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投稿者:はぐらうり - この投稿者のレビュー一覧を見る
創作ではあるものの小説家のジレンマが描かれていてとても面白かった!作中作があるし、私小説風でもあるし、僕の好きな「分人」の話でもあると思ったので、要素が盛りだくさんだった。読者として少し気まずさも感じるが、心地よい感じもあった。
高瀬隼子さんは何処へ向かおうとしているのだろう
2023/12/06 16:29
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投稿者:夏の雨 - この投稿者のレビュー一覧を見る
新人作家として注目を集め出した女性、朝陽。
ただし、彼女はペンネームを使う。それが有日。
朝日はゲームセンターで正社員として働いている。
まわりの人たちは彼女が作家であることを知って、少しざわついている。
しかし、作家なのはもう一人の女性、有日。
つまり、ざわついている対象は有日のはず、だと朝陽は思っている。
そんな彼女が2作めとして執筆している作品と、
それを書いている朝陽の暮らしを二重写しのようにして描かれているのが、
表題作でもある中篇『うるさいこの音の全部』。
(相変わらず高瀬隼子さんのタイトルは絶妙)
そして、その執筆していた作品がなんと芥川賞を受賞し、
その騒動のなかで朝陽と有日が微妙にずれていく姿を描いた
短編『明日、ここは静か』を収めたのが、この本。
高瀬さん自身、2022年に『おいしいごはんが食べられますように』で
第167回芥川賞を受賞しているから、どうしてもこの2篇の作品を読むと、
高瀬さん自身の実体験によるものかと考えてしまう。
読者は時に小説に描かれた人物やものごとが
作者とその周辺のことと同一化してしまうものだから、
高瀬さんにもこの作品で描かれたようなことがあったのかもしれない。
そもそも現実の世界で生活を営む人間と物語を紡ぎだす人間は
同じ世界の中に存在しうるのだろうか。
本当と嘘。
この世界が本当で、物語で描かれるのが嘘、なんていうことで割り切れるのだろうか。
そんな世界を描いて、高瀬隼子という作家は何処へ向かおうとしているのだろう。
わたしにも近い体験が
2024/10/03 11:10
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投稿者:ふみちゃん - この投稿者のレビュー一覧を見る
ネタばれ
高瀬氏は「おいしいごはんが食べられますように」で第167回(2022年上半期)芥川賞を獲得している、残念ながら私は未読。表題作と「明日、ここは静か」は2023年に発表されたもの。作品の内容はゲームセンターの正社員・長井朝陽がある文学賞の新人賞を獲得してから(作者も芥川賞の3年前、すばる新人賞を獲得している)、職場や地元の母親たちの態度が変わってきてという「うるさい・・・」とゲーセンを舞台にした作品で芥川賞を獲ってしまった「明日、・・・」の連作になっている。冒頭は「作者の大学生時代の思い出かな思っていたら、それは主人公が書いている途中の小説だった、主人公がボツにしてしまったササキさんという大学生時代の友人とのエピソード、同じような経験がある私にとっては苦いものだった、彼は今、息才なのだろうか、ということも確認できない私
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芥川賞を受賞した兼業作家の女性が主人公。小説家デビューしたと同時に、見知らぬ同級生から連絡が来たり、特に仲良くなかった人が友人としてSNSに投稿していたりと、ありそうだな〜と思えるモヤモヤなエピソードが満載で、心がざわついた。
インタビューに嘘を交えて答えると、それが地元の人たちに知れ渡り、それが事実だったと語る人が現れる。
小説の中の主人公が自分に重なり、現実にも影を落としてくる。
会社員である自分と、作家である自分が分離して、心の中で言い合いを始める。
色々な境目が曖昧になり、何が真実なのかがわからなくなって、最終的に「どうでもいいや」になっていく主人公の心境に同情しながらも、不安定な危うさを感じる。
終始、ざわざわと落ち着かない気持ちで読んだ。これも読書の醍醐味。
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ゲームセンターで働きながら小説を書いている長井朝陽が主人公。実は彼女は早見有日のペンネームで作家デビューしている。彼女の書いている小説が作中作として提示され、現実と虚構が曖昧になっていく。さらに高瀬さん自身が反映されているようにも読めて、実にスリリングである。
朝陽は相当面倒くさい性格で読んでいてイライラするが、有日の書く小説にはそんな朝陽の性格が裏返しに反映されている。現実で溜め込んだ負の感情をエネルギーに文章を紡いでいるのだろうか。現実での出来事のあとに作中作が変わっていくのもおもしろい。
