紙の本
国鉄の話が盛りだくさんの内容で、大満足でした。
2022/09/27 15:41
4人中、4人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:広島の中日ファン - この投稿者のレビュー一覧を見る
かつての国鉄に勤務し、分割民営化直後のJR九州の初代社長を務めた著者が、国鉄についてあらゆる方面から説明した1冊です。
400頁弱の分厚い紙幅で、本当に国鉄の話が盛りだくさんで、JRの前の日本の鉄道事情が分かり、鉄道ファンの一人として大満足の内容でした。
紙幅が厚いと前述しましたが、個人的にはかなりハイペースで読み切れました(私が好きな分野だったからでしょうが)。面白かったです。
紙の本
日の丸を背景として巨大企業
2022/08/20 10:36
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:ニッキー - この投稿者のレビュー一覧を見る
国鉄は、明治以来、国有、半官半民とその形態を変えつつ日本の巨大企業として日本経済を支えてきました。本書は、その発展、内情、問題点を知るコンパクトな一冊です。
紙の本
JR九州の努力に拍手
2024/01/04 10:54
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:ふみちゃん - この投稿者のレビュー一覧を見る
JR東日本、JR東海、JR西日本は首都圏、関西圏の在来線、東海、山陽新幹線といった金のなる木を抱えているから黒字になるのは当然だと思うが、JR九州を黒字にした努力というのは称賛に価すると思う
紙の本
国鉄の崩壊とJRとしての再生
2023/06/13 16:25
2人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:森の爺さん - この投稿者のレビュー一覧を見る
かつて存在した三公社(国鉄、電電公社、専売公社)の中の最大規模を誇った日本国有鉄道は、巨額の債務故に中曽根内閣が実施した民営化により、JRとなって既に40年近くが経過している。
この本の副題は「日本最大の企業の栄光と崩壊」とあるが齢60を超える爺さんである私が国鉄という存在を知った頃にはこの巨大企業は既に慢性赤字に陥っていた。 そして国鉄本社採用の技術者として活躍し、民営化後はJR九州の初代社長として水戸岡鋭治デザインの車両の導入等で営業能力の高さも証明した著者は内部の人間として、旧国鉄の崩壊とJRとしての再生、そしてその将来について書いている。
戦後の雇用対策として大量の職員を抱え込んだ国鉄は、その人件費もさることながら、政治的に赤字路線の敷設を義務付けられながら、運賃値上げについては国会の承認が必要という政治による束縛がその経営の自立を阻み、「政治が何とかしてくれるだろう。」という「親方日の丸」意識が染みついたことが経営悪化の最大の理由だったと思う。
経営改善という観点からは「マル生運動」が最後のチャンスだったと思うが、複雑な労組関係から同じ企業内労働組合である「国労VS鉄労」の勢力争いに巻き込まれ、国労からの申し立ての中で何件かは不当労働行為に該当するという公労委の判断が示されたことにより、国鉄当局が腰砕けとなり、挫折したことは大変残念である。 腰の定まらない上層部は経営に協力的な鉄労が存在するにも関わらず、敵対的な最大勢力である国労に配慮した結果、生産性向上も果たせず、経営再建計画も絵に描いた餅に終わり、自力再建が不可能であると判断した中曽根内閣による分割民営化により、北海道、東日本、東海、西日本、四国、九州そして貨物のJR7社として再出発することとなったのは必然の結果と言うべきだろう。
増加する一方の赤字を抱える企業の労組でありながら、国労における危機感の欠如は信じがたいレベルだったと今更ながら思う。 スト権ストというGHQによって禁止された争議権の復活を目的とした大規模な「違法スト」を実施した結果、乗客や貨物の利用減少による赤字の拡大、更には私鉄総連との関係悪化を招き、分割民営化に当たっては「コペルニクス転回」により賛成して組合員の雇用を確保した動労に対して、内部の派閥抗争により統一した行動が出来ずに自滅する結果を招いたのも自業自得である。
