魔女を標的にする背景
2024/06/07 20:31
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投稿者:ブラウン - この投稿者のレビュー一覧を見る
魔女狩りは何故起き、終息したか。その要因を、魔女像の起源から始めて文化、情勢、人心など様々な要素から考察する。
改めて思うが、魔女と囃し立てる動機の身勝手なこと。それをここまで鮮明に書いている本はどれだけあるだろうか。権力の行き届かない僻地へ抱く恐れ、声の小さい少数派への侮り、異物嫌悪、隣人への憎悪……一大虐殺とも言える歴史的ムーブメントを起こした動機は、決して古いものではない。現代においてはどのような要素を代入すると同じ過ちが起きてしまうのか。歴史を読んだはすが現代に洞察の眼差しを向けるよう促された気分だ。
文章が丁寧で読みやすかったです。
2024/04/11 11:10
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投稿者:広島の中日ファン - この投稿者のレビュー一覧を見る
中世ヨーロッパで起こった魔女騒動について著した歴史書です。
当時の魔女騒動にはどんな背景があったのか、知りたくて購読しました。極めて文章が丁寧で、読みやすかった印象が強いです。読み終えて、目的を果たすことができました。
「魔女の誕生とその迫害について『総合的な理解が』ができないか、試みてみたい。」はじめにより。
2024/04/28 00:39
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投稿者:やまだち - この投稿者のレビュー一覧を見る
「進展著しい魔女・魔女狩り研究をふまえた最新入門書」帯より。
ネタバレがあります。
目次はは以下の通りです。
1.はじめに
2.第1章 魔女の定義と時間的・空間的広がり
3.第2章 告発・裁判・処刑のプロセス
4.第3章 ヴォージュ山地のある村で
5.第4章 魔女を作り上げた人々
6.第5章 サバトとは何か
7.第6章 女ならざる“魔女”ーーー魔女とジェンダーーーー
8.第7章 「狂乱」はなぜ生じたのかーーー魔女狩りの原因と背景ーーー
9.第8章 魔女狩りの終焉
10.おわりに ーーー魔女狩りの根源ーーー
11.あとがき
主に一五世紀から一八世紀のヨーロッパで起きた魔女狩りについて、原因や背景からその本質に迫っています。
なぜこれほどまで広い範囲で魔女狩りが何年も続いたのか、ヨーロッパ史から読み解くとさまざまな要因があったことがわかりました。
噂や証言だけで魔女にされ、拷問の末に自白し、シナリオ通りの裁判をへて火刑にされるわけですが、その証言や自白の内容がありえない内容で、そこは読んで苦しかったです。残虐な行為が苦手な方はご注意ください。
この魔女狩りが過去の出来事ではなく、現代でも政情不安・社会不安がある地域では起きています。この書物はその現実と向き合う手掛かりになると思いました。
魔女狩りの本当を知る
2024/03/22 18:33
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投稿者:ニッキー - この投稿者のレビュー一覧を見る
「それは魔女狩りだ」という風に日常使っている。最近では、トランプがよくつかっている。しかし、本当の魔女狩りとは、どのようなものだったのだろう。中性ヨーロッパの闇の一端を知ることが出来る一冊である。
「二〇世紀の次なる蛮行」とは何か?
2024/03/19 23:19
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投稿者:オタク。 - この投稿者のレビュー一覧を見る
はじめにとあとがきを読むと魔女狩りをキリスト教批判に使った第三帝国を「二〇世紀の次なる蛮行」と見なしているようだ。多分プーチンの「特別軍事作戦」以降の世界情勢と重ね合わせているのだろう。魔女狩りの時代のあり方は第三帝国より共産主義体制の方が似ていると思うが。あるいは人文主義の理性の行き着いたところが理性の名によるジャコバンの恐怖政治か。
魔女狩りで金儲けを企む輩でも悪どいと摘発されるのはスターリンが粛清に関わったチェキストを切り捨てたのと似ている。
ユルバン・グランディエが性犯罪の常連とは知らなかった。カトリックの神父はセックスなど今でも御法度なはずなのにグランディエは悪評高いのに聖職剥奪にはならなかった方が不思議な感じがする。というよりこんな男を野放しにしているので悪魔憑きの標的になったのだろうか?
魔女の「実態」のテキストは魔女狩りの当事者が記したものなので、どこまでが正確なのか、どこからが偏見にまみれた視点による記述なのかが分からない。魔女狩りの被害者は読み書きが出来ないだろうから魔女狩りを批判した人によるテキストを参照するしかないのだろうか?