さらっと読めて後味が悪いのはいつもの高瀬さんと同じだが、本作でまた一段高みに上ったように思えた。
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【小説と現実の境目が溶けはじめる、サスペンスフルな傑作】「おいしいごはんが食べられますように」に続き高瀬氏が描くのは、作家デビュー後の不安、そして彼女の身に起こる不可思議な出来事。
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「芥川賞受賞、おめでとうございます!」(帯より)
「うるさいこの音の全部」とその続編「明日、ここは静か」の2作を収録。
…ノンフィクション?いやいや違う。でも赤裸々(なのかどうかも懐疑的になるほど惑わされる)。
「※この作品はフィクションです。」というテロップを脳内に流しながら読みました。
受賞後から課されていくいわゆる有名税にじわじわと身動きが取れなくなっていく、自分自身にも止められない、賞味期限のカウントダウンをひしひしと感じる、毎作品なにかに囚われている人を描く高瀬さんの真骨頂。
フィクションとノンフィクションのマーブル模様。面白かったです…が今後は賞の授賞式を観るとヒヤリとしそう(汗
タイトルだけ出た作中作『配達会議』も読んでみたい。
#うるさいこの音の全部 #NetGalleyJP
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人と上手くやっていくためにしてしまう表面上の取り繕いや軽い嘘、その時の自分の中に芽生える本音などを描くのが上手い作家さんだなと思う。裏表もなく本音だけで生きている人以外、思い当たるところが少なからずあるだろうしそこを共感するか同族嫌悪するかは読者次第だろうけれど。
主人公が段々と不穏な感じになっていくのは冷んやりとした気持ちになった。snsで話を盛ってしまった挙句嘘だと叩かれてる人を見るようななんとも言えないざらっとした気持ち
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「うるさいこの音の全部」は文學界2023年2月号で読んでいたので、「明日、ここは静か」を読んだ。
「うるさいこの音の全部」の感想は、文學界の感想からコピペ。↓
ゲームセンターの社員兼小説家の主人公の話。
主人公が書いている小説と、地の文が交互に書いてある。だんだんと主人公が書いた小説の話と主人公自身の話が混ざってきて、どちらが小説でどちらが主人公の話だったかわからなくなった。
小説家が書いていることが、本当なのかフィクションなのか、ということが曖昧で、本当でもあるしフィクションでもあるということがなんとなくわかるのが面白かった。
「いい子のあくび」でもそうだったけど、主人公が心の中で思っていることと、実際に言葉に出したり表情に出すことが全く違っていて、実際に出す言葉や表情は、相手がこう言ってほしいだろうなという想定通りに喋っていて、それが少し共感できる。でも、この主人公はあまりにも相手の求める像に(相手がこう求めているだろうなという、主人公の想定でしかないんだけど)、寄りすぎていて、しかも言ったことを覚えていなさすぎて、そこはちょっと共感はできなかった。
「明日、ここは静か」は、その続きの話なのか、主人公が同じ。
インタビューに答えるとき、相手の求めるものを提供しなきゃと思うがあまり、話を作って嘘を言ってしまう。
こういう気持ちはわからなくもないけど、行きすぎていて怖いなと思った。
相手の気持ちを察する能力は素晴らしいけど、たとえ相手から求められていても、心にも思ってないことを言われると、それが嘘だと気づいた時に傷つくなと思うから、こうゆう人はちょっと怖いと思った。
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芥川賞をとった女性作家が主人公なので、自然と著者の高瀬さんと重ねて読んでしまう。
物語の構成が、小説と現実を行ったり来たりするので序盤は理解が追いつかず、???となった。
本音を隠して、相手に期待されているであろう言動をしてしまうというのはあるけれど、ちょっと度が過ぎるのでは?と突っ込みながら読んだ。
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今回も好みで、読み終えて面白いーー!と声に出してしまった。作家さんは、勝手に小説のイメージをつけられてフィルターを通して見られるのは生きにくそう。私は、登場人物で出てきた、作家さん自身には興味がない派で、むしろ生活知りたくない。しかし、高瀬さんの小説は大好きで、独特な世界の見方に感動する。あくまでも本としての見方で、高瀬さん自身の生活とは関係ないものなんだよなと考えさせられた。
作家以前の友だち、家族に小説を読まれるのは、作家ではない自分には想像もつかない。恥ずかしくなりそうだと思った。読んでほしいような、読んでほしくないような...
