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電子書籍

春にして君を離れ

著者 アガサ・クリスティー (著) , 中村妙子 (訳)

優しい夫、よき子供に恵まれ、女は理想の家庭を築き上げたことに満ち足りていた。が、娘の病気見舞いを終えてバクダードからイギリスへ帰る途中で出会った友人との会話から、それまで...

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春にして君を離れ

税込 990 9pt

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商品説明

優しい夫、よき子供に恵まれ、女は理想の家庭を築き上げたことに満ち足りていた。が、娘の病気見舞いを終えてバクダードからイギリスへ帰る途中で出会った友人との会話から、それまでの親子関係、夫婦の愛情に疑問を抱きはじめる……女の愛の迷いを冷たく見すえ、繊細かつ流麗に描いたロマンチック・サスペンス。

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みんなのレビュー441件

みんなの評価4.3

評価内訳

電子書籍

推理モノでない

2021/02/27 08:11

0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

投稿者:エムチャン - この投稿者のレビュー一覧を見る

アガサ・クリスティーの作品。でも、ストリーのテンポの良さ、筆の運びかたは、やはりクリスティーだと思う。第二次世界大戦前のどちらかというと女性の地位の低い時代の、ある女性の物語。ラストが……

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紙の本

結局

2018/12/06 17:13

0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

投稿者:くみみ - この投稿者のレビュー一覧を見る

元はアガサ・クリスティー名義ではない作品だけあってミステリーではないけれど、要所要所にアガサ感があり、人間の深層心理が上手く描写されている。読了後の爽快感は一切ないが、結局は人間ってこうだよな、と頷ける最後が魅力的な一冊。

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紙の本

人生、そして中流階級的価値観への皮肉

2009/05/15 11:23

9人中、5人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

投稿者:dimple - この投稿者のレビュー一覧を見る

裕福な中流階級の英国人中年女性が、非日常的な空間で一時的に精神的危機に直面する様を描いた作品である。

第2次世界大戦前夜の時代、主人公のジョーンは、弁護士の夫を盛り立て、3人の子供たちを立派に育て上げたことを自負しており、人生に満足していた。

そのジョーンは、娘の病気見舞いに嫁ぎ先のバグダッドを訪れた帰途、悪天候のためにイラクの砂漠地帯にある駅の宿泊所で数日間足止めをくらってしまう。

砂漠で孤独な時間を過ごす中、ジョーンは自己の半生を振り返ることになったのであるが、やがてその人生への満足は単なる思い過ごしであり、自分は家族の誰からも愛されていないのではないか、という疑念に苛まれてしまう。

作品の中では、ジョーンの疑念は正しいことが示唆される。すなわち、ジョーンの家庭への献身は、実は世間体を気にする彼女の利益に資することが最大の目的であったことを夫や子供たちは見抜いていたのである。

エピローグで提示される結末に関して、作家の栗本薫は文庫版の作品解説において、本作品の悲劇性ないし「哀しみ」と述べているのであるが、これはおそらく正しくないと思う。本作品は、英国人の控えめさと偽善、そして空気の読めない中流女性の俗物性を皮肉った、戯曲仕立ての喜劇(コメディー)と捉えるべきなのだ。

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電子書籍

謎を自ら探して読み耽る…

2022/08/28 16:30

0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

投稿者:PJ64 - この投稿者のレビュー一覧を見る

実年齢よりも若く美しい裕福な主婦のモノローグで、ある家族の生き様が語られる。

ポワロとミス・マープルを読んできたので新しい視点に驚きよりも引き込まれました。
殺人やトリックが無いのにミステリアスで謎めいていて
自分で謎を探して「ああ~、そうだったのか」と納得したりして。
最後まで控え目なドキドキ、どちらに展開するのかと一気に読み終わりました。

面白かったのは間違いない。
モヤモヤは残るけれど。
人生という謎に答は一つでは無い、と実感する小説でした。
さすがアガサ・クリスティ。何度も脱帽です。

ただ………愛されているヒロイン。焼け野原で一人生き残る。
それを支えるヒーロー、、愛、してるんですね。1番の驚きでしたが。

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紙の本

最後まで読むと怖い作品

2022/06/19 09:07

0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

投稿者:たっきい - この投稿者のレビュー一覧を見る

クリスティの異色作。最後はどういうオチになるんだろー?と思いながら、読みました。娘を見舞ったバグダッドからの帰りの途中で、列車に乗り遅れたため何日か足止めをくらい、その間、夫や子供についてあれこれ思い巡らす一人の妻の空想がメインのストーリー。自分が良かれと思ってしていることが、実は他人の思想や考えを踏み躙っているということはよくあること。最後のエピローグまで読んでしまうと、怖いなぁと思わず、考えさせられる内容でした。

