「小右記」をベースに。
2024/03/09 17:26
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投稿者:岩波文庫愛好家 - この投稿者のレビュー一覧を見る
永井路子氏の『この世をば』の間隙に本書を読了しました。内容が驚く程似通っており、安堵感を覚えると共に両書を小説としての良さ・解説書としての良さという観点から夫々楽しめました。
本書は「御堂関白記」と「小右記」とを据えて(主には「小右記」を)歴史を著述してあり、史実を確りと学ぶ事が出来ます。「小右記」に於ける著者:源実資の意見や感情論をピックアップせず、出来事中心に引用してあった点が良かったと思います。
新書である故にその枠に無駄なく収まっている点が良かったと思います。分厚い専門書として大壮な、という感じがなく気軽に読み進める事が出来、且つ中身が濃く纏まっています。
人間関係を丁寧に整理
2023/09/23 15:14
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投稿者:K2 - この投稿者のレビュー一覧を見る
「御堂関白記」など、各種古記録に精通する著者による藤原道長の評伝。「権力と欲望」とあるのが良い。時系列に沿って、細かな事柄まで叙述する合間に、著者の感想が差し込まれている。当時宮廷で活動した各人の人間関係が、丁寧に整理されている。来年の大河ドラマ「光る君へ」にあわせ、紫式部を取り上げた補章を増補。
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投稿者:earosmith - この投稿者のレビュー一覧を見る
藤原道長の日記、御堂関白記を読み解くことで、道長の生々しい姿が伝わってきます。喜怒哀楽が激しく、病に苦しむところなどリアルでした。紫式部についてはあまり書かれていませんでした。
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【紫式部の時代がわかる!】『源氏物語』のパトロンでもあった藤原道長。世界記憶遺産に認定された日記『御堂関白記』から、王朝の様子、権力の動きが明らかに。
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2024年大河ドラマの予習に。古記録をベースに道長政権期の歴史を時系列で説明している。淡々とした記述だが、著者の感想がところどころに挿入されていて、読みやすい。
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御堂関白記、小右記、権記を基に藤原道長の人物像を炙り出した作品。著者は御堂関白記が世界記憶遺産に推薦されることが決まった際に、推薦に関わる仕事をしていた方。なので御堂関白記や小右記などを丁寧に読み解いてくれているため、その時その時の道長の行動、感情などがよく分かります。道長のような絶対的な権力を持っていたとしても、いや持っているからこそ、その権力を維持できるか、後世に残せるかに不安がり、怯えている様子が伝わってきます。逆に娘が中宮になった時の絶頂感や喜びも伝わってきます。著者も言ってましたが、絶対的な権力を持ち客観的な成功を収めていることと、本人自身の幸福はイコールとは限らないこと。幸福な人生とはいったいどんな人生なのでしょうか。時の権力者の生涯を通じて考えさせられます。
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大河ドラマに釣られて。
家系図と婚姻関係がややこしくて、一度読んだくらいでは、理解できない。
凄まじい栄華だったということはわかる。
紫式部は、最後の補章と、少し出てくるだけだった。
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あくなき権力欲と出世欲には正直、辟易…。日本史上もっとも強い権力を握った男のひとり藤原道長の一代の解説本です。
<構成>
全体で九章構成になっています。
第1章では道長が出世階段を本格的に上がり始めるまでのいわば青年期をまとめています。第2章から第4章までは道長が栄華を確立するまでの道程が描かれています。第5章ではそのなかで道長と三条天皇との確執と相克を中心に述べられています。そして第6章から第8章まで道長の栄華の絶頂期からその死までが語られています。最後に補章として紫式部と源氏物語について道長との関係性を含めて解説されています。
<ポイント>
(1)藤原道長の人生の解説とその政治と権力が分析
「御堂関白記」を素材にして藤原道長の人生と彼による政治の展開そしてその権力の様相が解説されています。その実態は公家たちを天皇に背を向けさせて自らに靡かせるほどの大きさです。またそのような当時の朝廷と公家社会の有様がよく分かります。
(2)多面的視点による藤原道長の考察
藤原道長を藤原実資などの他者の視点から描くことで、彼の人物像を客観的に捉えることができるように考察をしています。とくに実資による道長に対する視線は敬意を示しつつもかなり批判的な見方です。
<こんな方にオススメ>
(1)平安時代の王朝文化が好き。
(2)摂関政治時代の政治や権力の実相に興味がある。
(3)NHK大河ドラマ「光る君へ」に関連する歴史本を読んでみたい。
そのほか「私的な雑感」や「補足情報」など詳細はnote『読書感想:歴史』に掲載しています。よかったらご覧ください。
https://note.com/rekishi_info/n/n277040945f8a
(2024/01/25 上町嵩広)
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この本は長らく絶版となっていたが、著者がNHK大河ドラマの『光る君へ』の時代考証を担うのに併せて、「紫式部と『源氏物語』」の補章を加えて、2023年夏に増補版として再出版された。
内容は、ユネスコの「世界の記憶」に指定されている藤原道長の日記『御堂関白記』に加えて、藤原実資の日記『小右記』、および藤原行成の日記『権記』を軸として、更に他の資料も加えて、藤原道長の生涯と人物を炙りだそうとしています。
(道長の栄達の歴史はここでは省略します)
「御堂関白記」は、日本史上最高の権力者の日々の記録であり、他の日記が、他人が読むことを前提に貴族社会の共有財産として認識されているが、「御堂関白記」は公開されるのを前提にしておらず、表紙の見返りに「破却すべし」と書いてあり、他の古記録とは決定的に異なるそうだ。
また、日記から見えるのは、「権記」を書いた行成は、道長に対して尽力してきた側近だが、意外と道長に対しては屈折した関係にあり、「小右記」の実資は道長に対して批判的でありながら、実際はお互いに尊重しあっていたというのが面白い。
増補された最終章の「紫式部と『源氏物語』」について、著者は、道長と紫式部の関係は、もっぱら道長長女の中宮彰子の女房として、また「源氏物語」および「紫式部日記」の執筆への支援(または命令)に限られるとし、「二人が幼なじみであったとか、まして恋仲であったなどとは、歴史学の立場からは、とても考えられることではないのである」と、冒頭から素っ気ない。
2024年のNHK大河ドラマ「光りの君へ」の時代考証の担当者としては、身もふたもない言い方である。
<蛇足>
以下、「東大新聞オンライン」に掲載されている「NHK大河ドラマ」に関して著者のインタビュー記事から抜粋しました。
「あまりにも史実に反しているストーリーはやめてほしいと考証会議で言っているのですが、受け入れてもらえない場合のほうが多いので、一応言うだけ言ってはおくという立場を取っています・・・『光る君へ』は、紫式部と道長が幼なじみだという設定から出発しているのですが、実はそもそもこの設定自体が史実に反します。NHKが制作発表の段階で発表してしまったため変えられないので妥協することにしましたが、実際には、2人が幼なじみだったということも恋仲だったということもあり得ません」
<疑問>
道長は、一条天皇の寵愛を娘の彰子へ繋げる手段として「源氏物語」を使ったのは、これまでも言われてきたので、違和感はないのだが、「源氏物語」は紫式部が宮廷へ上がる段階では、既にかなりの全体構想も出来上がっており、「須磨・明石」辺りまでは既に書き終えていたという。そんな以前から、道長は、何故、どういうきっかけで、紫式部に、執筆を依頼し、当時貴重品である紙や筆を渡していたのかが、本書では触れられていないのが残念です・・・別のどこかで理由が書いてあればいいのだが・・・これは歴史の闇の中ということか?