これは「オモロイ純文」でした
2024/11/28 16:34
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投稿者:夏の雨 - この投稿者のレビュー一覧を見る
第171回芥川賞受賞作。(2024年)
あまり聞きなれない言葉、「バリ山行(さんこう)」がタイトルになっているが、登山好きであればムムッと立ち上がるのかもしれない。
「山行」は登山用語で、「山の中を通っていくこと」という意味。では、「バリ」は、これは小説の中で説明がある。
「バリエーションルート」の略で、「通常の登山道でない道を行く」こと。
つまり、この小説は登山小説としても面白い。
作者の松永K三蔵さんが芥川賞受賞後「オモロイ純文」を書いていきたいと話していたのが印象に残った。「純文学ってオモロイやん」と思ってもらえる、そんな運動をしていきたいと。
その言葉通り、受賞作である『バリ山行』はとてもオモロかった。
誰であったか、いい小説は前へ前へと進んでいくと論じていたが、この作品がオモロイのはまさにその点だろう。
登山小説でもあるから、前へ進んでいくのは当然で、つまりはオモロイ小説の題材が最初から出来上がっていることになる。しかも、その登山が決まりきったルートではなく、藪や蔦、岩や崖、峡谷などのある「通常の登山道」ではないのだから、面白さは倍増される。
さらに主人公である波多が働く会社の先輩社員である妻鹿(めが)という男のキャクターがいい。
この男こそ「バリ山行」を波多に導く重要人物で、彼のキャラクターが際立てっていることで、物語をさらに面白くさせているといっていい。
そういう諸々からいって、この小説は「オモロイ純文」だった。
私には登山の趣味はないけど読まずにいられない
2024/10/03 14:49
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投稿者:ふみちゃん - この投稿者のレビュー一覧を見る
ネタバレ
第171回芥川賞受賞作品、バリ山行のバリとは登山におけるバリエーションルートの略、通常の登山道ではない道を行く、熟練者ルートのことと登場人物の一人、槙さんが説明してくれた。私には登山の趣味はないのでバリの何が楽しいのかは理解できない、妻鹿さんが休日のたびに訪れているバリの世界は彼を快楽に導きのか、苦行へと導くのかも
40代サラリーマンの悲哀を読んでしまった
2024/07/26 22:25
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投稿者:はぐらうり - この投稿者のレビュー一覧を見る
芥川賞受賞作。山小説はいくつか読んでいるけれど、登山小説は『ホワイトアウト』以外に読んでないかも。かなり久しい。
あまりメタファーとかを考えなくても、考察をしなくてもわかる純文学で、珍しいが心地よい。ルートを外れてしまったんだよね、おそらく。
山登りはしないものの、自分の人生と照らし合わせてしまって、40代サラリーマンて厳しいよね、と身につまされる思いがした。
登山しない人にも
2024/09/17 19:54
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投稿者:エムチャン - この投稿者のレビュー一覧を見る
実は、自分は登山はしないのですが、(理由は、体力が無い)読了して、なんだか登山っていいもんなんだなぁ、と思いました。登山好きで、毎年、富士山に登るという友だちがこれ読めば登山したくなる、と。いいえ、しませんけど…
山も、会社も――
2024/08/31 19:59
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投稿者:uruuduki - この投稿者のレビュー一覧を見る
安全を確保し、リスクを回避するために、先に道筋がついていて、整備された後を行く。
そうすれば確実に利益も上げられれば、気楽に山歩きが出来る。
それをルールから逸れるなんて、どうかしている。
それが、一般的な考えではないか?と問われているように思う。そのうえで、時に自分で道を探り、切り開いて行く者も必要ではないか?とも。
実際、下請けだけに絞った場合、親会社との力関係からして「安泰」どころか、不自由になるケースが多いように思う。
そんな状況に振り回される者の苦しさなのだろうなと、思う。
ところで、個人的には、バリ山行はお勧めできない。
最近は特に、熊等の出没や、気象状況の変化で、以前に比べてかなり危険なのではないかと思うからだ。里山でさえ、杉や檜の山も、過去には人の手が入っていたが、今では放置林が多くなり、荒れてきているのだ。
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群像3月号より
バリ山行…
一体何の話だろう?山を行く話。そうみたいだ。じゃあ、バリって?方言?と、タイトルへの疑問を感じつつ。その意味がわかった時はすっとします。お仕事小説の面もあり、自然の雄大さ、自然の神秘さを感じながら、筆者の筆力もあり、臨場感があり、正に都会の喧騒から離れ、俗な社会を抜け出し、そこにいる感覚を味わえる。併せて登場人物の妻鹿は魅力的だ。不思議と話しに引き込まれて魅せられた
良い読書となった。
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芥川賞候補作ということで読み始めましたが、一気に読んでしまいました。
松永K三蔵さんの書き物自体も初めてでしたが、テンポもよく読みやすかったです。
物語は無趣味な建設系のサラリーマンである波多が、会社の数人と登山に参加し、山登りを好きになるところから始まる。釣りバカ日誌のハマちゃんフォーマットを思わせる流れである。
そこから山登りは定期イベント化し、社内の登山サークルへと変わっていく。今まで無趣味だった、波多も登山道具も揃え、一端のアルピニストを思わせる出立ちになって行く。
会社の常務である藤木の壮行会を兼ねた山行が行われた際、社内のどんなイベントにも参加しない妻鹿さんが参加することになった。道がない別ルートから山頂で合流した妻鹿を見て、波多の先輩は「バリやっとんや、あいつ」と軽蔑する様に吐き捨てる。