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紙の本

身近にある世界

2021/10/06 18:46

0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

投稿者:マリコ - この投稿者のレビュー一覧を見る

アガサさんの作品はこれまで見たり、読んだりしてきたけど、最高傑作かもしれない。母方の家庭環境そっくりだったので。

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紙の本

邦題が名訳

2021/08/22 09:53

0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

投稿者:H2A - この投稿者のレビュー一覧を見る

確か原題はAbsent in the springだったと思うが、それをこの邦題にしたのは名訳だったと思う。イギリスの上流階級に属する女性が、娘を見舞ってバグダッドを訪れそこから帰国する中で回想する家族との一見平和な確執の日々。最後の一文でそれがひっくり返されるわけだが、勘違い小説とでもいうのか面白く読んだ。ちなみに殺人事件は起こらない。

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電子書籍

独善は自分らしさの現れ

2021/04/17 13:48

0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

投稿者:BenchAndBook - この投稿者のレビュー一覧を見る

独善的な人生の変遷。でも独善であることにすら気づいていない。しかし何かのきっかけでそれを思い知らされ、気付く事に遭遇する。強い悔悟の念に囚われる。これからは悔い改めた人生を送ろうと誓う。
しかしその思いに至った環境や意識から解放され日常に戻ると、その反動によって何事もなかった様に気持ちのバランスを取ろうと振る舞う。私にも同様の経験があります。人間ってそういうものかな〜と思う。
自分に関わる他者も又、そうなのでは?
独善はいい変えると、自らの価値観がそうさせるのであって、自分らしさでもあると思います。日常に戻っても、フラッシュバックの様に思い出され、きっとその後の人生にじわっと生かされるのでは。こんな事を感じさせてくれた、読みやすく面白い本でした。

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電子書籍

最も見えないもの

2020/11/06 20:27

0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

投稿者:うみしま - この投稿者のレビュー一覧を見る

アガサクリスティーの推理小説は幼い頃から慣れ親しんだものですが、心理サスペンスとも言える本作は初めて読みました。ブックツリーに、大人になったからこそわかるということが書かれていましたが、確かに妙齢の女性ならば痛いほどわかる心理の揺らぎなのではないでしょうか。人は他人のことはよく見えるのに、なぜ自分のことは見えないのでしょうか?誰もがジョーンを責めることができないと思いました。そして、夫であるロドニーのあとがきは、冷えびえと、心に突き刺さるものの、でも、あなたにも責任の一端はあるとも反論したくもなります。そして、あなたもジョーンと同じ感覚を持っていないとはいえないのでは?とも。

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紙の本

春にして君を離れ

2019/03/24 14:26

0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

投稿者:アナグマ - この投稿者のレビュー一覧を見る

307ページの最後の一行。
「あー」と声にならない音が口から漏れ出していった。
そうか。
そうなるのかもしれないと薄々思っていつもガツンとくる、決定的な瞬間。

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紙の本

人間に巣食う自己満足、独占欲がもたらす罪

2009/05/28 17:21

32人中、31人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

投稿者:ろこのすけ - この投稿者のレビュー一覧を見る

 第二次世界大戦がはじまる少し前の話である。
 主人公ジョーン・スカダモアは中年の美しい主婦。夫は弁護士。子ども三人を立派に育て上げ、自分たち夫婦ほど幸福な者はいないと思っていた。それはひとえに自分が夫や子どものためにがんばってきたおかげだと自負するのであった。
 末娘の嫁ぎ先のバグダッドへ娘の病気見舞いに行き、ロンドンへと帰路につく途中、テル・アブ・ハミドの砂漠地帯で長雨のため足止めを食う。
足止めを食っている宿泊所で退屈な日々を過ごすうち、来し方のあれやこれやを思い起こす。自分がどれだけ理想の家庭を築いてきたか、夫のためにつくしてきたことや、子どもたちの為に良かれとしてきたことを邂逅するうち、徐々にそれらが本物だったのだろうかと疑念を抱く。
 夫の愛情の真偽、子どもが自分に抱く感情にはじめて気がつくのだった。

