紙の本
芸術家の苦悩は計り知れない
2021/10/30 11:31
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投稿者:のりちゃん - この投稿者のレビュー一覧を見る
若冲の絵に対する姿勢を深く捉えている名作である。読み進める毎に段々と若冲の苦悩が解って来てもうそんなに苦しまなくてもいいのにと思ってしまった。
紙の本
若冲の絵の持つチカラの謎が少し理解できたような...。
2020/05/22 19:08
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投稿者:タオミチル - この投稿者のレビュー一覧を見る
読後感は、シンプルに「若冲の絵をちゃんと見たい!」。というか、途中から若冲の作品が豊富に収録されている本を傍らに置いてよまないと、文字だけで描写された若冲の絵を思い出そうとしちゃって、なんとなく物語が頭に入ってこないのである。実際、そこで語られる絵のコトをちゃんとわからないままでは進めない気もする。ネット検索でも可能なので、探しながら読み進めることをおススメします。
紙の本
若冲ファンならずとも是非
2019/08/31 18:07
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投稿者:あっちゃん - この投稿者のレビュー一覧を見る
単に若冲ファンなので購入。東京都美術館の若冲展の観覧済です。素晴らしい色彩は何故、血族、そしてある意味ライバルとも言える義弟の存在。どこまで史実か、そんな事は良いのです。若冲の人となり…というものが分かれば。
紙の本
事実は小説より奇だが、小説は自由だ
2017/08/05 19:22
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投稿者:想井兼人 - この投稿者のレビュー一覧を見る
人気の絵師伊藤若冲の小説。さまざまな作品が残る若冲。細かく書き込む場合もあれば、水墨でザっと描くこともあるなど、その作画法の幅は異様に広い。そんな様々な技法により生み出されてきた作品群であるが、背景事情に大胆に迫れるのが小説の力であり、魅力だ。若冲の作品のような自由な発想で織りなされた若冲。これも若冲作品と言えよう。
電子書籍
興味ぶかい
2017/05/10 19:09
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投稿者:tomo - この投稿者のレビュー一覧を見る
若沖さんの絵は岡田美術館で一度だけ見ました。でもどういう絵師なのかと思い興味深く読みました。同じ時代の他の絵師もでてきますので、日本画が好きな人なら楽しめるかと思います。
紙の本
複雑な深層心理を描いた作品
2021/10/16 16:22
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投稿者:たっきい - この投稿者のレビュー一覧を見る
なかなか味わい深い本で感想が難しい本です。まず、このタイトルが何を意味しているのか読むまで全く知らず。江戸時代の有名な画家だったのですね。その絵師、若冲の生涯を描いた連作短編ですが、この手の話を読むといつも、読みながら、思わずググってしまいます。今回も鹿苑寺障壁画とか、石峰寺とか、鳥獣図とか思わず調べてしまいました。自分の絵の贋絵を描き若冲を憎む義理の弟、そして憎まれることを糧に名作を生み出す若冲の物語を堪能しましたが、当人たちの心情は複雑で、正直難しく感じました。
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妹お志野の心情が一番心にしみた。
2021/08/01 11:20
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投稿者:Koukun - この投稿者のレビュー一覧を見る
最近ますます人気が出てきてこの作品にも登場した代表作の一つ「動植綵絵」が国宝指定されるほどになった伊藤若冲の物語。かっちりとした章立てで話を進めて行き破綻がない。しかし亡き妻との生活の思い出が最終章まで殆ど出てこなかったせいか、若冲の心情に今一つ納得共感できなかった。もう一人の若冲とも言うべき市川君圭の心情も同様に納得共感できなかった。語り手の妹お志野の心情が一番心にしみた。