著者は分割民営化について本州3社(東日本、東海、西日本)からの島3社(北海道、四国、九州)の分離だったと書いており、大都市圏での収益を確保することにより安定的な経営を構築した本州3社に対して、切り離された島3社がおかれた状況について説明する中で、JR九州創業時の社長として、JR九州については本業以外の不動産業にシフトすることにより経営改善が行われたと説明しているが、本業以外への活路を持たないJR北海道とJR四国、特に北海道の困難な状況が浮かび上がる。
そして少子高齢化の進む国内情勢の中では、利用客の減少は避けられないが、著者はその対応策として貨物輸送の確保、かつてスト権ストによってトラック輸送に奪われた物流を、乗客の減少する新幹線輸送網によりトラック運転手の減少が見込まれる中で取り戻すこと提言しているが、そういった発想の転換が国鉄を引き継いだJRグループで可能なのかは今後を見るしか無いだろう。
紙の本
国鉄の栄枯盛衰を様々な側面から描く内容充実の1冊
2024/02/21 17:26
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:YK - この投稿者のレビュー一覧を見る
JRの前身「国鉄」の栄枯盛衰を、元JR九州社長であった著者が様々な切り口から述べている1冊。
中でも興味深かったのは、車両開発の部分です。著者は技術者としてディーゼル車(気動車)の開発に長く関わってきました。蒸気機関車をリプレースする無煙化を進める中、国鉄時代の名車ともいえる特急用キハ81系、急行用キハ58系、牽引用のDD51型などの開発に関する記述は、開発に携わった人ならではという印象でした。
「国鉄」は巨額の赤字を抱えてしまうわけですが、その原因としては1)運賃改定は国会での議決が必要であった、2)国策として赤字を承知の上でローカル線の建設を進めた、等々民間企業であれば普通に経営判断できる根本的なことの決定権がなく、その代わりにコストは国が負担するという”親方日の丸”枠組みの構造的な問題点があったことを指摘しています。
鉄道貨物の問題にも触れていて、国鉄の貨物輸送は石炭輸送から始まり、競合する輸送手段もなく「荷物を運んでやる」ぐらいの殿様商売であった感覚が石炭輸送が斜陽化した時点でも抜けきれなかったことが赤字を膨らませた、等の事情も紹介されていました。
JR各社の今後の展望にも触れられており、少子化、コロナ禍による社会構造の変化に直面し、旅客輸送にことさら頼りがちであった日本の鉄道の在り方を、より貨物輸送にウエイトを置いた運用へシフトすべきと提案しています。CO2削減や、ドライバー不足などの諸問題の解決策として、新幹線を利用しての本格的な貨物輸送の可能性に触れ、是非進めるべきと提言していました。
今年は日本の鉄道が開設されて150年の節目ということで、多くの書物も出版されているようです。本書は単なる鉄道オタクモノではなく、労使問題や技術開発、近代史など多くの側面から「国鉄」を再検証しており、読み手の興味によっては読みづらい部分もあったりしますが、全体としてはさすが中公新書だけあって情報量はかなりの物でした。
投稿元:
レビューを見る
1949年設立の国鉄は高度成長を支えたが、経営は悪化、1987年に民営化された。国鉄の失敗に何を学ぶか、元JR九州社長が語る
投稿元:
レビューを見る
書店で見掛けて興味を覚え、入手して紐解き始めた。本書の各章を実に興味深く読み進めた。出逢って善かったと思える一冊だ。
「国鉄」というモノが「分割民営化」で「JR」になってから既に三十数年なので、「全然知らない…」という人達の世代も広くなっていると思う。が、「国鉄」は日本国内で非常に大きな存在感を示していて、後にも先にも「日本最大の企業」であったと考えられる。そしてその「国鉄」には、栄枯盛衰の様々な経過が在った。
