堅苦しくない談義書
2021/05/23 08:45
2人中、2人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:岩波文庫愛好家 - この投稿者のレビュー一覧を見る
或る程度のボリュームのある本書ですが、文字も最近の岩波文庫らしく大きいので、読み易いです。そして何より会話の遣り取りで進んでいく為、多少技巧的な表現があるものの、読み物的にサクサク読んでいく事が出来ます。
本書の中身としては『メノン』や『ゴルギアス』といった書に類する構成となっており、ただそれらよりはもう少し簡潔な印象です。読み手側は比較的頷けるトピックスが多い気がします。個人的に成程と思えた内容は以下の事です。
「服をなくしました。」「それは、服を持っていたからだ。」に続き、「どうして君は腹を立てるのか。それは所有のあるところに損失があり、苦労もあるからだ。」
ここ迄達観出来れば思い悩む事はないのですが・・。
古代ギリシアのストア哲学者の代表作です!
2021/04/05 10:47
1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:ちこ - この投稿者のレビュー一覧を見る
本書は、古代ギリシアのストア派の哲学者であるエピクトテスの弟子たちによって書かれた書です。彼の『語録』と『提要』はとても有名で、この二つはすべてのストア哲学のテキストの中でおそらくもっとも広く読まれ、影響力の大きなものであると言われているものです。同書は岩波文庫から上下2巻シリーズで刊行されており、同書上巻はその『語録』の第1と第2が収録されています。「君は私の足を縛るだろう。だが、私の意志はゼウスだって支配することはできない」という言葉で始まる同書は、ローマ帝国に生きた奴隷出身の哲人エピクテトスが、精神の自由を求め、何ものにも動じない強い生き方を貫いたことがよく表れています。ぜひ、この古典を読んでみてください。
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2021年、1冊目!
僕に大きな影響を与えたマルクス・アウレリウスの『自省録』の土台となった作品。同じストア哲学を扱っていて、構成が断片の集合体という点では両者は共通している。
ただ前者は著者自身が内面に向けて悲観的、美しい修辞で語っているのに対して、後者は生徒に向けて楽観的にフランクに語っているという対照をなしているのは面白い。
対処できないものには従うとして、その上で対処できるものに対しては「意思」をもって対処する心構えは参考になりそう。
(『自省録』と同じく、大体同じ内容のことを手を替え品を替え延々と語られるので多少飽きが生じてしまう…)
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ストア派の最も重要な哲学書の新訳。
アントニヌス帝の自省録やヒルティの幸福論
他様々な本で引用されている重要な図書であり、
絶版の古い訳しかなかったが待望の新訳が出た。
分かりやすい訳で文字も大きく読みやすい。
ストア派の目的はソクラテスのように善く生きること。
すなわち理不尽な運命にも正々堂々と立ち向かい、
泣き言を言わず結果を受け入れられるようになること。
外的なものに惑わされず意志をコントロールすること。
そのために自分の行動によって徳を磨くこと。
神に全てをゆだねることが大事ということが分かった。
エピクテトスは元奴隷であり、不自由を知っている。
「外物」ではなく「意志」が大事という言葉には、
とても説得力と重みがある。現代に奴隷は居ないが、
ローマ皇帝ですらバックボーンとした思想であり、
その思想は今日でも全く色あせてはいない。
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古代ギリシャ ストア派の哲学者エピクテトスが説いた考えを著した本の新訳。
エピクテトスは生また時からの奴隷であり、人生の途中で奴隷を解放されたという異色の経歴の人物。
そんな苦しみを耐え抜いた人の説く哲学だから綺麗ごとは一切なく、理路整然とどう考えるのが納得できるかに終始している。
言っている内容はハッとさせられるものも多いし、読む価値はあるのだが、如何せん2000年前の事柄が引き合いに出されるから、共感できないことも多い。
そして多分、激情家だったのだろう。
ヒートアップすると次々に違う話に波及するし、他の学派をディスり始めれば、けちょんけちょんに言うしで、ついていくのが大変だった。
度々、わからなくなるからすぐに眠くなるし。。
とはいえ、学んだことは価値があると思う。
エピクテトスの主張は主に以下である。
・自分の力の及ぶもの、及ばないものを区別せよ
・力の及ばないものに心を留めるな(環境・人間関係・身体)
・力の及ぶものを使いこなすことに注力せよ(自らの意志)
・物事の善悪は自分の力の及ぶものの中にしかない
・行動、考えを自然本来に適うようにせよ
書いたら単純ではあるが、口酸っぱく繰り返し説明されるように、実際に日常に当てはめるのは思いのほか難しい。。
以下、いいなと思った発言
・追放か、死刑か? 追放です。 それでは昼食にしよう。
・最高のものに到達できないからといって、捨てて顧みないようなことはないのだ
・我々のうちの大部分はキツネとなって、いわば動物の中での不幸者になるのだ
・我々がこれこれのことが良いと思わなければ、その結果となる行為をすることはないでしょう
・自分の意志に反しているところ、それが牢獄だよ。
・神々は唯一、心象をどのように用いるかだけを君の責任として付与してくれた。
・所有のある所に損失があり、苦労がある
・共通の利益に何らかの貢献をしない限り、個別的な善のいかなるものも獲得できないように人は作られている
・君もそう思えるようなときなどは「もう遊ばない」といってやめる事だ。だけどそれをやめないのであれば、泣き言を言ってはならない
・君の物はあらゆる手段によって守り抜き、君の物でないものは望んではならない