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最初の2、3章はとても引き込まれるものを感じたが、読み進めていくうちに物語の焦点が定まらないぼんやりした印象になってしまった。視点が義妹だったり若冲だったりとぶれたせいだろうか。若冲の人生を史実も踏まえながら、死別した妻がいてその義弟との確執の中で絵への向かい方が変わっていったという物語性を加えたのは面白かったけど、若冲がその内面を突き詰めていくところが理が立って人間性の魅力にやや欠けていたように思う。作者は史学専攻の修士であり、そのためか文章はとても緻密に書き込んでいて、時代背景、絵の様子などの書き込みは漏れがなく、若冲の絵が忠実に文章に再現されているよう。一方で感性的な部分がやや力が弱く感じられてしまう。登場人物の性格設定は緻密なのに、描写が今ひとつ大胆さに欠けているような印象。とはいえ面白く堪能できた。これだけ書き込める学術背景と筆力があるのだから、今後も素敵な時代小説を世に出して欲しい。自分は今年澤田氏と朝井まかて氏のおかげで時代物に目覚めることができた。
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京都錦高倉の青物問屋の旦那にうまれながら、旦那らしいことは一切せず、絵を描くことのみに生涯を費やした伊藤若冲のはなし。
若冲の描く絵は、奇抜で、若冲が京者でなかったら受け入れられなかったであろうと言われている。本書をよむと、若冲の絵があたかも目の前に出てくるようで、流石に、直木賞候補ともなった著者の力量に頷かされる。
今度、若冲展があれば、見に行きたいが、320分以上待たされることだろう。同時代に絵師として生きた、円山応挙や与謝蕪村などの絵とともに見てみたい気がする。
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若冲を知らない頃に読んだらおもしろいと思ったかもしれないが、ある程度知った今では若冲の魅力が感じられなくて寂しい。
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題名の『若冲』とは伊藤若冲(いとうじゃくちゅう)(1716年―1800年)という江戸時代の画家を示している。
「伊藤若冲とは?」とでも問われたなら「京の錦小路に在った<桝源>(「桝屋」の歴代当主が「源左衛門」を名乗ったことから定着した屋号であるという)という青物問屋(野菜等を商う店)の後継者であったが、画業に打ち込んで制作を続け、40歳の頃に家業を弟に譲って隠居し、絵画制作を専らとするようになる。85歳で他界するまで旺盛な制作を続けており、独特な作風で知られている」という程度の回答になるであろうか。
この「伊藤若冲」の上述の「問と答」に対して、多くの作品が遺って挿話が幾分伝わる他方で不明な事柄も多いことから、作者が想像の翼を羽ばたかせて、「芸術家・若冲の生涯の物語」を創って綴ったというのが本作『若冲』であると思う。
長篇の章のような8つの篇が集められた一冊である。8つの篇は、各々に文芸誌で順次発表されており、8つが集まった単行本が登場し、やがて文庫化されている。今般、その文庫を視掛けて入手し、愉しく読了したのである。
8つの篇では、各々に若冲本人、または若冲の身近で暮らしていたという、年齢が大きく離れた妾腹の妹である柴乃が中心視点人物となって展開している。長い若冲の生涯、何度か在った、若冲の人生にとって大きな意味を持った出来事が各篇で展開する。そして全体で「芸術家・若冲の生涯の物語」を成し、その「芸術家の生き様」が読者に迫るのである。
冒頭の篇では、「桝屋の源左衛門」を名乗っている「若冲」が制作に没頭する様が最初の方に登場する。人を寄せ付けずに画を描き続ける芸術家という様相なのだが、ここに或いは「驚くべき創作」が在る。若冲に関しては「妻帯していなかったらしい」というのが定説だ。が、何代も続いた商家の後継者として妻を迎えた経過が在り、商売を脇に画に夢中だった若冲の他方で母親との人間関係等で苦しんだ妻が自殺してしまい、その一件の後に若冲はますます引き籠って画に打ち込むようになったと設定されている。そして死んだ妻の弟という人物が登場する。この死んだ妻の弟が、物語を貫くキーパーソンということにもなって行く。