本書では実に広範な話題について、非常に興味深く綴られている。
「国鉄」という略称でよく知られる「日本国有鉄道」という“公社”の体制が登場する以前の、昭和10年代の戦時体制下の色々な要因で疲弊した鉄道の様から、草創期の「国鉄」の状況等に関する話題が在った。
東海道新幹線が実現して行った経過、その大きな“達成”と、裏側で生じていた“問題”という話題が在った。
蒸気機関車が退場して行くことになる中でのディーゼル機関車やディーゼルカーの開発に纏わるような話題が在った。
「国鉄」の現場の様子、労使関係、複数在った“労使交渉”の主体になっていた組合、労使の対立ということに留まらず組合間の対立も存在していたというような話題が在った。
貨物輸送に関して、国内の輸送需要の中で圧倒的な部分を占めていた時代の後、ドンドンと占める部分が小さくなってしまって行ったというような話題が在った。
「国鉄」の部内に見受けられた様々な問題と、経営再建の難航、「分割民営化」への経過というような話題が在った。
「分割民営化」の後に登場したJRに関すること、更に昨今のJRの状況やという話題が在って、加えて鉄道の未来に関する提言も在った。
大雑把に振り返って、これだけの豊富な話題で、実に読み応えが在った。
著者は、所謂“キャリア”として国鉄に入社し、技術者として車輌開発に携わり、やがて様々な現場の管理職を務めるようになって行ったという方だ。国鉄の最末期には、首都圏本部長を務めていたが、部内の事情によって九州総局長に異動し、JR九州の準備に携わった。そしてJR九州の初代社長を務めたという。
こういうような著者で、鉄道の歴史に纏わる著作や、鉄道に関連する提言等も多くしている方であるという。本書に関しては「現場での様々な見聞や経験が在る者のみが語り得る…」というような内容も多く交っていて、実に興味深かった。
そして本書では、「国鉄」が「巨大に過ぎる硬直化した機構」であるが故に、色々と不具合が生じ、不具合を修正し悪くなり、現場の荒廃というような情況も見受けられた旨が語られる。こういうことを通じて「1940年代後半から最近までの我が国の社会?」という問題提起もしているかもしれないと思いながら読み進めていた。
鉄道の未来に関する提言ということでは、JR各社の中で“問題”が殊更に大きいように見受けられるJR北海道に関する事柄、北海道での鉄道による物流の可能性に関する話題が興味深かった。
また、鉄道の未来に関して、著者は「新幹線を物流に生かす」ということが必要であると強調していた。
非常に読み応えが在って興味深い一冊な���で、広く御薦めしたい。
投稿元:
レビューを見る
JRの前身「国鉄」の栄枯盛衰を、元JR九州社長であった著者が様々な切り口から述べている1冊。
中でも興味深かったのは、車両開発の部分です。著者は技術者としてディーゼル車(気動車)の開発に長く関わってきました。蒸気機関車をリプレースする無煙化を進める中、国鉄時代の名車ともいえる特急用キハ81系、急行用キハ58系、牽引用のDD51型などの開発に関する記述は、開発に携わった人ならではという印象でした。
「国鉄」は巨額の赤字を抱えてしまうわけですが、その原因としては1)運賃改定は国会での議決が必要であった、2)国策として赤字を承知の上でローカル線の建設を進めた、等々民間企業であれば普通に経営判断できる根本的なことの決定権がなく、その代わりにコストは国が負担するという”親方日の丸”枠組みの構造的な問題点があったことを指摘しています。
鉄道貨物の問題にも触れていて、国鉄の貨物輸送は石炭輸送から始まり、競合する輸送手段もなく「荷物を運んでやる」ぐらいの殿様商売であった感覚が石炭輸送が斜陽化した時点でも抜けきれなかったことが赤字を膨らませた、等の事情も紹介されていました。
JR各社の今後の展望にも触れられており、少子化、コロナ禍による社会構造の変化に直面し、旅客輸送にことさら頼りがちであった日本の鉄道の在り方を、より貨物輸送にウエイトを置いた運用へシフトすべきと提案しています。CO2削減や、ドライバー不足などの諸問題の解決策として、新幹線を利用しての本格的な貨物輸送の可能性に触れ、是非進めるべきと提言していました。