有名になった途端色んなところから、親しい顔で頼まれごとはイラっとするし断りたくなるだろうなと思った。はっきり断るべきだし、有名になったからこそ、お金を取って引き受けるべき。最後のインタビューの完全な嘘を指摘されるシーンが好きだった。
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芥川賞を受賞した主人公 長井朝陽が、周囲の人にもてはやされる。しかし、周囲の人が勝手に作り上げる「朝陽像」に段々違和感を抱き始める。
さすがに著者本人に対して「頑張って読んだ」という報告はどうなんだろう。私は、本は頑張って読むものではないと思っているが、一部の人はそうであることも事実。そういう一部の人たちは、読書は苦手だが、身近にいる人が受賞したから読もう!と思うのだろうか。それは、作品に興味があるのではなく、その人がどんな話を作ったのかに興味を持っているからだと思う。
主人公はずっと、読者が興味があるのは自分なのか小説なのかで葛藤している。
読者はSNS上でこうやって好き勝手にレビューを書いたり、著者が書いた小説が実体験なのだろうなどと受け取ったりするが、著者は読者に対して「こう感じてほしい」とか「これは私の実体験じゃない」等と伝えることはできない。
朝陽はまだデビュー間もないから、読者が想像する自分と本当の自分が異なることについて、なかなか割り切ることができないのかもしれない。
暗雲たちこめる終わり方をしているが、ここから朝陽がどう変わることができるかによって、朝陽の作家生命が決まるだろう。
最後に、文筆業を生業にしている人に対して、会社のコラムを(おそらく無料)で書いてほしいなどと失礼にも程がある。これは朝陽ももっと怒っても良かったなと。
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物語と主人公の描く小説が頭の中で混ざってきてしまって不思議な感じ
2話目で、自分の心の中の嫌な部分が描かれている(突かれている)ように感じるのはいつもどおり
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高瀬さんのご本はほんとうにお話が終わったあと主人公の物語がどう続くのか、気になりすぎる…!そのまま嘘を吐き続けるのか、素直になって嘘をやめるのか。
今回は小説家になった主人公のお話だったので、お話の中で主人公の書いた小説を読むことが出来たんだけれど、そのお話も面白かったー!
小説家になったことで周りがめちゃめちゃはしゃいだり担ぎあげたりしているのを、しんど!しんど!って言いながら読みました
明日、ここは静かでは嘘だからそんなことは無いはずなのにわたしが元凶のイズタニです、ごめんなさい、って出てきたところで、どうにかして有名になった主人公に関わっていたいのかなって思ってうんざりした。。大変だったね主人公。。
でも、お話が進むと、小説に書いたもん勝ちだね、って主人公に噛み付く先生が出てきて、確かにそういう考えかたもあるのかってはっとさせられた。
何がどう影響するかわからないから、ますます自分の吐く言葉には注意しなきゃいけないな、吐いた言葉には責任を持たないといけないな、と身につまされる話でした。イズタニさん出現もそういうことだったのかな、って全部読み終わったあと、感想を書いている今納得した
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小説家として新人賞を受賞した、ゲームセンターで働く女性の日常と、その女性が描く小説が入り混ざって語られていてどんどん混沌としていく。
こんなに色々考えてたらやってられないだろうと思うものの、私も自意識が過剰な年代の時はこんなにややこしく生きてたのかもしれない。
最後の方とか嘘や誇張の積み重ねで見てられずなんども本を閉じながら読み進めた。