8つの篇には、同時代である18世紀の京で活動した様々な人達も登場して物語を彩っており、そういう中で各々に挿話が展開していて甲乙は点けがたい。が、制作に打ち込んで行くようになって行く経過が出て来る最初の篇や2番目の篇、そして作中時間のその時点で存命な劇中人物達が集まって一寸した騒動になる最後の篇―若冲自身が他界してしまって、四十九日の法要が行われている…―が殊更に記憶に残る感だ。
18世紀の京で活動した様々な人達も登場する各篇だが、「18世紀の四条通界隈」を中心とした街の様子の描写も秀逸だと思った。当然、現在とは様子は異なる訳だが、18世紀頃の地名が現在も受継がれていて、京都を訪ねて少し時間を割いて歩き廻った記憶が在る場所が色々と登場する。
また、7月に本作を読んでいたが、7月は祇園祭の時季だ。江戸時代の暦では6月ということだったようだが、祇園祭の時季の挿話も入って、それも興味深く読んだ。天明年間に京の街の広い範囲が損なわれた大規模火災が発生している。そういう時���の挿話、そして火災で損なわれた山鉾を順次再興したという時期の挿話が在って、物語の“本筋”と半ば並行的に愉しめる内容だった。
飽くまでも制作する自身のために創るのか、観てくれる多くの人達のために創るのか?若冲は寧ろ前者に寄りながら、不器用に己の心の中と向き合って創作を続けたというようなことが、本書の描く「芸術家・若冲の生涯の物語」かもしれない。
京都に所縁が深いという、何作か作品に触れていた作家の作品であったことに、本書を読んでいた途中で気付いた。「〇〇さんの作品だから…」ということでもない。現在とは様相が違う「18世紀の京」は、「或る意味でファンタジー」だが、それでも、「或る芸術家の生涯の物語」として何か迫って来るようなモノを感じた。
好評を博したということだが、それも納得な秀作だ。広く御薦めしたい。
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澤田さんが謎に満ちた絵師の人生を描いてくれたことにより、絵に込められた思いを想像(妄想)しながら鑑賞するという楽しみが開けました。
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奇矯な絵で人々を魅了した伊藤若冲。
取憑かれた様に彼を作画にのめり込ませるのは、贖罪の思いなのだろうか。
彼を憎み、贋作を描き続ける義弟・弁蔵に描かせるものは激しい憎悪である。
若冲は弁蔵に追われ、弁蔵は若冲を追い、さながら光と影のように、または撚り合わさった縄のように存在する、二人の絵師と、作品たち。
知らぬ間に、お互いがなくてはならない存在となっていったのではないか。
長い相克の末に、理解に似た境地に至ったのではないか。
影から見つめる、若冲の妹・志乃の視点だが、兄に寄り添い、弁蔵を慕い、「見届ける者」として確かな存在感がある。
若冲を失った弁蔵の慟哭は悲しいが、二人の絵師の長い愛憎を浄化させるものだったかもしれない。
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幼い頃から若冲を見て育った京都生まれ、同志社出身の澤田瞳子さんが、世の若冲の評価に違和感を感じ、綿密に調べた結果のフィクションだけあって、本当にこんなことがあったから、若冲は絵を描いたのではないかと腑に落ちた。
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市井の町人が普段何をして何を思ったかなぞ、何百年後の人間が知る手立てはない(ブログは果たして情報として何百年後も残っているのだろうか?)。
そこに介入できるからこその歴史小説だと解説は言う。
伊藤若冲、没後300年を経た京都の画家について伝わることは少ない。
特徴的な画風がいかにして生まれたのかを、若冲の人生を練り上げられたのが今作だ。
京都錦市場の問屋升源の四代目茂右衛門は、店を継いでから商いには全く興味がなく、部屋にこもって絵ばかり描いている。
妻は嫁ぎ先からの圧力と、生活をまったく顧みない夫に絶望して首を括った。
その死を見つけたのが、茂右衛門だった。
以降、世間を避けるように、より一層絵の世界に没頭していく。
姉は見殺しにされた。
そう言って憎しみをぶつけた義弟は、こんな絵など俺だって描けるといって姿を消した。
数年後、奇矯の絵かきとして持て囃される茂右衛門改め、伊藤若冲の絵に贋作が現れるようになった。
その贋作の裏に、義弟の影を見た若冲は、その贋作よりも前に行かねばならぬと常に焦りを感じる。
齢八十まで行き、絵に狂った男の人生は。
そして、どうして三百年後も残る大作を描けるようになったのか。
ところで若冲の描く白象って、結構不気味じゃね?