今年は日本の鉄道が開設されて150年の節目ということで、多くの書物も出版されているようです。本書は単なる鉄道オタクモノではなく、労使問題や技術開発、近代史など多くの側面から「国鉄」を再検証しており、読み手の興味によっては読みづらい部分もあったりしますが、全体としてはさすが中公新書だけあって情報量はかなりの物でした。
投稿元:
レビューを見る
親方日の丸で経営の視点が足りなかったゆえの解体。優秀な人材も多くいたとは思いますが、労使問題等課題も多かった。日本航空の経営破綻と似ています。JRに分割民営化されましたが、本州以外の経営基盤がぜい弱で、特に北海道、四国などこの先課題も山積です。
投稿元:
レビューを見る
今年は日本に鉄道が出来て150年。新聞や学校制度も同じ年に生まれています。日本を近代化するためのインフラ3点セットが同じ年に誕生したことを偶然にも、当然にも感じます。日本の隅々まで行き渡る鉄道網は近現代史の主役だったと思います。一方で今年、東北を旅した際、初めてBRTに乗車し鉄道の路線跡をバスで移動しながら地方の鉄道はこのシステムに乗り替わっていく予感に囚われたりもしました。150年の歴史のうち1949年から1987年の38年間だけ存在したのがJRと呼ばれる前の国鉄でした。その日本で一番大きい会社のクロニクルがこの新書です。去年の自分の中での新書ベストの「サラ金の歴史」や今年のベスト候補の「日本共産党」と共通して新書ならではの早送り感が心地よく、しかも日本の近現代史とのシンクロ感が深い一冊です。著者は民営化後のJR西日本の社長を担った人ですが、本書でも問題にされる三島会社であることや出自が技術畑であることによる距離感によるものなのか、立場によって見え方が違うこの公社の運命をバランスよく語っていきます。以前読んだ『暴君:新左翼・松崎明に支配されたJR秘史』のような濃厚な読後感ではありませんが、しかし、そもそも様々な矛盾を背負った国鉄という企業に対する苦い想いも響いてきます。特に国鉄が生まれるタイミングやJRに分割される時の分割の仕方については強い想いを感じます。そこには貨物物流という旅客視点では見えてこないテーマも含まれます。今年、よく報道されている路線別収支も自分が感じたBRT化のためのプロモーションにも思えてきました。実は本書、旅の途中で読む本が無くなって駅の構内の本屋さんで購入したのですがこういう本にすぐアクセス出来るって、日本すごいと思いました。
投稿元:
レビューを見る
国鉄の技術系職員出身でJR九州初代社長を務めた著者が、自身の経験も踏まえて約半世紀の国鉄の歴史を振り返り、JRの将来に向けて提言。
官僚主義的で中央集権・セクショナリズムが蔓延り、人を生かせなかった国鉄の組織経営的問題は、他の組織にも教訓になると感じた。
また、鉄道政策は、誰もが思いつきレベルのことは言えるが、そう簡単にはいかない、なかなか奥が深いものであるということを感じた。
「新幹線物流」の推進など、著者の提言にも納得感があった。
車両の話なども豊富で、鉄道ファンなら一層楽しめると思った。
投稿元:
レビューを見る
鉄道開業150年というタイミングで刊行されたこともあって、ややミーハー気分で購入した書であったが、ずっしりと読み応えのある内容であった。
新幹線物流の可能性に賭ける思いが良く伝わった。
投稿元:
レビューを見る
戦後復興期に設備投資ができなかったことが後々まで尾を引いた件と、今時点のJR北海道への支援の必要性がうまくリンクしていた。
投稿元:
レビューを見る
230314016
国鉄〜JRの歴史を踏まえて、これからの鉄道の未来を語る。国が関わってきたからこそ今のJRがあるのだから、地域と鉄道の未来について国や地公体自身がより深く考えることが必要。
投稿元:
レビューを見る
中の人の回顧録だけではなく、今後の提言もあってバランスのいい展開だった。
提言が的を得ているかはかなり怪しいが。