・牢獄とか追放や死などは善悪とは無関係
・意志に関わりの無いことは大胆であれ、意志に関わる事には用心深くあれ
・死とは何であるか。お化けだ。労苦とは何であるか。お化けだ
・私は私のするべき仕事をしたが、君が君のするべき仕事をしたかどうかは、自分で見てみることだ
・人間とは理性を持った死すべき動物だ。理性の無い野獣(危害を加え、乱暴)や羊(欲情にふける)になってはならない
・もし君があらゆることをお金に換算してみるならば、鼻を失った人は君の目からすれば損害を受けたことにはならない、という事を考えてみることだ
・哲学すると��うのは判断基準を考察し確立すること(秤をつくる)で、その上で認識されたものを用いるだ。例:善は誇るに値するが、快楽は値しない など
・我々は小さな身体に、わずかな財産に、権威にどう思われるか不安を感じているが、我々の内部のことについては少しも不安ではない。という事はありえない。
・何かが奪われる、失われるならそれまでに用いることが出来た時間に感謝して、気持ちよく速やかに返すことだ
・訓練・習慣は少しづつ、自分を褒めるように
・心像よ、お前を調べさせてくれ と言えばいいのだ
・ストア哲学は病気、危機、追放、低評価、死に際しても幸福な人々である
・人の心は「私、私のもの」に利益があるところに必ず傾く。
だから「私、私のもの」を自分の意志のみにするべきだ。
そうすれば、財を守るより、誠実な男であることが利益となる。
・友愛とは他でもない、誠実さがあるところ、専ら美徳だけを尊ぶところにあるのではないか
・自分と自分の属するものを意志とは無関係な所に置こうとする。これが対立を招く。
下巻も気になるが、読み進めるのが大変だから悩むところ。。
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古代ローマのストア派の代表的哲学者として伝わる「エピクテトス」の講話を弟子がまとめたものとされる本である。
旧訳本を1度読んだが、新訳が出るに及んで、再度読み直した次第である。
一貫している内容は、ストア派的世界秩序をベースに、真に自由に生きることを目指し、以下の内容を説く。
「求めて得損なわず、避けて避け損なわず。」
「権内にあるもののみが君の自由になるもの。権外にあるものは一切自由にならないもの。」
本書の内容は上記の内容を繰り返し説くものと言える。
本書からは仏教書に通じる何かを感じる。
所々になんとも言えない親しみやすさを覚える。
これが何かは、まだうまく言語化できない。
権内にあるのは、「今」、自分の意思や肉体を、神に感謝して、心象を正しく用いて、行動することだけである。その結果は権外であり、一喜一憂するものではない。
年を経ても変わらない真理の一つであろう。
自分の中にエピクテトスの説くことのベースは刻まれた。
自分が、彼の教えを実践できる素質の人間だとは思わないが、折に触れて本書を読み返し、この一つの真理を、人生と言う航海の、灯台の灯りとしたい。
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良いことが書いてあるんだろうけど、私には難しすぎて読みきれなかった。
いつかまた、エピクテトスの本はチャレンジしてみたい。
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ブログで、ぼっちはストア哲学を学べ、と紹介されていて図書館で借りる。自分の力の及ばない部分、他人からの評価などは特に処理する必要はない。大事なのは心象(物事をどう捉えるか)と自分の意志であると説いていた。対談っぽいのでなんとか読める。親しい人の死については、どうにもならないから悲しいことと捉えず、自然なことと捉えるというのはちょっとストイックすぎるかな…
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本書を一行で要約すると、「自分の力が及ぶものと及ばないものを峻別し、力が及ぶものだけで最大限の善を成せ」だと思われる。著者自身が奴隷の出自だけに、困難な境遇においても自分の意思を何よりも尊重する思想には、一層強い説得力を感じた。
なお本書は新訳であるものの、先取観念などの分かりづらい用語や、やや回りくどい言い方もあり、あまり読みやすいとは言えない。最初は1ヶ月かけて頑張って読んだが読了に至らず、今回途中からリトライした。各章に前後関係は無くどこからでも読めるため、まずは自身が理解しやすい部分から読み、徐々に難しめな章にトライする読み方の方が長続きしそう。
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解放奴隷の哲学者エピクテトスの話を弟子がまとめた「語録」の前半が収録されている。けっこう回りくどい感じの文章で、しかもジョーク交じりなんだけどその冗談が分かりにくいので何を言っているのかよくわからなくなって辛い。でも大体は「唯一自分の自由になるものである意思をコントロールし、自分の力の及ばない不運や病気、死などにわずらわされるな」「自然(運命)に従って生きよ」ということを手を変え品を変え繰り返している感じで、ストア派思想の処世的な部分がクローズアップされている印象を受ける。これがストア派後期思想なのだろう。
「自分の意志に反しているとき、そこが牢獄である(だからソクラテスは牢獄にはいなかった)」というのはなるほどと思うが、だから自然に従い、すべてを自分の意志だと思い込めればどんな運命の元でもハッピーに生きられるというのはちょっと強引に過ぎるように感じた。幸せだと言われれば、そうなんだろうけど。
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メモ→ https://x.com/nobushiromasaki/status/1904482337641161063?s=46&t=z75bb9jRqQkzTbvnO6hSdw