない、などなど。マチズモが反映された結果の世の中の女性の心情を考察する。
本当の中立はどこに?
2022/03/04 13:16
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投稿者:higassi - この投稿者のレビュー一覧を見る
本作での著者のスタンスが「本当に中立」なのでしょうし、こちらも「分かっているつもり」で読み進めますが、それでも時々「?」と感じてしまう自分に気づき反省しながら…という繰り返しの一冊でした。賛否両論あるかもしれませんが、個人的にはとても勉強になりました。
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男、めっちゃ有利なのだ
9)何気ない差異(シーサー)
母=福を呼ぶ→自分に足りてない福を誰かからどこかから呼んでくる役割?
父=福を逃さない→予め備蓄されている福をこのまま逃さず捉えておく役割、あるいは手に届くところにすでに福がありその福を逃さない?
なぜ母は福を探す段階で父は福を自分のものとして守る段階にあるのだろう
福が常備されているのは男だから福を探す女は男から福をお裾分けされるのを望めということだろうか
考えすぎだと感じる人もいるだろう。でも考えすぎないから未だにこんな感じなんだと思う。
10)男女の雇用環境が均等ではないから均等法が生まれる。男女共に輝いてないから女性が輝く社会が謳われる。
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東京オリンピックのごたごたで、日本がいかにマチズモに囚われている国なのかがはっきりと浮かび上がったと思う。コロナ対策に関してもそれが根深く関わっているのではないかと感じている。マチズモによる弊害を放置してきた結果として当然とは言え、散々すぎる状況に憤りと絶望感でいっぱいだ。
2021年7月23日の毎日新聞朝刊のコラム「記者の目」は、フェムテック(女性の健康問題を解決するテクノロジーのこと)について取り上げている。コラムの最後のほうで、フェムテック関連の起業家が男性投資家に「これまで無くても困らなかったのだから何とかなるのでは」と事業について言われたことが綴られている。「こんなところにマチズモ」案件である。「無くても困らないということは問題が無いことと同じだし、それに多額の資金を投じて事業化することが何になるのだ」ということなのだろうが、先見の明もなく現実認識も雑なお前は投資家に向いてないから今すぐ辞めろって言いたい。
閑話休題。
マチズモがあまりにも浸透しすぎていて、問題点に気づかない人がたくさんいるのも事実だ。それは女性の中にも、悲しいかな存在する。
マチズモを保とうとする雰囲気を許さないことを表明するには、砂鉄さんの言うように、いちいち突っ込むことを根気強く続け、事実を冷静に突きつけていくしかない。
そして、砂鉄さんのように女性の声を無視せず、一緒に考えてくれる男性がもっと増えてほしいと切に思う。男性の中にだって、マチズモの蔓延る世の中で犠牲になっている人がいるはずだから。
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男性に生まれた自分には気付けなかった大変さ
大変さに気付かずに大人になれたのは男性だから
「だってそういうものなんだから、そうしてよ」
数々の"当然とされてきたこと"が当然などではなく
すぐ隣には苦しんでたり怖がってたり怒っているんだと知って、うるさいなあと思うのか、改めていくのか
女性専用車両がなぜ出来たのか?その理由を考えもせずに、男だって大変なんだよ。的な本質のすり替えはしないように心掛けます。こういうのって結構根深いところに巣を作っててふとした時にあっさりと顔をだしたりしがちだから
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マチズモ=男性優位主義。私が体験しており、そうそう、と頷きながら読めるもの、経験ないけど話には聞く、というものなど、納得のいく話ばかり。主張にもそれよ、と膝を打つ思い。
想像以上に女性は不利にされていたのだと改めて思う。そして、一番嫌だと思うのは、小さい時からの刷り込み効果があるということだ。これはおかしいと思わずにやってしまう原因の一つだが、多大なる影響を与える。そういうことを植え付けないような環境は大事だ。
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日常で、ん?と思うことやそうでないこと両方あった。日常に溶け込んだものと感じていたものが、怒るべきことだと気づけた。
どんなに小さなことでも、個人的に思えることも、あとがきにあったように、社会の未来をよくしていくために社会の問題として考えることが必要なんだ。ん?と思うことに、口に出して抗議していきたい。うるさいなと思う方が問題なんだから、、