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魔女狩りという暗黒の歴史を分かりやすく説明している。予想通りかなり不愉快な内容だ。
キリスト教が背景とするアダムとイブの伝承において女が邪婬なものと考えられていたことが関係している。閉経した女性に対する露骨な差別が魔女伝説につながっている。
また教会や王権の正当性を高めるために対局の悪の存在を創出したとも言える。愛の宗教であるはずなのに、どちらが悪魔なのか分からない。
キリスト教に限らないが、原理主義的な考え方は極論になりやすい。正義の強調のために、強力な悪の存在が想定されてしまう。これは欧州の人々の底流を流れる考え方なのだろうか。科学を生み出す土壌であるとともに魔女狩りのような暗黒史も作り出してしまう。これは決して過去の話ではないような気がする。
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配架場所・貸出状況はこちらからご確認ください。
https://www.cku.ac.jp/CARIN/CARINOPACLINK.HTM?AL=01427673
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ヨーロッパ、特にドイツでは魔女狩りが盛んだった。それは自分が不幸だと思わせる環境の下、その不幸の原因は誰かのせいだと信じさせるキリスト教的考え方があった。
天候不順で農作物の収穫量が少なくて不幸、疫病が流行って病人がたくさん出るので不幸、身分の違いによる不自由さで不幸、など。それを誰かのせいにすることは施政者や教会にも好都合だった。
人間の醜さ…
魔女狩りが最も盛んだったドイツ、その伝統はナチスによるユダヤ人迫害にも関係がありはしないか?
読了45分
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魔女狩りについては一方的に魔女と呼ばれた人がいること、そして魔女と呼ばれた人が理不尽に虐殺されていた、という程度の認識だったが、その実態をよく理解できた。
魔女であることの証明方法か拷問による自白であったり、悪魔のなすことだから悪魔との契約などといった物的証拠はすべて消滅してしまうといった考え方はいまとなっては理解できないし、これらを事実として正式な裁判を経て処刑されていたというのは驚きだった。
ある意味、神秘的・超自然的な社会から法治社会への変遷における共通の出来事なのかもしれない。
魔女とされた人々に境界人が多かったことから日本だと穢多非人が差別されていたことに近いかと思ったが、地域の呪術的な医療や儀式を行っていた有識者という点を見ると、イタコやユタなどが近く、弾圧を受けた歴史からも受けた扱いとしては近いのだろう。
イタコやユタが少数ながらも現存することからいまも世界に魔女がいること自体はわかるが、アフリカなどでは魔女狩り(迫害)が行われていることは非常に驚いた。
一方で、現代社会でもSNSなどによる一方的な決めつけや社会的な処刑が多数発生していることを考えると、形を変えても魔女狩りは行われ続けてしまうように感じた。
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2024.05.24
私には大変良書。「ヨーロッパ近世」というわかりにくい時代を「魔女狩り」という側面から解きほぐしてくれた。
大いに知的好奇心を満足させてもらえた。岩波新書の存在意義を感じる。
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魔女狩り、ざっくりとしたイメージしかなかったので読んでみた
読んでみると魔女狩り自体は数世紀に渡って行われており、時代ごとに標的となる階層の人が変わっていたりと興味深かった。イメージとして多いのは農村にとっての余所者や下層民が魔女の典型だったが、16世紀以降は社会的地位が高い裕福なエリート層、貴族なんかが標的となっていたと知り、それはかなり意外であった
また宗教改革の影響なども記されており、その方向性から魔女狩りを論じたものを読むのは初めてだったが大変におもしろかった。特に宗教改革で有名なルターは政治と社会おける家父長制的秩序への反逆者、社会的規律化と絡んでいた国家およびその統治モデルたる家の破壊者として、その秩序の外側にいた独り者の女を魔女として球団した
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池上先生お若いのね。高校時から読んでる気がしてるんだが気のせいか。木村小三郎先生とか間違えてるかも。中世ヨーロッパと言ったらこの方よね。
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中世末から近世初期のヨーロッパで起きた「魔女狩り」という悪名高い現象を、まとめたやり方で発生から消滅まで描き出した良書
理性の時代が芽生えようとしたときに、何故不合理な「魔女」が生まれたのか、現代にも通用する観点が面白かった
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魔女狩りとはなんだったのかを資料をたどりながら考える一冊。一般的に言われている集団ヒステリー論は正確ではないし、中央政府は関与どころかむしろたしなめる側であった。それであってもなぜ魔女狩りは世紀をまたいで行われていたのか。
それは、中央権力に対抗する地方領主の示威行為でもあったし、農村経済が変化していく中で若い世代と守旧派との闘争の武器でもあった。
そんな、種々入り交じった魔女狩り模様をわかりやすい筆致で描いていて面白い本だ。
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現代の感覚からすると存在が考えられない魔女だが、中世ヨーロッパでは魔女狩りと称して多くの老齢の女性、男性(妖術師)も該当したようだが、処刑されている.悪魔を中心とする魔女集会をサバトを呼んで、それに参加したことが重要な証拠としてカウントされた由.ただ、参加者が現行犯逮捕されたことはないらしく、想像上のイベントだったようだ.魔女狩り自体がキリスト教の権威を補完する行為だったようで、様々な著書が存在している.当然ながら、批判的な論考も出版されており、そういう意味で言論の自由があったことは評価できると感じた.裁判の過程で拷問が合法化されていたのはやや異常と思うが、存在しない事象を裁くので自白が重大な証拠であったことは当然であろう.
現代でも魔女狩りに相当する事象があるとの指摘もあり、合理主義の裏には不合理がつねに隠れているという著者の述懐は重要だと感じた.