 自分の顔は自分で見ることが出来ない。
どんな概容をしているのかを知るためには鏡でみると分かる。では鏡を見ることが出来なかったらどうだろうか?家族や、友人、周囲の反応が如実に物語ってくれる。
 しかし、彼らが発する言葉や態度を正しく読み取れず、自分の都合の良いように解釈したとしたら、「自分」を正しくみることはできない。
 人は己を直視することは少ない。自分の醜さの部分ならば、さらに直視しようとはしないものだ。自分を正しいと思いこみ、他者の人生までも自分の思い通りにしようとする。しかも、それが愛するが故の強制であったなら思い通りにされた者の人生はどうなるのだろうか?しかも「愛」と思い込んでいたものは、実は自己満足以外の何ものでもなかったとしたら。
 愛するがゆえに赦されないものは何だろう?
 幸福とは何だろうか?自己満足と云う愚かしさ、独占欲がもたらす罪。
それらが織りなす物語。
 虚構の世界ではあるけれど、現実にどこにでもあるあの人やこの人の人生がここにはある。いや、これは私のことかもしれないと思ったとたんぞっと過去を振り返るのだった。
そして何よりも一番怖かったのは最後に夫のロドニーがつぶやいた言葉である。
 人間に巣食う自己満足や、独占欲、幸福のあやうさを、淡々としかし深遠にえぐってみせたメアリ・ウエストマコットの最高傑作である!
実は何を隠そうメアリ・ウエストマコット!というのはアガサ・クリスティーの別名である。
アガサ・クリスティーが殺人も、探偵も出てこない小説を6篇だけ書いた。
そのうちの一つがこの本。
アガサ・クリスティーは長い間アガサの名を隠してメアリ・ウエストマコットの名のままこの作品を出していた。
アガサ・クリスティーはこの本の構想を長年練ってきたそうだけれど、書き始めたら1週間で書き上げたのだった。そして完成したときは性も根も尽き果ててすぐベッドにもぐりこんで、一語も訂正せず、そのまま出版したという。
アガサの名をなぜ長い間秘して本書を出版したのか?その謎を推理してみるのも面白い。

言葉の泉




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紙の本

誰も死なない、そして何より恐ろしいミステリー

2008/12/15 12:37

17人中、15人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

投稿者:空蝉 - この投稿者のレビュー一覧を見る

良妻賢母の主人公ジョーンが、単身旅行の帰り道、かつての学友と偶然会い、一抹の不安を掻き立てられたことからすべてのものがひっくり返っていく。自分の信じてきた夫、子供達、家庭、落ち度の無いはずの自分の人生・・・自分の築き上げてきた過去すべてが、だ。
だれも死なない、事件もおきないこの物語は、しかし殺人事件以上に恐ろしいミステリーである。
人は己が培ってきた経験や築き上げてきた人間関係、環境など様々な過去を土台に今を生きている。信じられないものが多いこの世界の中で唯一最も信じられるモノは何か。自分が今生きていて、生きてきた過去があるということだ。しかしこの唯一頼れる過去とその自分が、実は信じていたものではなかった、としたらどうか。
この作品の主人公ジョーンはまさにそういう恐怖に崩れ落ちていく。真実であると思い込んでいた過去が崩壊し、家族や友、ついには自分自身の『本当の』姿が次々と現れる。
根底から覆されるという恐怖がいかほどのものか、読者は知ることになるだろう。
最終的に彼女が選んだ道は・・・ラストを読んでもらえば判ること。ひとついえるのは、彼女はひとつの彼女を殺し、ひとつの彼女を選んだ。血を流すことの無い、殺人の起きないアガサ・クリスティの作品。しかし、ここにひとつの立派な殺人が、起こっていたのである。

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紙の本

主観と客観の大きなズレが生む恐怖

2009/05/03 23:43

11人中、11人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

投稿者:カフェイン中毒 - この投稿者のレビュー一覧を見る

推理小説ではない、クリスティー作品です。
ところが並みの殺人事件よりも恐ろしい。
一人の平凡な主婦の独白が、次から次へと恐怖を提供してくれます。

結婚して遠方に住む娘の見舞いに出掛けたジョーン。
母親としての役目を無事に終えた充実感を胸に、帰路へつきます。

鉄道宿泊所の食堂で、学友の女性とばったり顔を合わせるのですが、
若さを保ち、品の良い弁護士夫人である自分とは対照的に、
落ち着きのない薄汚れた中年女になった友人の姿。
幸せになる努力もしないで、好き勝手に生きてきた彼女の自堕落さを、
憐みつつも、ジョーンは優越感にひたります。

その後、思うように運ばない陸路での旅で時間を持て余すジョーンは、
この学友の言葉に導かれるように、愛する夫や子供たちとの会話を、
じっくりと思い返すことになってしまいます。

いわゆる「何を言っても、聞く耳を持たない人」というのがいますが、
じつはジョーンがそうなのです。
それがどう家庭に、生き方に影響しているのか、薄皮を剥ぐように少しずつあきらかになっていきます。