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この本を読んでいる間、私が都内の大型書店で働いていた時に経験したいくつもの嫌なことやセクハラを思い出して心がざわついた。元勤務先はオフィス街にあり、顧客の8割が中高年男性だった。「少子高齢化」の棚の場所を訊かれて案内すると、「あなたは結婚しているの?」。まだだと答えると「早く結婚して子どもを産まないとね」などと言われる。おつりを返す時にトレイではなく手渡ししてほしいというご要望通りにしたら差し出した手を握られる。外見をじろじろ見られて品定めされる。あるいは(これは不審者だったと思うが)いきなり住所を訊かれる。みんな初対面である。
「ここでは接客業の女は全て男性を接待するためにいると思われているのだ」と感じて、年々心がすり減っていった。
夜道を一人で歩く時も、電車に乗っている時も、不動産の内見の話もそうだ。なぜ女はただ外出するだけでこんなに恐怖を感じなければならないのか? 長年自分の中に澱のように溜まっていた憤りが表面化するのはつらいし苦しいが、よくぞ書いてくれました、という気持ちも大きい。施設の受付や客室乗務員などの女性もみんな同じ思いだろう。中高年男性が若い女性に訳知り顔であれこれ教えたがる、マンスプレイニングという行為も自分の父親から日常的に受けており長年のストレスだった。
特に面白かったのは「それでも立って尿をするのか」問題。意地でもトイレでは立って用を足すというつまらない男のプライドが嫌でたまらなかったが、「座って用を足すことを強要するのは個人の自由の圧迫」という日本トイレ研究所代表理事の意見にもなるほどなあ、と思った。武田さんのおっしゃるように、「それでも立ってするなら自分で掃除しろ=つまり結局は座ってした方が楽」というのが一番公平だ。
他にも「なぜ結婚を披露するのか」の章、「商社の食堂で会話を聞く」のパートは潜入ルポになっていてとてもわくわくした。
「体育会の抑圧」の章の指摘も重い。部活の女子マネージャーの存在によって「男が身の回りの世話をしてもらうのは当たり前」という価値観のまま社会に出て行く。それでなくても家では母親が何くれとなく世話を焼いてくれる。これは私の持論だが、”家事をしない男”を育てているのは女だという矛盾も忘れてはならないと思う。
部活での理不尽な要求はそのまま会社で「いつもいる」「根性で仕事を乗り切る」ことにも繋がり、息苦しい思いをしている男性も多いはずだ。妊娠・出産で一時的に職場を離れる女性は歓迎されないから、未だに女性の管理職や議員が増えない。根気良く考え、この負のスパイラルから脱却することを言い続けていかなければ社会は変えられない。こんなに粘り強く訴え続けなければならないのか、という読後感がずっしりと残った。ただ男性を批判するのではなく、男性側の生きづらさも考慮した上で答えを導き出せる社会にしたいと心から願う。
最後に、あおり運転の加害者の96%は男性であること、そのうち20代から40代が69%を占めており上の世代だけがマチズモの権化ではないこと、元勤務先の男性客は高齢の人ほど物腰が柔らかく謙虚で、尊敬できる方々も多かったことを申し添えておく。
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武田砂鉄さんの
新刊が出るたびに
おっ 今度は
どんな切り口で
と 手に取ってしまう
今回は
マチズモ(男性優位主義)
なぁるほど
そりゃ ないよなぁ
そういゃあ その通りだ
ほぉ そんなところにも
なんと こんなところにまで
頭の中を
いい意味で
素敵なニュートラルにしてもらえる
日常に「異なモノ」「無邪気な悪意」
が潜んでいる
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こういうジェンダー問題の本を読むと、分かる分かる、となることが多すぎて、これも分かる、あれも体験済み、あ、この手の話なら私の場合、こういうことを言われましたよ、が次々に溢れでてきてしまって、書ききれない。
だから、逆に読んでいて驚くこと(こんなことがあるんだ)は、ほとんどないのだけど、今回、さすがにこれは驚いた、と言うところを。
●国会の女性用トイレの実態、、、さすが日本のジェンダー格差の順位を下げている大きな要因の現場。職場に安心していけるトイレが無いなんて、地獄。
●2006年に起きた、特急サンダーバード号内で起きた、女性へのレイプ事件について、”痴漢から女性を守る会著”/江川雄一監修『満員電車には危険がいっぱい』で、「この一件に教訓があるとすれば、『女性も自衛しなければならない』ということです。残酷な意見と思われるかもしれません。ですが、先の状況を変えられる可能性があったのは、被害者の女性だけです」としている。
え????????どういうこと???????