バリとは一体なんなのか、そこはすぐにわかるのですが是非読み進めていってもらいたいです。
中年の危機が囁かれる現代において、様々な生き方が提案されますよね。この本を読むことであなたの悩みが少しだけ軽くなるかもしれません。波多の先輩の様にむかついて二度と読まないかも知れません。
私自身も登山するんですが、この本を読んでいると本当に山の香りがするような気がします。山のいいところも悪いところも丁寧に書かれている本書は登山家必読の一冊になりそうです。
群像 2024 3月号で読みました。単行本も楽しみです。
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危険なルートで山登りするのが趣味の妻鹿さんに同行させてもらったら死にそうになっちゃってワー!ってなる話。
会社でも山でも一人立ち向かう妻鹿さんの狂気を見た。
死にかけた主人公にも死なせかけた妻鹿さんにも変化が訪れる。
目の前が開けない…明日からものっそりと淡々と生きるのだ。
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面白かった。近在で時々六甲ハイクもする人間として親近感があったが、そうでなくても面白かったと思う。芥川候補にしては長くて、セクションが分かれている感じもあり、小説三つ分くらいが入っている気がした。エンタメお仕事小説のリアリティと展開、文学的人間探究、そして山行。
妻籠という人物は現場の仕事で俄然カッコよく見えてくるのだが、真骨頂はタイトルであるバリエーションルート山行の1日だ。これでもかこれでもかという濃さと長さ、迫る狂気に圧倒された。長いが、この盛り上がりあってこそ書き切れた観があり、着地も良かった。
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芥川賞候補作ということで読んだ。バリとは危ない道を行くことらしい。スラスラ読みやすい。文章がうまいってこういうこと?で、とにかく面白い。山岳小説だけど、会社員は誰もが共感できる内容では。自分は波多なのか、妻鹿なのか考えてしまった。バリ登山シーンは読んでいて本当に山に登っている感覚になる。ラスト、声が出ました。たまに笑えるのもgood
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デビューから2作目でいきなりの芥川賞受賞。読んでみて納得。非常に完成度が高い作品。
話のあらすじとしては目新しいものはなく、他の作品と比べるとやや派手さにかけるので、一見この作品の凄さはわかりにくい。
だが逆にこの内容で最後まで飽きさせず、一気に読ませるのは凄い技術だと思う。特に登山の描写が素晴らしいのと、会社や家庭での描写との対比も良かった。
作者の取材力や想像力ももちろん大切ではあるが、自分が経験した事以上に確かな事はないわけで、作品に、作者の人生経験に裏づけされた説得力があり、それはいくら才能があっても若い人には書けない作品だと思った。
とにかく読みやすく、わかりやすく、そして何より面白い。設定や人物が突飛すぎて共感しにくかったり解りにくかったりする作品も多いが、設定にも人物にもリアリティがあり、本の世界に引き込まれてしまう。
そして、波多と妻鹿さん、対照的な2人ではあるが、作者がどちらかの人物に肩入れしたり語らせたりする事なく、視点が一定であるので、どちらの人物にも共感する事ができたし、ラストシーンの素晴らしさもより際立ったような気がした。
ネタバレ的な感想は書いてないのでぜひ一度読んで欲しい。
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MEGADETH
妻鹿めがさん、不器用でまっすぐ
山行の描写が素晴らしく
そして、波多さんのしがないサラリーマンいやどこにでもある葛藤と諦めのような心理描写も素晴らしく一気に読んだ
とても面白かった
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「この道は、安全です。保証がついてます。」誰かの用意した道にしがみつき、なんとなく流れに沿って渡り歩いていく。流れにのることだけに、夢中になり、それが少しでも揺らぐと、いたずらに見えない不安に煽られる。こんな感覚が、今の世染み付いてしまっているように思う。自分の道を引いていく。そして、知識と、経験と、勘とで乗り越えたところがルートとなっていく。そこには保証などはない。うまくいくかどうか、それは行ってみないとわからない。山の中の話だけではないよなぁ、これは。
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波田 春の六甲登山 好評につきサークル活動→登山部に
新田テック建装 建物の改修修繕 元受けをやめて大手の下請けに
妻鹿(めが)さん 営業主任 毎週 山に登る 会社の作業着に地下足袋
ヤマレコ MEGADETH バリ=バリエーションルート ルート無視の山行
藤木顧問送別登山 ルート変更の先頭を歩く 有馬温泉に到着
補修工事現場でバリ同行を妻鹿さんにお願いする
「ひとりだからいいんだよ、山は」
滝越え 藪漕ぎ 腐葉土の急斜面 懸垂下降 作られた不安より 本物の怖さ
「行けるところがルート」「トップは任せろ」「不安感より本物の危機に向き合う」
「バリはひとりじゃないと、感じられない」
滑落し、妻鹿さんに助けてもらう 雨 右足首腫れ 肺炎 自宅待機
年明け、仕事始め 妻鹿さんが辞めていた 社長への直談判で
元受けのからの発注が決まり、ヤバかった会社は前のように安心さを戻す
MEGADETHのアカウントは消されていた
ひとりでバリ 深く眠るような感覚 藪の中で黒いもの? 妻鹿さん?
峪に降りる コーヒーを淹れる 歩き始めると見覚えあるマスキングテープが
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中味はスカスカ、160ページ。バリ登山に対する熱い内容のみ。熱い想いは伝わったけどやりたいとは思わなかった。人物描写は上手く主人公の心情も読み取れたが、男性向きの内容かな?