彼女の回想は、かなりはっきりと客観的事実をこちらに伝えてくれます。
ここまで気づいているのなら、なぜ自分の家庭が順風満帆だと思えるのか、逆に不思議でたまらないくらいに。

そこにこの物語の、本当の恐ろしさがあると思うのです。
同じ事実を前にしたときの、ジョーンとそれ以外の人たち(読者も含む)のとらえ方のあまりの違い。

主婦として懸命に働き、家族のことに心を砕いて努力を怠らないで生きてきたと言い切るジョーン。
しかし彼女は、いちばん大切であるはずの「目の前の事実を受け入れる」ということに対して、
恐ろしいほどに怠惰だったのです。

ジョーンが、そして彼女に不満を持ちながらも逃げるか諦めるかしてやり過ごしてきた家族が、
気の毒ではなく恐ろしく感じる、そういう物語だと思います。

殺人も命を脅かす出来事も起こらないのに、終始ゾクゾクして一気に読んでしまいました。
ジョーンに救いはあるのか、未読ならばぜひ確かめてみてください。

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紙の本

あなたが見ているのは真実の世界ですか?

2005/10/24 12:03

5人中、5人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

投稿者:つな - この投稿者のレビュー一覧を見る

良き夫、子供に恵まれ、有能な主婦であると自認する、ジョーン・スカダモア。彼女はこれまでの努力の成果により、満足すべき充実した生活を送っていた。いつまでも若々しく、朗らかなまま・・・。
末の娘バーバラの病気見舞いに行ったバクダッドからイギリスに帰る途中、ジョーンは学生時代の旧友ブランチ・ハガードに会う。その時から、世界は少しずつ違った様相を見せ始める・・・。
バクダッドからイギリスへの帰路は遠い。テル・アブ・ハミドで汽車の不通のために、足止めを食ったジョーン。これまで「忙しさ」にかまけて、気付かないふりをしていた物事が、彼女の他に人もいない砂漠で頭の中に溢れ出す。何を聞いても何を話しても傷つかない、つるつるのプラスチックだったような彼女の心が動き出す。
「常識的」で「現実的」、「有能な」彼女は、周囲の人々にどう接していたか?そしてそれは、どう影響していたのか?
ジョーンがここまで、「気付かなかった」のは、また周囲の人のせいでもある。あまりにも揺るがない人を見ると、人は「話しても無駄だ」と諦めてしまう。彼女と周囲の人間の思惑が積み重なって、彼女の世界は歪められたのだ。
そして更に怖いのが、この黙示録を味わったはずの、ジョーンの帰宅後の生活。彼女が生きていくことにした世界、あの選択は正しかったのか?
自分は周囲の人に、諦められていないだろうか、と不安に思う小説だった。自分の見ている世界は真実のものなのか?

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紙の本

自分の心はミステリー

2004/07/06 11:38

4人中、4人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

投稿者:キャット - この投稿者のレビュー一覧を見る

今年クリスティ文庫が創刊され、その中に「推理小説でない」がクリスティとしてはずせない素晴らしいこの作品が入っている、というのは実にうれしい。表紙の写真も素晴らしい。作品を読んだあとでじっと表紙を見つめると、読む前にイメージしていたものと全く違ったものが見えると思う。
内容は、ごく普通の裕福で幸せな中年の女性が、旅行先で一人になったことがきっかけで、自分の今までの人生が崩壊するような、自分の家族の中の暗闇に気付く、という作品。それもその暗闇が、全て自分から発していることが原因だと気付いたら…。「全て自分が悪いのだ」と認めるのは、とても辛いことだと思う。おまけに今の今まで「自分は完璧で、幸せだ」と思っていたのだから、その幸せを全てひっくり返してしまい、不幸のどん底に自分を落としこむのはたまらないだろう。ただ、その事に彼女が気付いたということは、心の奥底では自分の中にある家族との違和感に気付いていたはずなのだ。それを彼女は認めるのか、それとも気付いてしまった恐ろしい事柄にしっかりと蓋をして、今までどおり仮面の幸福の上で暮らしていくのか。

この本を閉じて、ふと自分を振り返ってみたとき、自分の幸せは本当に心からの幸せなんだろうか、と恐ろしい想像をしてしまった。誰の中にもある不安が表面にひょっこりと飛び出してきたような、そんな不安定な心をうまく描いた傑作心理ミステリーだと思う。
主人公の年に自分がなった時、読み返すとまた違った思いになるだろう。今後も何度も読み返したい作品だ。

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