まず、これって”痴漢から女性を守る会”と言う団体の著書、なんだよね?守る会がレイプ被害者女性に自衛を求める。へえ。
砂鉄さんの説明を読んで、一応当時の記事も読んでみたけど、女性はナイフで声を出さないよう脅されてトイレに連れ込まれた。泣きながら引きずられてるのに痴話げんかと思われたのか誰も助けてくれず、乗務員へ伝えた人もいない。でも、女性が自衛するしかない。じゃあ、どうしてもレイプされたくなかったら、レイプか刺されるかの二択で刺される方選んだら周りがさすがに助けるよ、ってことなのかな?
これはさすがに極端な例なのに怒りすぎだよ、って思われるかもしれないけど、これを本として出してしまうってことが闇が深いなと実感してしまうのだ。誰も、さすがにそれはおかしくないですか?と言う人が、出版社側にも、会の人(って誰なのか1人なのか分からないけど)も、監修の人も、誰もいない、ってことに絶望する。
この後にも、レイプ被害の女性が訴えた裁判で、泥酔・嘔吐するなどの状況下で拒否できない状況だったが、被告側がそのことを認識していたとは認められない、ってことで無罪になっている。
絶望のその上は、なんて表現したらいいんですか?(さすがにこれはその後二審で有罪になっているとのこと)
怒りすぎて、何だかトイレネタばかりになってしまった(苦笑)
しかし、それ以外のところは、女性としては、社会に出てから(痴漢なんかは中学生から経験してるけど)
日々、自分や友達や同僚が経験していることなので、今回は省略。
それから。
こういう女性の生きづらさについて取り上げている本や記事を読むたびに、以前からずっと気になっていたことがあり。今回のこの著書で、砂鉄さんが触れてくれていて、改めて思ったことがあるので、書留めておきたい。
それは、この男性優位社会を変えるためには、男性が、女性が差別されていると言う事実だけでなく、男性社会は男性にとっても苦しいこと・おかしいことが色々潜んでいるという事実もスルーしないで、と言うこと。体育会系の話とか、人事権の話とか、���性同士のマウントとか、男性だって疲れませんか?男性が苦しくなくなったら、女性に「男だって大変なんだよ」をぶつけなくて良くなりませんか?育休、男性が取ったってキャリアに不利にならなければ良くありませんか?個人個人の全ての男性の問題だとは思っていないんです。砂鉄さんの言うように、個人の問題と社会の問題、重ね合わせて捉えてもらえませんか?
もう1つは、女性が女性を苦しめること辞めませんか?と言うこと。以前から、女性マナー講師などが出す、女性向けのビジネスマナー、愛される女性、みたいなものが嫌いで、読まないようにしているのだが、本書で一部抜粋されているのを読むと、やはり酷い、、、女性が女性に『男社会の中で好かれる女になるための作法』を説いてどうするの。自分たちが苦労したことを問題定義しないで下の世代に強いてどうするの。ビジネスマナーは男女共通の常識を共有する、それだけで十分。
感想で「絶望」を連呼したけど、これを変えていくには、砂鉄さんがおっしゃるように『変わらないな、という憤りを保たなければ、マジで変わらない。マチズモを削り取るための有効な方法はないし、すぐに改善はできないけれど、このまま続けていくしかない。体系的にではなく、ひとつひとつ、目の前のことに突っ込んでいくしかない』のだろう。「なんか最近、ちょっと言うだけですげー叩かれるじゃん。」で終わらせちゃいけないのだ。